「NFTをゲームに活用する」ってどういうこと? 「NFTゲーム」の面白さと課題

「NFTゲーム」の魅力と課題を解説
Photo by Pixabay

 テクノロジーの世界で使われる言葉は日々変化するもの。近頃よく聞くようになった言葉や、すでに浸透しているけれど、意外とわかっていなかったりする言葉が、実はたくさんある。

 本連載はこうした用語の解説記事だ。第16回は「NFTゲーム」について。主にアートなどの世界で注目されるNFTだが、ゲームの世界でもNFTを取り入れたタイトルが登場している。ゲームとNFTの相性や課題はどうなっているのだろうか。

・NFTはデジタルアイテムに唯一性を与える技術

 本連載の第一回で紹介した「NFT」。デジタルデータにも「唯一性」を設定できる技術だ。デジタルデータは100%コピーが可能だが、NFTと関連づけられたデータは、その所有者などが履歴として記録され続ける。たとえば万年筆等の大量生産品であっても、有名人が持っていたものには価値が生まれる。それをデジタルデータで実現できる技術がNFTなわけだ。

 このNFTは主にブロックチェーン・暗号通貨「イーサリアム」のシステム上で実現しており、これを利用してデジタルアート作品にNFTを関連づけ、販売する「NFTアート」が注目されていることも紹介した。そしてその仕組みをゲームの中に適用したのが「NFTゲーム」だ。「遊びながら稼ぐ(Play to Earn)」意味から「P2E」、ゲーム(Game)の金融化(Finance)という意味で「GameFi」と呼ぶこともある。

 NFTゲームでは、ゲーム内にNFTと関連づけられたキャラクターやアイテムが登場、あるいは生産することができる。そしてそれらを取引(売買)するために仮想通貨を使用するわけだ。

 世界初のNFTゲームは、2018年に登場したベトナム・SkyMavis社が開発した『Axie Infinity』と言われている。Axie Infinityでは「Axie」と呼ばれる仮想生物や土地を購入し、その育成・繁殖や対戦させるほか、取引(売買)できるようになっている。ゲームとしては育成系RPGのようなイメージに近いだろうか。このゲームは東南アジアを中心にヒットし、現在のアクティブユーザー数は公称で280万人、最も高く売れたAxieは82万ドル、これまでの取引額は40億ドルに達するという。特にフィリピンでは同ゲームの取引によって得られた仮想通貨による収入で生計を立てているユーザーが相当数いるとも言われているほどだ。

ゲーム『Axie Infinity』の公式WEBサイトより

 また日本のCrypto Gamesが2019年にサービスを開始したトレーディングカードゲームタイプの『Crypto Spells』は、レアカードをNFTマーケットで売買できる。さらにユーザーが自由にカードを発行・売買できる(公式大会で使用できるカードの作成権は限られており、運営との協議が必要)、ユーザーがルール変更やパラメータ調整の実施に投票という形で参加できるといった特徴がある。カードゲーム型のNFTゲームはスポーツ関連などでも多く採用されており、現実のトレーディングカードゲームに近い感覚で取引できるので、今後も増えていきそうな分野だ。

ゲーム『クリプトスペルズ』の公式WEBサイトより

 メタバース関連でもNFTゲームは注目されている。Minecraftでは、Minecraftとブロックチェーンを結びつけるModを通じて『NFT Worlds』や、『MyMeta Minecraft(EnjinCraft)』といった独自拡張ゲームも登場している。またMinecraftクローンの一種である『The Sandbox』では、土地やユーザーが作成したアイテム、建物、あるいはワールドそのものがNFTとして売買されている。MMORPGの生産職を拡張したようなイメージに近いだろうか。今後のメタバース関連でのNFT活用の試金石になる分野と言えるだろう。

・ゲーム内アイテムを作成できる面白さとアイテムの唯一性が魅力

 NFTゲームの多くではアイテムを「作れる」ことに妙味がある。2D・3Dを問わずアイテムを「作成」するスキルのある人にとっては技術を収入につなげるチャンスになるわけだ。

 もちろん、いくらアイテムの唯一性を保証されても、ゲームがサービス終了してしまえば結局は失われてしまうのではないかという指摘もあるが、たとえば前述のCrypto Spellsでは、カードをNFTウォレットに持ち出せば資産やコレクションとして残すことができる。あるイベントに登場した著名なイラストレーターが描いた限定カードということであれば、希少価値に加えてアート的な価値も含まれるため、ゲームが終わっても価値が見出せるわけだ。

 もう一つ可能性があるのが、キャラクターの育成代行などを安全・確実に取引できるシステムの登場。「ゲームが上手い」「ゲームする時間がある」ことに(eスポーツ以外のかたちで)具体的な価値がつけられるわけだ。技術的には、別々のゲームアイテム同士をNFTで交換するといったトレードも可能になる。

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