歌広場淳が語る推理ゲーム『マーダーミステリー 』の悪魔的魅力 「大げさでなく、人生を変えられる!」

歌広場淳が語る『マーダーミステリー 』の悪魔的魅力

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は、ゲームのみならず映画や宝塚歌劇団など、多くの分野に深い知識を持ち、コメンテーターとしての活動も増えている彼に、実際のところ、いまどれくらいゲームで遊んでいるのか?”という疑問を投げかけてみた。外出自粛期間、歌広場淳がどハマりしたアナログ推理ゲーム「マーダーミステリー 」への熱い思いから、日々の楽しみになっているゲーマーとのグループLINEの存在まで、幅広く語ってもらった。(編集部)

大げさでなく、人生が変わる作品

 ゲーム関連のお仕事も多くいただいているなかで、リアルサウンド テック編集部から「実際のところ、歌広場淳はいまどれくらいゲームをやっているのか!?」という問いかけがありました。そんなわけで、今回はやや番外編的に、2020年6月現在の、僕のゲーム事情をお話ししたいと思います。

  まず周りの状況を考えてみると、今般のコロナ禍に伴う外出自粛で、ゲームで遊ぶ時間が増えている人が多い、という話をよく耳にします。『あつまれ どうぶつの森』の世界的な大ヒットを考えても、ゲーム業界は必ずしもネガティブな影響だけを受けたわけではなさそうだ、と思うのですが、こと格闘ゲームにおいては、モチベーションを落としてしまっているプレイヤーも多いと感じているのが本音のところです。要因としては、多くのプレイヤーが目標にしている大規模な大会が相次いで中止になったことが大きく、例年8月に行われる、世界最大級の格闘ゲーム大会「EVO」も中止が発表されたことには、僕自身、ファンとしてとてもショックを受けています(その代わりに「Evo Online」というオンライン大会が開催されます)。
 
 なぜ僕にとってショックなのかというと、自分が出場しなくても、大会を観戦すること自体がゲームへのモチベーションを高めていく行為だったと改めて認識したからです。しかも世界中が熱狂する「EVO」ともなると、参加したことがない僕ですら目標を見失ったような気分なのですが、ここでふと「そういえば、ゲームって、目標がないとやらないものだっけ?」という疑問が浮かんできました。学生の頃は何の見返りもなく、何も求めずにただ「楽しいから」とゲームに打ち込んでいたんだと、久しぶりに思い出したわけです。いずれにしても、僕が好きな『ストリートファイターV』のトッププレイヤーたちも、ゲームをする時間自体は増えても、大会を想定した練習にかける時間は減り、配信で他のゲームをプレイすることが多くなっているように思います。つまり、先ほどの僕の疑問に近いような状況に行き着いた結果、楽しく、自然と自分が注力しているジャンルに紐づいていた「ゲーム」という言葉(僕が「ゲーム」といえば、これまでは主に「格闘ゲーム」のことでした)が、相対化されて、ゲームとあらためて向き合う期間になったのではと。
 
 そんな状況のなか、肝心の僕のプレイ時間はというと、実は自分でも驚くほど変化していません(笑)。もちろん、外出自粛で家にいる時間は圧倒的に増えましたが、起きている間、ずっとコントローラーを握っているかというと、不思議とそんなことはありませんでした。それは、外での仕事があってもなくてもゲームをすることが日常で、僕にとって特別なことではないことの裏返しかもしれません。『ストV』への熱が少し落ち着いた時期だったぶん、公式番組に出演させていただいた『仁王2』や『遙かなる時空の中で7』、僕が参加しているゲームエンタメ集団・ReMGで遊ぶ『スマブラ』や『マリオカート』に割く時間が増えたくらい。あとは具体的なタイトルで言えば『The Last of Us Part II』をプレイしようかな、と思っています。

 とはいえ、やはり自由に使える時間は増えたわけで。僕がそのぶん何をして遊んでいたかというと、ビデオゲームではなく、アナログな推理ゲームとして徐々に注目度を高めている「マーダーミステリー 」にどハマりしていました。アナログゲームだと、ゴールデンボンバーでいえば喜矢武(豊)がボードゲームにめちゃくちゃ詳しいのですが、僕はあまりそちらには関心がなくて、例えば「人狼」など、プレイヤーがそれぞれに役割を演じ、会話を中心にプレイする、いわゆる「テーブルトークRPG」(TRPG)のような自由度の高いものが好きなんです。

 「マーダーミステリー 」は議論を中心に推理を進行させていく過程で、プレイヤーがそれぞれ与えられたキャラクターになって、探偵ならば殺人事件の謎を解いたり、犯人ならば事件の真相を隠し通したり、という駆け引きを行うものなのですが、推理小説のトリックが分かるとつまらないように、一つのシナリオは人生で一度しかプレイできません。また一定の人数が集まらないとプレイできず、リードしてくれる経験者がいないと何をやって良いのか分からない、などとハードル自体は高いのかもしれませんが、どうにか機会を見つけて、絶対にプレイしてもらいたいのが、『ランドルフ・ローレンスの追憶』というシナリオ。これは福岡の「人狼ヴィレッジ」で店長をされているゲームクリエイターのじゃんきちさん(@Junkie_werewolf)が制作したもので、大げさでなく、人生が変わる作品なんです。

 僕は自粛機関に入る前に、知人の熱烈な勧めでこの五時間以上に及ぶ濃厚なシナリオをプレイしたのですが、自分が映画や小説の世界に入り込んだような圧倒的な没入感を体験しました。練り込まれた世界観に触れ、感情移入をすることによって、キャラクターの心身の痛みがリアルに感じられるような錯覚に陥り、途中は苦しくて、辛くて、プレイしているうちに気付かずに号泣していました。あの感動を人生で一回しか体験できないなんて……ブラックジャック先生に手術で記憶を消してもらって、なんとかもう一度プレイしたい!と思うほどです。「スゴい」という言葉で表現するのが憚られるほどスゴい。僕がここまで言うんだから、信じてもらっていいですよ(笑)。

 ビデオゲームであれ、アナログゲームであれ、ゲームというものの魅力の一つには、「現実ではしてはいけないことができる」があると思います。人狼やマーダーミステリーであればルールに基づいて「嘘をつく」のは自然なことで、格闘ゲームなら「力で相手を圧倒する」のはもはや礼儀ですらあります。だからといって、リアルで事件性のある嘘をつくようになったり、暴力性が増したということは当然ありません。一定のルールのなかで大胆に人を欺いたり、相手を全力で叩きのめしたりするのは、僕たちのように、実際にリングで戦う格闘家たち以外でも触れることができる、ゲームならではの快感だと思います。

 とにかく、マーダーミステリー にはもっと流行ってもらいたいのですが、「マーダーミステリー 」という言葉自体があまりキャッチーではないので、「リアル脱出ゲーム」くらい直感的に楽しそうな名前が見つかるといいなと思っています。やってみたいけどハードルが高い、と思っている人は、「ミステリープレイ」という手軽に楽しめるアプリがあり、2人からプレイすることができるので、ぜひ試してみてください。というか僕が語ることでハードルが高いと思わせてしまったのならごめんなさい。全てが全て、そういう訳ではありませんのであしからず。 

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