『iPhone 16e』を購入後、10日間使って感じたこと 『16 Pro』との比較を交えた徹底レビュー

『iPhone 16e』徹底レビュー

 2025年2月19日、アップルは新しいiPhoneの一員となる『iPhone 16e』を発表。2月21日から予約注文を開始し、2月28日から発売となった。

 『iPhone SE(第3世代)』の後継機種の噂は2024年当初から報じられており、2024年10月頃には「『iPhone 14』ベースに48MPのカメラが搭載される見込み」など具体的な内容も伝わっていた。実際に『iPhone 16e』が発表されると、エントリーモデルにしては価格が高めである点を残念がるコメントが多く見受けられた。

 果たして、実際のところはどうなのだろう。『iPhone 16』とどちらを選択すべきなのだろう。「iPhone SE」シリーズの後継機種を待っていた人にとっては“買い”なのだろうか。こうした点に注目しながら、歴代のiPhoneを使い続けてきた筆者が販売初日に購入した『iPhone 16e』を10日間ほど使ってみた感想を述べてみたい。

パッケージも含め、すべてが“シンプル”

『iPhone 16e』以外にはUSB-C充電ケーブル(1m)とSIMトレイを開くためのピンが入っているだけ。説明書類は何もない。アップルロゴのシールも入っていない

 iPhoneに限らず、ここ最近のアップル製品は環境への負荷を軽減するためか同梱物をどんどん少なくしている。今回の『iPhone 16e』も同様で、パッケージを開けてみるとiPhone本体とUSB-C充電ケーブル(1m)、それにSIMピンが入っているだけ。電源アダプターは当然のことながら、従来は同梱されていた簡単な説明書やアップルロゴのシールさえ入っていない。

 手にとってみると、最近のiPhoneではお馴染みとなったストレートエッジなデザインを継承したボディが出てきた。背面はガラス製でボディ側面はアップルが「航空宇宙産業レベル」と謳う頑丈なアルミニウム製。どちらもマットな仕上げなので手触りもサラッとしている。これなら指紋も付きにくい。カラーバリエーションはホワイトとブラックの2色で、今回筆者はホワイトを購入した。クリア素材以外のケースを付けてしまえば見えなくなるので関係ないとはいえ、2色だけというのは潔さを感じた。

 第一印象は余計な凹凸が少なくシンプルな板に近い感じ。ここ最近のモデルでは当たり前の、背面カメラ周辺部が台地のように盛り上がっているデザインを見慣れているせいか非常にスッキリとしている。背面に配置したパーツもカメラと、その脇に小さなマイクホール、LEDフラッシュが並んでいるだけだ。正直、最近のゴテゴテした「Pro」シリーズをメイン端末として使い続けてきた筆者にとって、『iPhone 16e』のシンプルな佇まいは新鮮に映った。

背面のカメラの横にある小さな穴はマイク、その横にTrue Toneフラッシュが並んでいる。カメラとマイク、フラッシュの中心が一直線に並んでいて美しい

 側面を見ると左側に音量アップと音量ダウンのボタン、その上にアクションボタンが配置してあり、これは他の「iPhone 16」ファミリーと同じ。ただし右側はサイドボタンだけで、カメラアクションはない。個人的にはまだ馴染みのないユーザーインターフェイスなので、カメラアクションがなくてもとくに気にならなかった。

同じ「A18」チップでも『iPhone 16』とは異なる仕様

 今回の『iPhone 16e』が搭載しているSoCは、『iPhone 16』と同じAppleシリコンの「A18」だ。ただし『iPhone 16』は6コアCPUと5コアGPUであったのに対して、『iPhone 16e』の方は6コアCPUに“4コアGPU”と、GPUが1コア少ない。これは半導体の製造過程で一部のチップに欠陥が生じたコアを無効化して利用することで、全体の歩留向上や製造コストを削減するための有効利用で、『iPhone SE(第3世代)』のA15 Bionicでも採用されていた方法と同一のものと思われる。また、『iPhone 16』と『iPhone 16e』の差別化をはかるという狙いもありそうだ。ちなみにNeural Engineは16コアで一緒なので、「Apple Intelligence」を使う際の性能差は無さそうだ。

