Nianticが『ポケモンGO』などゲーム事業を売却 “専門企業による運営”で期待される、コミュニティとの関係改善

Nianticは3月12日、ゲーム部門の大半を手放す事業再編策を発表した。
Today we’re announcing changes at Niantic that will set us on a bold new course. We have reached an agreement for Scopely to acquire Pokémon GO, Pikmin Bloom, Monster Hunter Now, and the incredible teams working on these experiences. And we’re spinning off our pioneering…
— Niantic (@NianticLabs) March 12, 2025
『Pokémon GO(ポケモンGO)』の開発/発売元として、フリークにはなかば、ゲーム企業のように扱われてきた同社。ゲーム事業との“決別”は、Nianticとその代表作の未来をどのように変えていくだろうか。『ポケモンGO』がゲームカルチャーに与えた影響などを踏まえ、同作の今後を考えていく。
『ポケモンGO』などゲーム事業をスコープリーに売却
Nianticは、Googleの社内スタートアップ『Niantic Labs(ナイアンティック・ラボ)』を母体とするアメリカのテック企業だ(2015年に分離独立)。モバイル端末向けの位置情報アプリなどの提供で広く知られている。特にゲームの界隈では、『Ingress』や『Pokémon GO(ポケモンGO)』『Pikmin Bloom(ピクミン ブルーム)』『モンスターハンターNow』といったAR(拡張現実)/位置情報ゲームの開発/発売元としても有名。現CEOであり、創業者のジョン・ハンケ氏は、GoogleマップやGoogleストリートビューの開発にも携わった。
発表によると、Nianticは今後、高精細な3DマップやAIといった法人向けサービスの展開に軸足を移していくという。そうした方針の一環で、ゲーム基盤の開発部門を『Niantic Spatial(ナイアンティック・スペーシャル)』として分社化。同社の株式を既存株主とアメリカのゲーム開発会社・スコープリーに割り当てるとともに、ゲーム事業の大半が残るNiantic本体の株式を後者に35億ドルで譲渡する。

一連の対応により、『Ingress』のアップグレード版にあたる『Ingress Prime』は引き続きナイアンティック・スペーシャルが開発を担うものの、『ポケモンGO』『ピクミン ブルーム』『モンスターハンターNow』はスコープリーの傘下に入る。『MONOPOLY GO!』や『MARVEL ストライクフォース』といったモバイルゲームを手掛ける同社に権利が移ることで、各人気タイトルたちにどのような影響があるのか。今後の動向に内外から注目が集まっている。
Nianticを“ゲーム企業”に変えた『ポケモンGO』の功績
ゲーム以外にもさまざまな分野で事業を展開するNianticだが、先にも述べたとおり、フリークには『ポケモンGO』『ピクミン ブルーム』『モンスターハンターNow』の開発/発売元としての活動が広く知られている。特に2016年にリリースされ、世界中で大きな反響を呼んだ『ポケモンGO』は、いまさら言葉にするまでもない同社の代表作だ。
『ポケモンGO』には、Nianticが専門とする位置情報データや拡張現実(AR)の技術が盛り込まれており、プレイヤーはリアルと連動する形で「ポケットモンスター」シリーズの世界観をベースとする体験を味わうことができる。このように日常生活とリンクする性質からの影響もあってか、同作はシリーズのメインターゲット層以外にもリーチし、現在も年齢・性別を問わず、幅広いユーザーにプレイされている。最盛期には絶大な反響から、「立ち入りが認められていない場所への侵入が後を絶たない」「そのゲーム性が自動車や自転車の“ながら運転”を誘発する」など、社会問題へと発展したこともあった。しかしながら、いまとなっては、そうした一連のトピックそのものが『ポケモンGO』ひいてはNianticの功績であるという考え方もできる。
Nianticにとって『ポケモンGO』の開発とリリースは、社の今後の方針に影響するほどのターニングポイントであったと推測する。同作の成功があったからこそ、『ピクミン ブルーム』や『モンスターハンターNow』など、類似の性質を持ったタイトルの開発が続き、それらもまた一定の人気を獲得するに至った。Nianticがゲーム企業であると認識されているのも、こうした経緯があってのことである。『ポケモンGO』は少なくとも当時、同社だけでなく、他の開発元/発売元やプレイヤーなど、業界にかかわるすべての人に影響を与えたタイトルだった。
スコープリーへの権利譲渡は『ポケモンGO』に前向きな変化を生むか
今回の発表をもって、人気モバイルゲームの開発/発売元としての役割を終え、それらとは別の道を歩むことになったNiantic。2025年2月中旬に売却が噂されたとき、私は株式会社ポケモンや任天堂といったIPホルダーとの、権利まわりの折り合いがつくのかを危惧していた。蓋を開けてみると、そうした心配は杞憂だった。
『ポケモンGO』の運営をめぐっては昨今、プレイヤーとのあいだに溝が生まれていた印象がある。彼らの口撃の矛先となっていたのは、ゲームシステムに内在する問題の放置や、UI/UXの悪さ、不具合の多さなどだ。なかには一線を大きく越える語調の批判も見受けられた。当然ながら、Nianticがこうした問題を放置していたとは考えにくい。この点から想像できるのは、専門でない企業によるゲーム運営の難しさだ。SNSなどを見ると、スコープリーへの権利の譲渡に期待感を持っているプレイヤーも少なくない。今回の発表は、各タイトルのコミュニティに思いのほか前向きに受け止められている現状がある。
その一方、Niantic社内で3作それぞれの開発に携わっていたチームは、事業の移管とともにスコープリーの一員になるという。つまり、運営こそNianticからスコープリーへと代わるものの、開発に関しては、基本的にこれまでと同一のメンバーが担当するというわけだ。今後、3作それぞれに抱えていた課題が解消に向かうかは不透明だが、どのような結果になるとしても、「運営体制と開発体制のどちらがボトルネックとなっていたのか」という問題の所在が、おぼろげながら見えてくる可能性がある。ファンコミュニティからは、今回の発表そのもの以上に、今後のアップデートに注目が集まっていくだろう。
発表にあわせ、Niantic社内『ポケモンGO』のチームでリーダーを務めるエド・ウー氏は「『Pokémon GO』:次の10年に向けて」というメッセージを発信している。このなかで同氏は「スコープリーが『ポケモンGO』のコミュニティとチームを高く評価していること」「チームがこれまでのように一緒に開発を続けられること」「ゲームに特化したより大きなチームの一員になること」を、未来に自信を持つ理由として挙げている。その言葉を額面どおりに受け取るのであれば、同作(さらには『ピクミン ブルーム』『モンスターハンターNow』を含めた3作)には、明るい未来が待っていると考えられるのではないか。
これまで二人三脚で歩んできたNianticと『ポケモンGO』。同社は代表作との決別を経て、ふたたびターニングポイントを迎えることになる。両者がゲーム史に残した足跡を知るひとりのフリークとして、今回の発表が双方にポジティブな変化を生むことを期待したい。
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