17LIVE・CTOが語る、“人と人のつながりを豊かにする”ためのAI機能の役割
近年、生成AIはさまざまなプラットフォームで活用されているが、配信コンテンツにおいてもそれは例外ではない。
日本国内最大級のライブ配信シェアを展開する17LIVE(イチナナ)は、2015年台湾で誕生し、2年後の2017年に日本でもサービスを開始した。累計の認証ライバー(直接契約を結ぶ配信者)はおよそ8万人にのぼるが、毎日これだけ多くのライバーが作り続けるコンテンツは、基本的にアーカイブもなく、配信を見ていなければ共有できない刹那的なものとなっている。 (一部アーカイブやクリップ機能などは利用可能)
リアルサウンドテックでは今回、17LIVEの開発部門を統括するChief Technical Officer (CTO)のウー・ジンシェン氏(以下、愛称の“JS”)にインタビュー。直近でアプリ内に導入したAI機能や、配信プラットフォームにおけるAIの役割について聞いた。
ライバーとリスナーをつなぐ3つの機能

ーー2024年後半、17LIVEはどのように先進的な技術に向き合ってきたのでしょうか。
JS:AIにフォーカスした機能を多く搭載した時期でした。いままでも、ユーザーにおすすめの配信を提案する際にAIを活用していましたが、昨期はライバーにとって“より配信しやすく”、リスナー(視聴者)とって“より見やすく”なるように、いくつかのAI機能をリリースしました。
ーー具体的に、どういったAI機能をリリースしたのでしょう。
JS:まずひとつ目は、昨年11月14日に実装した「AIアシスタント Phase 1(Topic suggestions and Topic sticker)」です。これは、話題提案をAIが行い、その話題を配信ルーム内のステッカーに掲出するという機能です。配信中にAIアシスタントがリアルタイムで話題を提案し、視聴者にもステッカーとして表示されることで、ライバーとリスナーがより活発なコミュニケーションをとることができます。
2つ目は、12月23日にリリースした「AIアシスタント Phase 2 (Auto Engagement Avatar)」です。これは、配信中にリスナーへの挨拶やコメントの返答、贈っていただいたギフトやフォローへの感謝を、AIアシスタントが自動でサポートする機能です。ライバーは配信しながらさまざまなことを同時に行うため、どうしてもリスナーのコメントを見落としたり、入室の際の挨拶が抜けてしまったりします。そういった面でサポートをしてくれるのが、本機能になります。
3つ目は「字幕機能(Real-time translation for Streamer Speaking in-stream)」です。これは、ライバーの音声をリアルタイムで自動翻訳し、リスナーのアプリ設定言語に合わせた字幕を表示するものです。本機能は主に海外ユーザー向けで、ライバーのグローバル展開を支援し、世界中のさまざまな地域のリスナーとライバーをつなぐことを目的に実装しました。字幕機能をONにできるのは、現状レベル100以上のライバーとなっています。
ーー実際にいくつかの機能をリリースしてみて、どのような反響がありましたか?
JS:導入後に調査を行ったところ、日本のライバーの配信における、日本以外の地域からの視聴者からのトラフィックが、平均で約20%増加しました。また、フォロー率も平均で約5%増加し、再訪率も向上しています。ですが、視聴者が10分以上の長時間で配信を視聴する傾向はあまり見られませんでした。
ーーそれはなぜでしょうか?
JS:コメントが元の言語のままなので、日本のライバーがコメントに返信できず、一部のコミュニケーションが円滑にできていないことが原因だと考えています。なので、次のフェーズでは、コメント翻訳機能を導入することを計画しています。
ーーなるほど。まだまだ改善する余地はあるという段階なんですね。
JS:そうですね。ほかにも、バーチャル・ストリーミングの機能も改善し続けています。
ーーそれはどういった機能なのでしょうか?
JS:アプリ内でアバターを作成してそのままVライバーとしてライブ配信を行うことができる「Vクリエイトモード」を昨年12月に導入しました。Live2Dや3Dモデルの登録でバーチャル配信を行えるモードや、イラストを簡単にアプリにアップロードして配信ができる「イラストVモード」といったバーチャル配信の機能に加え、イラストを持っていない方でも、アプリ内に搭載しているアバターを選択するだけで、簡単に配信を行うことができるんです。
さらに今年1月には新たな「フュージョンモード」をリリースしました。バーチャルの姿とリアルタイムの映像の双方を映しながら、スマホ1台でバーチャル配信ができるモードで、Vライバーの皆さまには「画期的!」というコメントで好評をいただいています。
これらの機能により、ユーザーがバーチャル・キャラクターになることのバリアがさらに低くなり、より幅広い表現が可能になります。ユーザーが想像するあらゆるキャラクターを具現化することができ、人と人とのつながりの多様性に、新たな次元を加えることができると考えています。
ーー表現の幅が広がることで、プラットフォームの満足度も高まりそうですね。
JS:17LIVEでは、プライバシー・創造性・そして真の“人と人とのつながり”が育まれるプラットフォームとして、ユニークな体験をすべてのユーザーと共有できるようにしていきたいと思っています。
ーー17LIVEのミッションは「人と人とのつながりを豊かにすること。」と拝見しましたが、このミッションを達成するために、プロダクト開発において心がけていることはなんでしょうか。
JS:人と人とのつながりは、やっぱりコミュニケーションから生まれますよね。それはユーザー同士、そしてユーザーとライバーのあいだでも同じです。私は、それが人間の非常に基本的な欲求だと信じています。なので私たちは、ライバーがスムーズにユーザーとつながれるツールを提供することを目指しています。
ーー最後に、2025年のプロダクト開発における重点分野について教えてください。
JS:開発においては、2つの大きな目標があります。ひとつはライバーの成長を後押しすること。もうひとつはプラットフォームを楽しくすることです。ライバーの成長については、現在社内のライバー管理システムを改善しています。さらに、先ほどお話ししたAIアシスタントを導入して、ライバーがもっとリスナーを楽しませながら成長できるようサポートします。
プラットフォームを楽しくすることについては、ギフトシステム全体を見直し、ライバーとリスナーがともに楽しめるものにしていきたいと考えています。私自身も、これからの未来がとても楽しみです。
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