プラットフォームの間でも意見が分かれる「NFTゲーム」に、我々はどう向き合うか
昨今、注目されている「Web3.0」や「メタバース」、「NFT」といったワードは、ゲーム業界でも話題となっているが、その中でも賛否が分かれているトピックが「NFT」ではないだろうか。本稿では、ゲームを提供するプラットフォーマーやゲーム開発者が、どのようにNFTと向き合っていくべきかについて考察する。
身近な話題が増えつつある一方、投機的なあり方に反発も
既にご存じの読者も多いと思うが、NFTとは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略。ブロックチェーン技術を用いて生成され、オリジナル性が証明できることで有限性が生まれるデジタルコンテンツだ。NFT市場の全体規模はすでに1兆円を超えており、今後も成長が見込まれている。
ゲームでは、プレイして得られるアイテムを取引したり、トークンを換金したりすることで収益を得られるような仕組みである「Play 2 Earn(P2E、遊んで稼ぐ)」や、ブロックチェーン技術を用いることでゲームデータの改竄やチートの仕様が難しくなるなどといった点から注目されており、『Axie Infinity』のようなモンスター育成ゲームや、カードを自由に売買できる『Crypto Spells』といったゲームが話題となった。
また、先日LINEによる「LINE NFT」がサービスを開始したほか、ソーシャルゲーム『サンシャイン牧場』がNFTゲームとして復活することが決定するなど、より日本国内のゲーマーにとっても身近な話題が耳に入るようになってきたことからも、NFT×ゲームの組み合わせが今後より一層盛り上がることが予想される。
一方で、NFT市場における支出の大半は投機目的のものであり、NFTゲームでも転売目的のゲームプレイが、ゲームプレイを歪めたり、バブル的にNFTアイテムの価値が急変動することが懸念される。また、詐欺のリスクや、NFTゲームが投機的である点や、詐欺のリスク、ブロックチェーンを維持するために起こる消費電力の増加による環境問題の懸念などの問題も抱えており、それ故に多くのゲーマーやゲーム開発者からは反発を受けているようだ。
NFTゲームはゲーマーに嫌われている? “稼ぐためのプレイ”に賛否両論集まる
昨年から急速に台頭してきたNFTゲームは、依然としてその是非をめぐりゲーム業界で論争が行われている。こうした論争の焦点となってい…
プラットフォーム【ゲームが配信されるゲームプラットフォーム】
そんなNFTは、ゲーム業界で大きな影響力を持つPCゲームプラットフォーマーの間でも意見が分かれているようだ。まず、世界最大のゲームプラットフォームである「Steam」を運営しているValve社は昨年、Steamの運営規約にNFTゲームの配信を禁止する規約を追加している。
一方、Steam以外の多くのプラットフォーマーはNFTに対して慎重ながらも、一定の評価を下している。Steamのライバル的な存在であるEpic Games社は、同社のEpic Games Storeでブロックチェーンを活用したゲームの配信を歓迎する旨を、ティム・スウィニーCEOがツイートした。なお、同社のゲームに関しては、暗号通貨の導入はしないとのことだ。
Epic Games Store will welcome games that make use of blockchain tech provided they follow the relevant laws, disclose their terms, and are age-rated by an appropriate group. Though Epic's not using crypto in our games, we welcome innovation in the areas of technology and finance. https://t.co/6W7hb8zJBw
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) October 15, 2021
そのほかのプラットフォーマーでは、「Origin」を運営し、『Apex Legends』や『FIFA』シリーズといったゲームを手がけるElectronic Arts社が、昨年11月の四半期決算発表の質疑応答にて、アンドリュー・ウィルソンCEOがNFTやP2Eを「将来のゲーム業界にとって重要な役割を果たす」と述べた一方で「どのように機能するかを判断するには時期尚早」と、好意的ながらも慎重な姿勢を取っている。
また、Activision Blizzard社は、NFT、暗号資産、メタバースなどへの関心があるかという質問を含むアンケートを実施した後、マイク・イバーラ社長が、同社ではNFTを立ち上げる予定がない旨をツイートした。
No one is doing NFTs.
— Mike Ybarra (@Qwik) April 17, 2022
UBISOFT社は、昨年12月にNFT用のプラットフォーム「Quartz」を設立。同社のゲーム『ゴーストリコン ブレイクポイント』のPC版でNFTアイテムの提供を試験的に行なっていたが、今月同作のコンテンツ更新が終了したと同時にテストも終えている。一方で、今後も他のゲームでNFTコンテンツを導入していく予定だ。
必要なのはゲームとして「楽しめる」NFT
NFTは期待できるコンテンツである一方で、反感を買いやすい話題だ。もしNFTを推進したいプラットフォーマーや、NFTゲームの開発者が、懐疑的なユーザーに受け入れてほしいと思うならば、上述したような多くの課題を解決していく必要があるだろう。
特に重要なのは、投機的な流れから脱却し、「楽しい体験」としてNFTをゲームの中で提供できるかではないだろうか。現在のゲームNFTと、それによってもたらされるP2Eは、純粋に「ゲームを楽しみたい」ゲーマーが望んでいるものではないように感じる。それどころか、自分の遊んでいるゲームにNFTが導入されることで、「稼ぐために遊ぶ」ユーザーが参入し、ゲームプレイが歪められてしまうのではないかと不安に思う人もいるはずだ。
ゲーマーがNFT(やWeb3.0、メタバース)になにかを期待しているならば、それはNFTで稼ぐことではなく、NFTで新たな、面白いと思える体験がもたらされることだ。そうでなければ、この新しい技術は受け入れられることはないだろう。
拡張現実がゲーム業界に登場したときも、面白いコンテンツがでるまでは、その存在に懐疑的なユーザーは少なからずいた。それが現在多くのゲーマーに受け入れられているのは、『Pokémon GO』が生活圏にポケモンを登場する楽しみをARで、『Half-Life: Alyx』が目前にあるリアルな恐怖をVRでそれぞれ表現したといった風に、これまでにない体験をゲーマーに提供できたからだ。
もちろん、視覚に訴えるAR/VRと、実態の掴み辛いNFTとでは、ユーザーの体験には大きな差があることは否定できないが、だからこそ、“楽しめるNFTコンテンツ”の存在が、NFTへの理解に直結するのではないだろうか。