ゲームをどう片づける? 新しい遊び方をみつける「アーカイブ化」のすすめ

ゲームと「片付け」に関する論考

まとめ:自分のコレクションを“再発見”して、新しい価値を生み出そう!

 最後に、ここまでお付き合いいただいた方に筆者からアーカイブを使った遊び方を一つ紹介したい。前節でデータベースにタグの欄(図3の6)を設けていたが、ここには既存のジャンルではなく、自分が気になったキーワードをどんどん入れてかまわない。そして好きなワードで検索してみて、引っかかったものだけをあつめて別のリストを作成してみよう。

 上記の例で『薄桜鬼』の「京都」タグに注目してみると、『彼岸花』(サミー/2002年発売)や『龍が如く 見参!』(セガ/2008年発売)といった一見無関係なソフトとの関連性が見えてくる。ジャンルも時代設定もバラバラな作品群だが、いずれも「京都が舞台のゲーム」であり、あわせてプレイすることで祇園や嵯峨の別の側面を発見したり、Google Mapで作中の舞台にピンを立てて聖地巡礼のプランを考えたりと、見慣れた自分のコレクションのなかにジャンルやシリーズのくくりでは気づかなかった意外なつながりを発見できるにちがいない(※12)。実際、冒頭であげたゲームにおける雨についてや、虫の役割の考察はこのようにして書いている(※13)。

 データに落とし込むことで、今ある資産に別の価値が生まれる。しかもそれが(若干の時間と労力はかかるが)タダでできる。アーカイブにはこんな隠れた楽しみ方もあるのだ。

 以上、大量のコレクションを捨てずに長期保存し、効率的に管理する方法の一例を解説した。本稿で紹介したのは、あくまで筆者の経験や実地調査にもとづいた現時点での暫定的なもので、これがベストとはかぎらないが、読者にとって参考になる部分があれば幸いだ。最近は値段もこなれてきているNFCタグをつけてスマホで管理できるようにしたり、GPSタグで貸し借りによる紛失をふせいだりなど、今後もアーカイブはさまざまに進化していくだろう。

 もちろんほかにもやり方は無数にあるし、ここであげたテクニックをより洗練された形で実践されている方も少なくないかもしれない。筆者も日々アップデートをつづけているので、いいアイデアがあれば、SNSなどで共有していただけるとありがたい。

(トップ画像=Unsplash

※1:当時の報道でも、トレンドの移り変わりについての言及がみられる(大平一枝「収納ブームに陰りが!?インテリア雑誌の編集会議にて」朝日新聞デジタル版、2010年7月12日)。
※2:大沼太兵衛によれば、北米では現用品(ゲームならよくプレイするソフト)と収蔵品(レトロゲームなど頻繁にはプレイしないソフト)の管理をそれぞれ「レコード・マネジメント」と「アーカイブズ」にわけている。ただ個人レベルでは煩雑になるので、本稿では両者を一括して管理するフランス型を採用している(ブリュノ・ガラン、2021『アーカイブズ—記録の保存・管理の歴史と実践』大沼太兵衛訳、白水社)
※3:ネット上でも、Flashや「Yahoo!ジオシティーズ」などのサービス終了によって多くの個人クリエイターの作品やその痕跡が消滅の危機に瀕している。筆者らは2019年から、こうした失われつつある日本(+東アジア)のフリーゲームやFlash動画を調査する「ゼロ世代WEBコンテンツ保存プロジェクト」をおこなっている。著作権の問題から現状では作品自体の再配布はむずかしいが、タイトルやジャンル、現在も入手可能なURLなどを含むメタデータ約15,000件からなるデータベースの全面公開に向けて、現在準備を進めている。
※4:生活自体をアートにしたいなら、所持品のすべてをデータベース化するのも一つの方法かもしれない(「引き出しの中からゴミ箱まで、家の中の物すべてを公開する個人サイト」Wired, 2002. )。
※5:高科真紀、2019「収蔵庫を対象としたアーカイブズの照明管理—ISO・アメリカ・イギリス・日本の事例」『GCAS Report』8: 35–55. ほかに手軽にできる劣化対策としては、遮光カーテンも有効だ。
※6:ストロング遊戯博物館(米)やコンピュータゲーム博物館(ドイツ)のように膨大なコレクションを保管する施設でも、予算やスペースの都合上、かならずしも保存用途に適した素材が使われているわけではない(筆者が訪問したのは数年前なので、現在は改善されている可能性もある)。
※7:書籍や説明書などでとくに重要なものは、グラシン紙で包んでおくとある程度劣化をふせげる。
※8:国立国会図書館「国立国会図書館 東京本館の書庫」
※9:そのあたりの事情はこのページを参照。
※10:完全無料のデータベースソフトとしてはLibreOfficeのBaseなどがあるが、ある程度データベース設計にかんする知識がないとハードルが高いため、ここでは省いている。
※11:今回説明した方法は、国会図書館や「メディア芸術データベース」でも利用されているFRBRモデルを簡略化したもの(https://ja.wikipedia.org/wiki/書誌レコードの機能要件)。ゲームに特化したアーカイブヴやデータベースの現状については、福田一史、2018「ビデオゲームの目録作成とメタデータモデルを巡る研究動向」カレントアウェアネス・ポータルなどを参照。
※12:ゲーム研究者の吉田寛がかつておこなっていた「テマティック・ゲーミング」も、こうした試みの一つだ(そちらも立命館大学ゲーム研究センターのアーカイブとデータベースを利用している)。「ゲーム内で写真を撮るゲーム」「プレイ人数n人以上」など、アイデア次第でさまざまなパターンが考えられる。
※13:「雨はゲーム体験をどう変える? 解像度を上げるための4つのアプローチ」「『ポケモン』『ドラクエ』などから考える、ゲームにおける虫の“役割”とは」

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