歌広場淳のフルコンボでGO!!!
歌広場淳×しょぼすけ「ストグラ」対談 配信者たちの織りなす“リアルタイムショー”として新たな文化に

大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「歌広場淳のフルコンボでGO!!!」。今回は、ゲーム配信者にして「ストグラ」の運営を手掛ける・しょぼすけとの対談を行った。
「ストグラ」とは「ストリートグラフィティ ロールプレイ」の略称であり、オープンワールドゲーム『グランド・セフト・オートV』(以下、『GTAV』)をもとに制作された仮想都市にて、配信者たちが市民として第2の人生を生きるメタバース×ロールプレイの新感覚配信コンテンツだ。
配信者たちは、自身が生み出した個性豊かなキャラクターたちに魂を吹き込み、作り込んだプロフィールや、性格、考えかたに沿ってロールプレイを演じることで生まれる予測不能のドラマが魅力のひとつ。街は現実さながらに作り込まれており、救急救命隊や警察官などの公務員、飲食店、メカニックなどの職業に就いた住人が都市機能を運営、維持する一方、ギャングや宗教団体も暗躍するなど複雑な人間模様がくり広げられている。
1月22日より“広場うた子”という住人として「ストグラ」の世界に飛び込んだ歌広場淳が感じた数々のカルチャーショックや、街では市長・山下ひろしとして街を見守る「ストグラ」運営代表しょぼすけの今後の展望などを語り合ってもらった。
「格闘ゲームでは味わえなかった感動があった」(歌広場淳)
歌広場淳:しょぼすけさんとは、2024年末のTwitchの忘年会で初めてちゃんとお話できたんですよね。僕が会場で「ストグラ」に興味があると話をしていたら、ある人が「じゃあ呼んできますよ」と引き合わせてくださって。
実はそれよりずっと昔に、配信者が集まって『Among Us』をやる企画があり、そこで同じ空間にいたことはあったと思うんですけど。
しょぼすけ:ありましたね! 懐かしいです。
歌広場淳:『Among Us』でご一緒したのは2021年ごろだったと思うのですが、当時はまだ「ストグラ」って生まれてはいなかったんですか?
しょぼすけ:そうですね。僕が「ストグラ」を立ち上げたのが2022年8月28日なので、当時の僕はまだ“アモアス勢”――『Among Us』をおもにプレイする配信者でした。いわゆる“人狼界隈”に身を置いて、さまざまな活動をしていました。
歌広場淳:そうですよね。当時『Among Us』を一緒に遊ばせてもらった配信者の方々は、しょぼすけさんを含めフォローしていたんです。その方々が、いまは「ストグラ」という場所で大人気らしいぞ、というのがなんとなく伝わってきていて。
それで僕がTwitchで配信活動を始めたときに、やっぱり配信に人を集めるのって難しいんだなと思い知り、どうすればもっと多くの人に見てもらえるんだろうと、マネージャーに相談してみたんです。
そうしたらマネージャーから「いま、ものすごく人気なコンテンツがあるんです」と言われて。それが「ストグラ」だったんです。僕も『GTAV』を使った“何か”がすごいらしいということはほんのりと認識していて、そこでようやくつながったんですよね。
しょぼすけ:そんな風に認識してくださっていたとは、うれしいです(笑)。
歌広場淳:でも、「どうやったら参加できるの?」「俺でもできる?」とマネージャーに聞いたら、「たぶんムリだと思います」と言われてしまって(笑)。「ストグラ」って本当にあの世界の中で生活しているような感じだから、当時の僕の配信への向き合いかたや、かけられる時間を考えたら難しいだろうということだったんです。
しょぼすけ:あぁ……。僕としては「好きにやってほしい」とみなさんに提案しているつもりなんです。ただ、1回あたり6時間以上プレイする方も多いので、どうしても「まとまった配信時間を作れる人や、配信頻度が多い人じゃないと難しい」という考えかたは配信者側にも、視聴者側にもあるかもしれないですね。
歌広場淳:実際あの場で、しょぼすけさんは「もしご興味ありましたら」と言ってくださいましたよね。僕なんて配信者としてまだまだですし、失礼じゃなかったかなとか心配だったんですけど。