 GPU性能が『iPhone 16』より低いと心配されがちだが、確かにベンチマークスコアで見れば違いは出るものの、一般的な使い方をしている限り体感的な違いはないはず。多くのユーザーにとっては『iPhone 16』とほぼ同じと考えてよいだろう。

その他にもある『iPhone 16』と『iPhone 16e』の違い

直接陽が当たる窓際でもディスプレイの表示は見劣りしない。左がiPhone 16e、右がiPhone 16 Pro。iPhone 16と16 Proは最大輝度やピーク輝度が同じだ

 リーズナブルなiPhoneへの買い替えを検討しているユーザーにとって一番気になるのが、「『16』と『16e』のどちらを選ぶべきか」という点だ。あらためて、両者の違いに注目してみよう。

 まずiPhoneを使う上でユーザーが一番目にするディスプレイだが、こちらはどちらも6.1インチのSuper Retina XDRディスプレイを採用しており、同じだ。最大リフレッシュレートも60Hzで違いはない。どちらもCeramic Shieldを施してあるが、スペック表記によるとiPhone 16の方は“最新世代のCeramic Shield”と書かれているので、多少は違うようだ。ピクセル数は2,556×1,179で解像度も460ppiとまったく同じ。標準のコントラスト比も2,000,000:1と違いはない。

 異なるのは最大輝度だ。『iPhone 16』の最大輝度1,000ニト(標準)に対してiPhone 16eは最大輝度800ニト(標準)と少々暗い。ピーク輝度(HDR)も1,600ニトに対して1,200ニトと差がある。さらに『iPhone 16』は屋外のピーク輝度が2,000ニトまで上がるが、『iPhone 16e』にはそれがなく、最小輝度1ニトにもならない。

 スペック上では大きな差があるように思えるが、実際のところはどうだろうか。『iPhone 16』と同じ輝度性能の『iPhone 16 Pro』と比較してみたが、たしかに屋外では若干違いがあるように見えるが、それも横に並べてじっくり比べれば感じる程度の差でしかない。筆者の体感では『iPhone 16e』のディスプレイが暗いと感じることはほとんどなかった。この差がどうしても気になるのであれば、『iPhone 16』どころか『iPhone 16 Pro』を選んだ方が良いだろう。

 それより気になったのが、ディスプレイ上部にあるフロントカメラ部分。カメラ性能は12MPでƒ/1.9絞り値のTrueDepthと、カメラ性能の部分は他モデルと同じだが、『iPhone 16』が「Dynamic Island」なのに対して『iPhone 16e』は旧来のノッチスタイルに戻っているのだ。「iPhone 16」ファミリーと名乗っているのに、こうした違いがあるのは気になる。

iPhone 16ファミリーなのにDynamic Islandではなく、iPhone 14と同じノッチスタイルを採用している。個人的にはDynamic Islandのユーザインターフェイスを気に入っているので残念だ

 背面側のリアカメラにも違いがある。外観からも分かるとおり、『iPhone 16e』にはカメラが1つしかない。48MP Fusionと12MP超広角のデュアルカメラシステムを搭載している『iPhone 16』に対して、『iPhone 16e』は等倍と2倍レンズを2-in-1にした48MP Fusionだけだ。カメラの数が1個、2個、3個と増えるごとに16e、16、16 Proとモデルが異なるのは一目でどの機種か区別できて便利だが、レンズ1個だと使えない機能が出てくる点には注意したい。

 その筆頭となるのが、『iPhone 16e』ではマクロ撮影ができないという点だ。『iPhone 16』や『iPhone 16 Pro』のマクロ撮影は超広角カメラを使って撮影している。そのため、超広角カメラを搭載していない『iPhone 16e』ではマクロ撮影が行えないのだ。

 ここからはいくつかの作例を交えて、その違いを紹介していこう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる