『Project:;COLD』総監督を直撃ーー反響を呼ぶ“SNSミステリー”はどのように作られ、どこへ向かうのか

『Project:;COLD』総監督インタビュー

 現在進行形で起きている事件をネットで目撃し真相を暴く、不可逆性SNSミステリー『Project:;COLD』。

 参加者たち(公式の呼称は「融解班」)はTwitterなどを中心にさまざまな場所に仕込まれた謎を解き明かしながら、バーチャルキャラクターによって織りなされる物語の真相に迫っていく。リアルタイムで進行する物語は謎解き・考察好きやVTuberファンを中心に話題になり、Twitter上やDiscordなどでは多くの議論が交わされている。

 今回、まだ素性を明かしていない『Project:;COLD』の総監督へのインタビューが特例的に実現した。多くの反響を巻き起こした導入部がどのようにして制作されたのか。SNSの反応や融解班の謎解き・考察はどのように見られているか。そしてマネタイズの予定がないとされているプロジェクトの行く末まで話をうかがった。(ゆがみん)

VTuber的、ARG的に見えた導入部はいかにして作られたか

ーープロジェクトはいつ頃から動き出してたんでしょうか? 複数のメディアを跨いで展開されていますから、かなり入念に準備をされている印象を受けました

Team Project:;COLD総監督(以下、総監督):企画が立てられたのは、ほぼ2年前です。そこから、マネタイズを含めた実現プランが組めないまま企画書が眠った状態で1年が過ぎ、ようやく実現の目処が立って動き出したのが、1年ほど前でした。

ーー2年前、2018年の段階でVTuberを入り口にした仕掛けも用意されていたのでしょうか。

総監督:それなんですが、実は自分たちには、VTuberをやっているという意識がないんです。選択肢の一つとして実写でというプランもありましたし、現実的なアウトプットの方法を探っていくうちに今の表現形態になった、というのが正しいです。

 ただ、川サキさんの手掛けられている花譜をはじめ、バーチャルなキャラクターに様々な表現をさせる世界観が生まれつつある時代だと感じてはいたので、結果的に自分のやりたいことがVTuberと呼ばれる分野と重なった、というかたちです。

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ーーでは、物語の導入部分にバーチャルキャラクター「都まんじゅう」のバンドプロジェクトから浮かび上がってくる謎、ARG(代替現実ゲーム)用語で「ラビットホール」(ゲームの入り口となる仕掛け)と呼ばれるものを設定した意図は?

総監督:それに関しては、企画が動き出してから集まってくれた方々の知恵をお借りして作っていった、というのが正直なところです。自分の構想では、田舎の仲良し女子高生グループが不可解な死を遂げていく、というスタートでした。その前段階に力を注ぐ予定はなかったんですが、それだとラビットホール――人を巻き込む仕組みができていないという問題点が挙げられました。そのため、事件が始まる前に要素を追加しようと、皆さんからアイデアをいただきながら接点作りをしていった、という順番です。

ーーでは、企画書の段階で「インターネット、SNSを使った有志での謎解き」というARG的な要素があったということですか。

総監督:そこも若干異なります。今回、ARGという言葉で括られることもありますが、自分たちはARGをやることが主目的だったわけでもないんです。それよりも、ダイジェスト化されてない物語を体験する仕組みがあって良いんじゃないか、という発想からスタートしています。

ーーと、いいますと?

総監督:物語というのは、ほとんどの場合は「ダイジェスト化された出来事」を見ていることになります。たとえば、映画なら「数か月の出来事が90分から120分にダイジェスト化されている」という意味です。

 そう考えたときに、物語をダイジェスト化せずに、2ヶ月の物語を2ヶ月かけて見ることも、現代のようなYouTubeやSNSが発達した時代なら可能なのではないか、と考えていました。自身の現実と物語の進行が混ざりあって存在する、新しい物語の表現ができるんじゃないかと。ならば、そういった物語を展開していく上で、どうやって第四の壁(編注:演劇等において使われる用語。観客席(現実)と舞台(フィクション)の間に概念上存在する「透明な壁」のこと)を取り除けばいいのかが課題として浮上してきました。

 この手探りは多くの人がやっていて、近いところでいうとイマーシブシアターとか、更に広義で言えばバンクシーの観客とアートの出会い方における手法もそうだと思います。それらに連なる考え方として、「物語で第四の壁を越えるために何ができるのだろうか」というのが発想の出発点でした。

 ただ、これとは別の問題として、物語や世界観に興味を抱いてもらう仕掛けが必要でした。それが結果的に謎であり、ARG的に見える部分になっているのかと思います。

ーーVTuber的、ARG的という受け取られ方や反響でいうと、最初の犠牲者として佐久間ヒカリが亡くなったことは、かなり大きなインパクトがありました。少し後に公開された動画では完全に「フィクションです」と記されていたことで、受け手としてもセーフティラインが引かれた安心感がありました。反響を見ながら注意書きや物語を変えているところはありますか。

総監督:言い方が難しいですが、本作の登場キャラクターは実写ではなく3Dモデルですし、我々は創作上の登場人物が亡くなった告知をしたつもりだったのですが、既存のVTuberの文脈もあって、本当か本当じゃないか分からない、という声がありました。これは、そういう反応があるということは、正直想定できていませんでした。

 ただ、そういう反応があったからフィクションの断りを入れたわけではなく、最初から第一話公開のタイミングで、フィクションであることを明言するつもりでした。

私たちを助けてください

ーーなるほど、反響の大きさこそ想定外だったものの、そこでみんなを安心させることは既定路線だったと。

総監督:そうですね。ただ、これに限った話ではないんですが、今回のようなコンテンツを計画したとき、我々仕掛け人側の考えを全て開示すべきではないと思っています。必要な神秘性というものは、必ずあると。ただ、結果的に受け取る側のみなさんが、受け取り方が分からなくて戸惑っていた部分もあるので、今後こういう企画をやる上で、どうやって相互理解を生んでいくのか、それは一つ課題になる部分だと感じています。

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