しょぼすけ:いえいえ、そんな。すごく謙虚な方なんだなって思いましたよ。それにちょうど去年(2024年)は、「ストグラ」に配信者のみならずさまざまな業界の方にも参加してもらえるよう、環境づくりに取り組み始めたタイミングでもあったので。お声がけをいただけてうれしかったです。

歌広場淳:そうだったんですね。配信者界隈の方ではなくても、「ストグラ」だったらやってみたいと思う方は多そうですよね。
しょぼすけ:そうだったらうれしいなと。「ストグラ」のなかでまったくの別業界の方同士が意気投合して友だちになったり、ゲーム業界や配信者界隈から縁遠い方がTwitchを知るきっかけになったりと、そういう場所に「ストグラ」がなったらいいなと思っています。
ただ現状は、まさに歌広場淳さんのように「何らかの遊びを『GTAV』でやってるっぽい」というところまでは行き着く人も多いけれど、「実際、何をやっているんだろう」までたどり着いてくださる方は少ないんです。やはり、独特な文化ではあると思うので。
歌広場淳:だとしたら、たまたま身近なところに「ストグラ」に詳しい人がいた僕はすごくラッキーでしたね。しかも僕の場合、「ストグラ」がすごく大きなコンテンツだぞってこと以外はほぼ知識ゼロで、ほかの方の配信を視聴したりしたことがなかったのも幸運だったかなと思います。
なんの先入観もなかったからこそ、僕はいま本当に「ストグラ」を楽しめていて。格闘ゲームをやっているときとは明らかに違う感動が味わえたんです。たとえば僕がよくプレイしている「ストリートファイター」はシリーズものなので、最新作が出たとなってもある程度は過去作の経験が応用できるから、効率よく上達していけたんですよ。「ストグラ」に関しては事前知識がまったくなかったし、文化も何もかもが全然違うから、そういうものをひとつずつ知っていくこと自体によろこびがあって。
……ちなみに、運営チームのみなさんに「歌広場淳がストグラに興味あるらしいよ」とお伝えいただいたときの反応っていかがでした?
しょぼすけ:先ほどの話がチームとしての総意でもあるので、「歌広場淳さんのような音楽業界の方からも興味を持ってもらえたのはうれしいね」ってなりましたよ。
「ストグラ」というコンテンツは、ゲームではあるんだけどゲームの枠に留まらない新しい文化だと自分は思っています。そして、そういった文化はひとつの業界のなかだけでやっていても発展していかないんですよね。
だから、さまざまな人に見てもらいたいし、経験してもらいたいなと。ときには合わないと感じる人もいるとは思うんですけど、1度だけでもいいから経験してもらって、「この業界の人を呼び込みたいのならこうしたほうがいいと思う」といった、さまざまな目線の意見をもらいたいです。そうやって新たな文化というのは大きくなっていくものだと思いますから。
「ストグラ」=「ストリートグラフィティ ロールプレイ」
歌広場淳:そもそも「ストグラ」ってネーミングがいいですよね。最初に聞いたとき、僕は“ストリーマーグランド・セフト・オート”の略なのかなと思っていたんですけど、たしか違うんですよね。
しょぼすけ:まさに当初は“ストリーマーグラセフ”=「ストグラ」ということで立ち上げたんですけれど、「グラセフ」と商品名が入っている以上はグッズなどが出せないなと、やっていくうちに気付きまして。Rockstar Gamesさんが作ったゲームを土台として使わせていただいていることもあり、十分な配慮が必要だなと思ったんです。
そこで、当時の参加者たちのなかで壁にスプレーで落書きするのが流行っている時期だったことからヒントをもらい、「ストリートグラフィティ ロールプレイ」=「ストグラ」とすることにしました。
歌広場淳:語感もすごくいいですよね。やっぱりネーミングって本当に重要だと僕は思っていて。たとえば日本だとリアル脱出ゲームがめちゃくちゃ人気ですけど、あれも何をするかが直感的にわかるところがよかったんじゃないかなと思うんです。「ストグラ」も配慮のために正式名称を変えて、略称は据え置きという判断をされたのは素晴らしかったんじゃないかなと。
“人狼疲れ”から公園/公演を作る側の立場へ――「ストグラ」誕生前日譚
歌広場淳:早くも深いお話が聞けてワクワクします。そもそも、しょぼすけさんが「ストグラ」を立ち上げたきっかけって何だったのでしょうか?
