2022年は「ミステリーゲーム」豊作の一年? 話題をさらった2作品のポテンシャルを再考
『ポートピア連続殺人事件』、『探偵 神宮寺三郎』、『ファミコン探偵倶楽部』……など、ビデオゲームの歴史上で根強い支持を獲得してきた推理アドベンチャー(推理ADV)作品。”ミステリーゲーム”と呼ばれることもある同ジャンルの系譜は今なお健在であり、2022年上半期において一層の注目を集めている。
本稿では、毛色の異なる2つのミステリーゲームをピックアップ。両作品の内容や特徴を踏まえつつ、改めてそのポテンシャルを再考する。
実写映像で紡がれる推理ADV『春ゆきてレトロチカ』
最初に取り上げるのは、5月12日にスクウェア・エニックスより発売された『春ゆきてレトロチカ』。同作はコンシューマー及びPCを含むマルチプラットフォームに対応し、『サウンドノベル 街 -machi-』(セガサターン/1998年)や『428 ~封鎖された渋谷で~』(2008年/Wii)等と同様、“実在の俳優陣による実写アドベンチャー”方式を採用している。加えて、俳優陣が本編内の各チャプターごとに異なる役柄を演じ分け、一種のミスリーディングを意図的に誘っているのも特徴である。
同作の舞台は2022年の日本。プレイヤーは主人公のミステリー作家・河々見はるか(演:桜庭ななみ)となり、富士山麓に根付く“四十間”一族を取り巻く怪事件の究明に乗り出す。本編では3つの時間軸(2022年・1972年・1922年)が登場。100年の間に起こった事件を追うことで現代の謎に繋がり、ひいては物語の大団円に繋がる……という内容だ。
また、作中は「問題編」「推理編」「解決編」という3パートで構成されており、プレイヤーは「事件発生までのあらましを描いた実写ムービーを視聴」→「脳内で謎と手がかりを組み合わせる」→「導いた仮説を元に事件を解決する」といった手順を踏むことになる。古くからある”しらべる・はなしをきく”などのコマンドに頼るのではなく、プレイヤー自身で事件解明に繋がる因果関係を探りつつ、自分なりの仮説を立てて犯人を問い詰めなければならない点がポイントである。
特に推理編のロジックは同作の象徴的なゲームシステム。主人公の脳内にはハニカム構造の如くさまざまなマス(事件の謎)が並んでおり、問題編で見つけた手がかりをはめ込むことで多様な”仮説”が生まれていく。仮説はひとつとは限らず(真実はひとつだが)、組み合わせ次第では思考の邪魔になるような仮説も少なからず発生し、解決編で犯人を追い詰める際に効力を発揮する場合もあれば、逆に犯人から推理の粗を見抜かれて窮地に立たされることもある。ネタバレ防止のためにトリック等の詳細を明かすことは本稿でできないものの、こうした一連の取捨選択に伴う葛藤および緊張感は、そのまま同作の大きな魅力に直結していると言えるだろう。