『ツイステ』の魅力はテキストにあり? 枢やなの"伏線”張り巡らされたシナリオから読み解く
スマートフォンゲーム『ディズニー ツイステッドワンダーランド』(以下、『ツイステ』)が今、爆発的な人気を集めている。
事前登録者数が150万人を突破するなど、サービス開始前から大きな話題を集めていた同作は、漫画『黒執事』(スクウェア・エニックス刊)の著者である枢やな氏が原案・メインシナリオ・キャラクターデザインを担当。企画・配信を手がける株式会社アニプレックスは、アニメ畑のみならず、スマートフォンゲームでも『Fate/Grand Order』や『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』などヒット作を発表し続ける業界のフロントランナーだ。さらに『ツイステ』は、タイトルにもその名があるように、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社の協力のもと制作されている。
3月18日に正式サービスを開始して以来、セールスランキングの上位をひた走り、関連商品は予約が殺到するなど、傍目にもその人気ぶりがうかがえる『ツイステ』。群雄割拠のスマートフォンゲーム界の中で、なぜ突出した人気を集めているのか。本記事では、テキスト(シナリオ)から同作の魅力を読み解いていきたい。
「悪役たち(ヴィランズ)」を描く、アドベンチャーゲーム
物語は、主人公が魔法の鏡に導かれ、異世界「ツイステッドワンダーランド」へ召喚されてしまったところからスタートする。舞台は、名門魔法士養成学校「ナイトレイブンカレッジ」。行く当てのない主人公は、仮面の男・学園長の保護を受け、元の世界へ帰る方法を探し始めるが……。
主人公がたどり着いた「ナイトレイブンカレッジ」には、ディズニー映画の世界観からインスパイアされた7つの寮とキャラクターが登場する。いずれもプリンセスやプリンスではなく、「悪役たち(ヴィランズ)」だ。
枢やな氏が描く、美しくも毒があるヴィランズ。俗っぽい表現をすれば、イケメンそろい踏み状態だが、『ツイステ』はいわゆる乙女ゲームではない。公式サイトに「ヴィランズ学園ADV(アドベンチャー)ゲーム」とあるように、描かれるのはキャラクターとの恋愛ではなく、彼らとの交流を通じた異世界での学園生活だ。主人公は元の世界へ帰れるのか? 「ヴィランズの魂を持つ生徒たちの秘密」とは、なんなのか? 現在更新中のメインストーリーにて、徐々に解き明かされていく。
「考察」する楽しさ
ディズニー映画のヴィランズが登場するゲームとしては、スクウェア・エニックスとのコラボレーション作品『キングダム ハーツ』シリーズがある。同シリーズでは『眠れる森の美女』のマレフィセントなどが、ディズニーキャラクターそのものとして登場する。
一方、 『ツイステ』で描かれているのは、ディズニー映画の世界観から「インスパイアされた」ヴィランズだ。この「インスパイアされた」というのがポイントで、ディズニー映画のどの作品が、どのように『ツイステ』に反映されているのか、考察する楽しみがある。
また『ツイステ』は、テキストの種類が豊富かつ、エピソードのちりばめ方も秀逸だ。8月末現在、4章まで配信中の「メインストーリー」を筆頭に、キャラクターカードを育てると読める「パーソナルストーリー」と「おしゃべり(ミニトーク)」、期間限定のイベントで描かれる「イベントストーリー」の4種類がある。さらに授業や試験、バトルといったパートにおいても、キャラクターの個性やほかの生徒との関係性が垣間見えるセリフを聞くことができる。
『ツイステ』の世界では、特色の異なる7つの寮、学年・クラス、部活動(同好会)、出身国といった属性が付与されており、キャラクター同士の関係性も複雑だ。プレイヤーはテキストを読み込み、エピソードの欠片を集めながら、キャラクターの秘密や世界の謎に迫っていく。その過程をとことん楽しめるようにバランスよく設計されている点も、『ツイステ』の大きな魅力のひとつとなっている。
加えて、主人公の描写も絶妙だ。明かされている設定はわずかで想像の余地が多いが、メイン・イベントストーリー内の選択肢や、ほかのキャラクターからの言及によって、性格の一端をうかがい知れるようになっている。なにより、魔法を使えない身でありながら、曲者ぞろいの「ナイトレイブンカレッジ」で学園生活を送れる人物――という時点で、主人公の人物像が伝わってくるのではないだろうか。傍観者になりすぎることなく、ときにキャラクターたちに振り回されながらも渡り合う主人公の姿は、ひとつの「最適解」であるともいえそうだ。