しょぼすけ:いわゆる“人狼疲れ”ですね。当時は人狼界隈にいて、『Among Us』やマーダーミステリーなどをいっぱい遊んでいたんですけど……。
歌広場淳:めちゃめちゃわかります! メンタル面の疲労がすごいんですよね、人狼系のゲームって。
しょぼすけ:そうなんですよ。人を疑うことに疲れるし。あと、当時の僕はYouTubeをメインに活動していて、そこで広告収益を得ていたので、自分が人狼になったときに異常に緊張するようになってしまったんです。
人狼系ゲームの実況動画や配信って、自分が人狼になって勝った試合が一番喜ばれるんです。ただ、誰が人狼になるかは毎回ランダムなので、8人で3時間程度プレイしたとして引ける回数は1回あるかどうか。
そうなると、人狼になったときに「勝ちたい」と強く思うようになってしまって。なんだったら、「カッコいいことをして勝ちたい」みたいな。そう自分で自分にどんどんプレッシャーをかけてしまって、最終的に疲れてしまいました。
歌広場淳:動画のためにとか、配信を盛り上げるためにってことですよね。
しょぼすけ:はい。それで疲れ切ってしまっていたときに、信頼している先輩の大川さんが「しょぼすけは“こうえん”(=公園/公演)を作るほうが得意だと思うよ」と言ってくださったんです。
つまり、公園の遊具で楽しく遊ぶように、新しく出たゲームをおもしろおかしくプレイしてみせるより、みんなが楽しく遊べる公園を作るほうが得意だと思うよ。あるいは、公演に出て芸を披露するよりも、公演を取り仕切ることのほうが得意だと思うよ、と。
MCとして場をうまく回すとか、リーダーになって「あなたにはこの遊具が楽しめると思うよ」「あなたにはこの公演が似合っていると思う」と誘導してあげることのほうが向いているんじゃないか、というアドバイスを受けて、僕のなかですごく腑に落ちました。
歌広場淳:大川さんのアドバイスが刺さったんですね。

しょぼすけ:たしかに僕って、「配信者として活躍したい」という気持ちもあるけれども、それ以上に、自分が好きだと思ったゲームやおもしろいと思った企画を流行らせたいという思いが、行動原理の根本にあったなって気付かせてもらいました。
そこで、「自分はいま何を流行らせたいんだろう」と考えたときに、“『GTAV』を使ったロールプレイ企画”が頭に浮かんだんです。「英語圏では大人気なのに、日本では誰もやっていないな。これを日本語に翻訳して取り入れたらおもしろいんじゃないか。日本人は“ままごと”をやる文化が昔からあるし、クトゥルフ神話TRPGやマーダーミステリーなどでロールプレイになじみのある人は増え続けているし……」と。
歌広場淳:言われてみればそうですね……! 構想から実行に移すまではどのくらいかかったんですか?
しょぼすけ:まずは1回やってみようということで、僕とプログラマー担当の2人で、7月の頭くらいから立ち上げに向けて準備を始めました。
配信者同士の横のつながりを広げるために
歌広場淳:えっ!? じゃあ、「やろう!」と決断してからだいたい2か月後にはオープンにこぎ着けたってことですか。大変じゃなかったですか?
しょぼすけ:めちゃくちゃ大変でした……。日本で誰もやったことがないから、情報がないんですよ。日本語の情報は皆無で、英語の情報も開発者さんのDiscordサーバーとかに分散しているわけです。もう必死にチャットログを漁って、「このバグはどうやって直したの?」「これはこうやって直すんだよ」みたいな会話を見つけて、それを参考に自分たちの環境を改善するという作業を延々と繰り返しました。
歌広場淳:そんな気が遠くなるような作業を、毎日のようにやっていたわけですか。
しょぼすけ:もう本当に、1日10時間とか。僕はプログラミングができないので、プログラマー担当の人に「この機能を入れたい」「これを入れるともっとサーバー効率が上がると思う」といった話を、情報としてひたすら投げていきました。
歌広場淳:逆に言うと、それほどの労力をかけても惜しくないくらいに、しょぼすけさんが実現したかったことだったわけですよね。
しょぼすけ:そうですね。というのも僕は「配信者同士の横のつながりを作りたい」という野望を持っていたんです。これは現在もそうかもしれないんですけど、当時の配信者の世界は、たとえば『PUBG』をやっている人は『PUBG』プレイヤーだけ、『エーペックスレジェンズ』をやっている人は『エーペックスレジェンズ』プレイヤーだけの社会でそれぞれが独立していました。
ただ、そのなかで僕がやっていた『Among Us』界隈は、たまにほかの界隈からゲストで入ってきてくれる方がいました。それこそ『ポケモン』勢の方々や『マリオカート』勢の方々が来てくれていて、「界隈とか関係なく楽しめるじゃん。もっと配信者の世界には横のつながりが必要なんじゃないか」って思ったんです。
そこでちょうど“GTAVロールプレイ”というコンテンツを見つけて、その遊びかた自体がおもしろそうだと思ったのと同時に、ロールプレイをするということは界隈同士をつなげる“仮面舞踏会”になるんじゃないかなって。
歌広場淳:すごい、まさにしょぼすけさんの野望にピッタリのゲームだったわけですね!
しょぼすけ:たまたまではありましたけど(笑)。もしかしたら、さまざまなゲームの有名人から新人までが、ゲームの中の住人としてフラットな立場になって、住人として仲良くなった後で「実はあの人って、リアルだと◯◯の人だったの!?」となるような、そんな場が作れるんじゃないかと思ったんですよね。
歌広場淳:実際、すごく助けられています。ほかのゲームだったら、僕が自己紹介すると「あのゴールデンボンバーの!?」となってしまって、ありがたいことではあるんですけど、「そんなことよりゲームしようぜ!」って思ってしまったりするので。

しょぼすけ:そうですよね。配信者の世界でも、たとえば活動歴10年のベテランの方とデビューしたての新人がいきなりコラボすることってほぼあり得ないじゃないですか。「ストグラ」だとそんなことが日常的に発生しますし、お互いにおもしろいじゃんと思えばそのまま友人関係になることもしばしばあります。
そうやって、配信者がほかの配信者を知るきっかけや、視聴者の人が新しい配信者を知るきっかけになっていくという、配信コンテンツとしても新しい文化になるんじゃないかと思いまして。実際に、この2年半のサーバー運営のなかでそういったことがかなり実現できているんじゃないかなと思っています。
歌広場淳:知るきっかけがあるというのは、視聴者はもちろん、配信者にとっても本当にありがたいことだと思います。いまでこそゴールデンボンバーは多くの方が知っているバンドになりましたが、僕が加入した2007年当時は本当に無名だったんです。
そのなかで、見てくださるお客さんやファンの方が増えたきっかけがあったとしたら、有名なバンドさんが主催するイベントに出演させてもらったときだったなって思います。僕らはトップバッターとしてオープニングアクトのようなことをやらせてもらったんですが、そのときの僕ら単独では使えないような大きな会場で、しかも僕たち以外のバンドをお目当てにしているお客さんたちの前でパフォーマンスさせていただく機会に恵まれたのは、本当にありがたいことだったなと。
しょぼすけ:しかも「ストグラ」の場合で言うと、当人同士はだいぶフラットな立場のままでそういうことが起きますからね。
歌広場淳:そう! そうなんですよ。えっと……「ストグラ」では“魂”って言うんでしたっけ?
しょぼすけ:いわゆる“中の人”のことを「ストグラ」用語ではそう言いますね(笑)。
歌広場淳:ですよね。僕は正直に言って、「ストグラ」のなかでこれまでお会いした方々の“魂”について、ほぼ何も知らないんですよ。一番最初に関わった人の“中の人”とかもいまだに知らないですし、意識的に知らないようにしているんです。
もしかしたらものすごい人の可能性もあるし、活動し始めたばかりの方の可能性もあるし。だけど、そんなことは関係なくお世話になったり、仲良くしてもらったりしたんですよね。
……それはそれとして、このあいだギャングのボスのヴァン ダーマーさんにお会いしたときに「ずいぶんと、女々しい格好してるな」って言われたことがあって(笑)。そうやって、あえてぶっこんでくださる方がいるのも、おもしろいなとは思うんですけど。
「しょぼすけが考えた企画ならきっとおもしろい」の声が後押ししてくれた

歌広場淳:しょぼすけさんには、日本で“GTAVロールプレイ”をやったら流行るかもしれないという予感というか、確信があったということでしたけれど……ここまで盛り上がると思っていましたか?
しょぼすけ:さすがに、この盛り上がりまでは予想できなかったですね。
歌広場淳:だとしたら、しょぼすけさんが「自分の想像以上に盛り上がってきたな」と思ったタイミングっていつごろでしたか?
しょぼすけ:やっぱり、配信者ではない方からも「参加してみたい」と言ってもらえたときですね。あとは、ちらほらと「いつかストグラに参加させてもらえるように、配信者としてがんばっていきたいです!」と言ってくださる方が出始めたときでしょうか。「ストグラ」が目標とされるような場所になったということが、すごくうれしかったです。
歌広場淳:それって素敵ですね。「ストグラ」にとっても良い循環が生まれそうです。あと、新参者の僕としては、立ち上げ初期のころのお話も聞いてみたかったんですよね。僕が“広場うた子”として初めて訪れた日にお世話になった、ももみ先生も(サーバーオープンの)初日からいると言っていましたし。
しょぼすけ:最初のころというと、サーバーのルールや法律も決まっていなかったので、本当に何もかもが手探りでしたね。参加者と話し合いながら、「このルールがないと崩壊するよね」とひとつずつ方向性を決めていきました。
ルールだけではなく、ロールプレイのための世界観作りも。たとえば現在の「ストグラ」では、ゲームを再起動することを「瞑想」と言ったりするんですが、そういったワードも含めてどうしようかと。
歌広場淳:何しろ前提がなかったわけですからね。ちなみに、スターティングメンバーは何人くらいだったんですか?
しょぼすけ:64人でした。
歌広場淳:すごい、最初から結構大規模だったんですね。
しょぼすけ:ありがたいことに僕自身、いろいろな配信者さんとの横のつながりがありました。何よりありがたかったのが、「しょぼすけが考えた企画ならきっとおもしろいから、ぜひやりたい」と言ってくれた友人がたくさんいてくれたことなんです。
僕はこれまで、日本ではまだ流行っていないゲームを見つけてきて、周囲のコミュニティに広げていくことを何度もやってきているので。『PUBG』もそうですし(※1)、『Among Us』もかなり早い時期から日本でやっていましたし。
※1 しょぼすけは日本初の『PUBG』公式パートナーに選出された経歴を持つ。
歌広場淳:コンテンツではなく、人に付いてくる状態だったわけだ。もはや若手実業家のノリじゃないですか!
「市長なんて人生でやったことがないので(笑)」(しょぼすけ)
歌広場淳:「ストグラ」初日の思い出とかって、覚えていますか?
しょぼすけ:初日は警察署の署長とか救急隊の隊長も決まっていなかったので、僕が市役所に来た人たちから独断と偏見で抜擢していきました。
歌広場淳:しょぼすけさんは初日から市長だったんですか?
しょぼすけ:はい。かれこれ2年半、ずっと市長をやらせてもらっているんですが(※2)……僕も僕で市長なんて人生でやったことがないので、“市長っぽいロールプレイ”で振る舞うしかなくて(笑)。
最初に来てくれたのが、よつは先生、橘かげまるさん、神崎治さん、命田守さんの4人だったと思うんですけど、「君が一番リーダーっぽいね」と隊長に任命したのが命田守さんだったんです。面接とかもなく、完全にノリで僕が指を指して決めた人が、ずっといまも隊長を続けてくれているんですよね。
※2 対談後の2025年2月15日、市長不信任選挙にて不信任案が確立され、退任が決定した。
歌広場淳:そうだったんだ! これ、いまとなってはそのエピソードを知らない人もけっこういるんじゃないでしょうか。
しょぼすけ:そうかもしれないですね(笑)。
歌広場淳:いやあ、おもしろいですね。こうやって「ストグラ」の話をすると、街で見かけた有名人について語るようなテンションになっちゃうのがいいですね。「いたいた、あの人がそうなの!?」みたいな。
しょぼすけ:そういうホットな人物となると、いまは切間てつおという人がそのポジションにいるかもしれないですね。
歌広場淳:えっ、てっちゃん!? あの人ってすごい人なの!?
しょぼすけ:あの人は街のトップインフルエンサーという生きかたをしていて、ファンがいっぱいいます。“世界一の角刈り”という触れ込みで。
歌広場淳:そうだったんだ……。てっちゃんは、初日に僕のことを助けてくれた人のうちのひとりなんですよ。
しょぼすけ:救急隊ですからね。
歌広場淳:そうそう。ああ、そういえば「写真集を出した」みたいなこと言っていたような……?
しょぼすけ:彼は大人気キャラクターなので(笑)。
「ストグラ」インスパイア企画のお手伝いにも奔走
歌広場淳:2月28日で立ち上げから2年半を迎えますけど、これまでのことを思い出してみて印象に残っていることはなんでしょう。あの事件はすごかったとか、あのバグはやばかったとかがあればお聞きしたいです。
しょぼすけ:やっぱり「ストグラ」の運営をしながら、並行して別の企画をお手伝いしていた時期は大変でしたね。過去に4回経験していて、いずれも大変でした。システムの調整や運営のノウハウなど、僕たち運営チームにしかわからないことだらけなので、「ストグラ」と並行でふたつのサーバーのトラブルに対応する必要があり、めちゃめちゃ忙しかったです。
ただ、そういった経験をさせていただけるのも今後の何かのためにつながるだろうと思って、みんなで頑張りました。結果、おかげさまで盛り上がったんじゃないかなって手応えがありましたね。
歌広場淳:そういえば、「ストグラ」運営チームって何人ぐらいいらっしゃるんですか?
しょぼすけ:スタート時点はふたりで、そこからどんどん増えていきました。Xで募集をかけたこともあり。あるとき、見ず知らずの方から「しょぼすけさんに感化されて新しいプラグイン(機能拡張用のプログラム)を作ってみたんですけど、よかったら使ってくれませんか」とDMが届いたこともありました。
その人は、いわゆるプロップハント(“物”に変身してかくれんぼをする遊び)ができるようになるプラグインの作者だったんですけど、ちょうど僕もその人が作ったプラグインを導入しようかと目をつけていたタイミングだったんです。
歌広場淳:そうしたら、まさかの制作者本人からDMが届くという(笑)。
しょぼすけ:そうそう(笑)。それで、「おもしろいからウチのチームに入ってもらえませんか」とお誘いして、いまもチームで活躍してくれていますね。
「広場うた子からロールプレイへのインスピレーションをもらった」(しょぼすけ)
歌広場淳:僕は今回、広場うた子という女性キャラクターで参加させてもらっているのですが、本当に一切知識がない状態で入ってしまってすみません。マネージャーからは「知識ゼロは良くないんじゃないですか」とも言われたんですが……。
しょぼすけ:いや、僕はその個性めちゃくちゃいいと思いますよ。たとえば「ストグラ」史上、あそこまで犯罪に巻き込まれることや関与してしまうことを怖がる住人っていなかったんです。犯罪をしないタイプの人間なのだとしたら、あれくらい怖がっても不自然ではないと思うので、いいロールプレイにつながっているなと感じます。上から目線のような口ぶりで申し訳ないんですけれども。
歌広場淳:本当ですか、そう言ってもらえると救われます。もう操作……手足の動かしかたや声の出しかたもわからなかったですし。
しょぼすけ:初日とかバグりちらかしてましたよね(笑)。運営スタッフに、「これ補佐に行ったほうがいいぞ!」って即座に向かわせましたから。
歌広場淳:そうそう。サポートの方が来てくださって。ただ、そこで喉の開きかたを教えてもらっても、僕がいわゆる「海外製の筋肉」(英字キーボードのこと)だったせいで、ややこしくしてしまって。
「いまこれって見えてますか? 見えていたら手を上げてください」のような感じで、まるで(英字キーボード)言葉の通じない漂流者と意思疎通を交わすように、手取り足取り教えてくださったんですよね。
あと、初日に亀山HEROさんから突然ゲーム内通貨で500万円を渡されたことがあったんです。あのときはこの街で500万円ってどのくらいの価値なのかわからなかったから、てっきり悪事に巻き込まれたのかと勘違いして。そこから人間不信が始まっちゃって……。
しょぼすけ:そうですよね。いまはかなり街の経済がインフレしているので、全然大したことがない額なんですが。
歌広場淳:その後、何日か経って慣れてきたころに、丸井まるさんという街に来たばかりのかたとお会いして、「初めまして。いま何されているんですか?」って聞いたら「免許の講習を受けています」って。えっ、初日の時点でもうそこなの!? 私はDAY5でやっと取ったのにってびっくりしちゃいました。

しょぼすけ:そうですよね。最近は「ストグラ」に参加したいと言ってくれる配信者の方のほとんどが、「VCR GTA」などを見て興味を持ってくださった方なので、みなさん大まかな流れを知っているんです。
あらかじめ知ってくださっているのは間違いなくありがたいことで、「知らない体でやれ」と強要する気は微塵もないんですけど、そういう意味でも広場うた子さんの軌跡は見ていて新鮮でした(笑)。
歌広場淳:新鮮すぎました?(苦笑)
しょぼすけ:いや、めっちゃ良かったです! 「ストグラ」では常識になっていることも、「私の常識ではこんなの絶対おかしい!」的なテンション感で切り抜けていくじゃないですか。いや、そうだよなと。僕自身も、いつの間にか「ストグラ」に染まっちゃってたんだなって気付かされました。
歌広場淳:だって、いきなり知らない国に単身で行って、知らない人たちに囲まれたら怖いじゃないですか!
しょぼすけ:間違いない(笑)。おかげさまで、あらためて“ロールプレイ”という遊びへのインスピレーションをめちゃめちゃ受け取れました。
「ストグラ」の持つ“リアルタイムショー”としてのポテンシャル
歌広場淳:いきなり「白と黒、どっちになるの?とか聞かれても全然わからないですし。いまだったら、善良な市民(白市民)になりたいのか、悪いこともやっていきたい(黒市民)のかって意味だったんだってわかるんですけど。
そこに戸惑っているなかで亀山さんから「じゃあ白市民パス取りに行きましょうか」って電話が突然かかってきたのもタイミングが悪くって、「なんかいきなり知らない免許を取らされそうになってる!?」って。
しょぼすけ:(笑)。亀山さんは、いわゆる“チュートリアルの人”のような存在になっていますからね。きっと「街を初めて訪れた人とはいえ、ある程度は知識があるんだろう」という思い込みがあったのか、すれ違いが起きちゃいましたね。きっと亀山さんも新鮮だったと思いますよ。
歌広場淳:もう最終的には陰謀論じみた思想に片足を突っ込んでしまったんですが、「さすがにヤバそうだぞ」と思った人たちが手を差し伸べてくれたので、なんとか帰ってこれました。
しょぼすけ:おお、誰が助けてくれたんですか?
歌広場淳:ももみさんですね。ももみさんがすごくかわいがってくれて、メタ発言ギリギリの危ない橋を渡って引き戻してくれました。「あなたがいま恐れている◯◯という人は、実は△△という組織の一員で、その組織には□□という裏の顔があって……」と。
しょぼすけ:いいですね。組織によってはどちらが表でどちらが裏なのかわからないようなところがあれば、表と裏が混ざり合っているところもありますし。まだまだ広場うた子が知らない“裏の裏”とか、そのもっと裏とかあるかもしれないわけなので……。
歌広場淳:そうですよね。これまで見聞きしたものなんて偏りがあって当然ですし。
しょぼすけ:僕はよく、「ストグラ」のことをリアルタイムショーだって言っているんです。
歌広場淳:おお、それはどういうことなんでしょうか。
しょぼすけ:僕は「トゥルーマン・ショー」と「ターミナル」という映画が大好きで、リアルな人の生きざまを見せることが一番のエンターテインメントであると思っています。だからアイドルサバイバル番組とか恋愛リアリティーショーとかが流行っているわけで、みんなそういうものが見たいんだろうなと。
ただ、テレビだと画面が1個しかないから、ふたりのやり取りがあったとして、お互いにひとりきりになった後でそれぞれが心情を吐露するシーンを順番に見せていったりするじゃないですか。
対して「ストグラ」では各々が配信していることによって、たとえば広場うた子と亀山さんが一悶着あった後に、うた子と亀山さんの後語りを同時に視聴可能なんですよね。リアルタイムで起きていることを、複数の視点から同時に追うことができるんです。

歌広場淳:たしかに、まさにネットの良さ、ゲームの良さ、配信の良さを最大限に活かしていますね。
しょぼすけ:そういった性質が、リアリティーショーというジャンルとすごく噛み合っているように僕は思うんです。そしてなおかつ、「うた子視点で追いたいから、亀山さんの後日談はあえて見ないでおこう」といった選択の自由が視聴者側にあるのもいいところかなと。
歌広場淳:聞けば聞くほど、群像劇的な物語を描くにはピッタリの手法だなって思いますね。僕、格闘ゲームのイメージが強いと思うんですけど、こう見えて『街 〜運命の交差点〜』とか大好きなので。
しょぼすけ:えっ、歌さんもですか!? 僕も大好きなんです。同じくチュンソフトが開発した『428 〜封鎖された渋谷で〜』とかも。
歌広場淳:いいですよね。めっちゃ好きです。街を歩いていて肩がぶつかった程度の、ちょっとしたきっかけから大事件に発展していくみたいな。
「ストグラ」という新たな文化を、異文化をつなぐ入口に
歌広場淳:いまのところ、「ストグラ」にはどのくらいの住人がいるんでしょうか?
しょぼすけ:650人くらいですかね。
歌広場淳:たとえば1000人集めたいとか、こういうものを作りたいといった構想はあったりしますか。
しょぼすけ:平均ログイン数で言うと、現在はピークタイムの夜で150人前後なんですが、サーバー収容人数の上限は200人までとなっています。僕としては、ピークタイムに190~200人が生活する街を目指したいですね。
配信者は旬のゲームに敏感な方が多いし、そうあるべきだとは僕も思います。だから大作ゲームなどがリリースされた直後などは、どうしても人が減ってしまうんですけど、常に数百人が生活している空間を保ち続けたいよねとは運営チームとも話しています。
歌広場淳:2月も『モンスターハンターワイルズ』が発売されますからね。
しょぼすけ:そうなんですよ(笑)。個人的には『Sid Meier's Civilization VII』がやりたいなとうずうずしているんですけれども。
歌広場淳:でも、「ストグラ」内で仲良くなった人同士が、「この後やりますか」って感じでそういったゲームで盛り上がるみたいなこともあるわけじゃないですか。
しょぼすけ:そうですね。先ほども言ったとおり、「ストグラ」を配信者どうしの横のつながりを作るきっかけにしてもらえたらという願いがあるので、実際そういったことがよく発生しているし、「ストグラがなかったら◯◯さんとは絶対に知り合ってなかったと思う」なんて話を聞くために、運営していて良かったと。人をつなげる場になっているんだなと感じます。
歌広場淳:もちろん苦労することとか、思い通りにいかないこともたくさんあるけれど、それでもやっていてよかったなと。
しょぼすけ:はい。「ストグラ」の運営という行為をゲームにたとえたら、理不尽な難易度の『シムシティ』をやっているような感覚です。「これ、クリアさせる気ないな」って思ってしまうほどのゲキムズゲームなんですけど、今日だってこうして歌さんと対談する機会をいただけたりとか、そういううれしいこともたくさんあるので。
歌広場淳:いえいえ、こちらこそですよ! 最後に「ストグラ」の展望を聞かせてもらってもいいでしょうか。「今後はこうやって広めていきたい」、「こういう人に見てもらいたい」などがあればぜひ。
しょぼすけ:「ストグラ」は、これまでのゲーム配信にはない新しい文化だと思っていますし、運営チームのみんなもそう思ってくれています。だからこそ、これまでゲーム配信に興味がなかった人や、それこそ恋愛リアリティショーが好きで見ていた人にも触れていただけたらと思っています。
要は、文化の入口になりたいんです。たとえゲーム実況動画で何百万再生されようと、どんなに大きなゲーム大会でスーパープレイを繰り出そうと、じゃあ街を歩いている人の100人とかのなかで知っている人はどれだけいるんだろう、と。
歌広場淳:僕らのなかでは知らない人がいないレベルの人気配信者やプロゲーマーの名前を、たとえばそのあたりを走っているタクシーの運転手さんは知っているのか、って話ですよね。
しょぼすけ:そう、たぶん知らないだろうなって。でも、「ストグラ」のなかでドラマが生まれたりだとか、おもしろいエピソードができたりして、それをリアリティーショー的にいろいろな人に向けて売り込んでいけば、「インターネットの住人たちがゲームを使っておもしろいドラマをやっている」と知った人が、ゲーム配信という世界に足を踏み入れるきっかけになるかもしれないと思っています。
歌広場淳:すごく意義のあることだと思います!
しょぼすけ:偉そうに語って申し訳ないんですけど、その可能性が「ストグラ」にはあるかもしれないなって。
歌広場淳:事実、配信者同士ではすでにそういったことがたくさん起きているわけですし。僕も、街で出会った人たちにゴールデンボンバーのライブを見てもらいたいですもん。
しょぼすけ:お互いにあると思いますよ。それまでゲームにしか興味がなかった人が、広場うた子との出会いをきっかけにヴィジュアル系の曲を聴いてみようかなと思ったりだとか。文化は相互作用すると思うんですよね。だから、ジャンル問わずさまざまな人に知ってもらいたいし、来てもらいたいし、気負わずマイペースに楽しんでもらえたらなと。
歌広場淳:最後まで素敵なお話をありがとうございました。これからも住人として、よろしくお願いします!
しょぼすけ:今後も、「ストグラの街」での生活を楽しんでいってください!

・しょぼすけ 公式X
https://x.com/ShoboLinco
・しょぼすけ Twitchチャンネル
https://www.twitch.tv/shobosuke
・歌広場淳 公式X
https://x.com/junjunmjgirly
・ゴールデンボンバーの歌広場淳 Twitchチャンネル
https://www.twitch.tv/utahiro0830






















