Netflix、YouTube、Amazon……大手動画プラットフォームがBlack Lives Matterで示した団結と、その戦い方

「Black Lives Matter」、大手プラットフォームの戦い方

Netflixの戦い方

 6月1日、日本のNetflixは『アメリカンヒストリーX』と『チェンジリング 』を配信開始しました。『アメリカン・ヒストリーX』とは、ロスアンゼルスのベニスビーチ界隈を舞台に、ネオナチの男性が服役を経て改心するという1998年の映画で、アメリカが抱える差別や人種問題、格差社会を生々しく描いた作品です。主人公デレクのネオナチ時代の発言は、トランプ大統領の「make America great again」を思い起こさせますし、ストーリーの中には、フロイドさんの「I can't breath」というセリフまで登場します。この映画を見れば、アメリカの分断が根強いことや、差別意識の種は植え付けられること、そして今のリーダーでは事態の収束に時間がかかってしまうであろうことがわかります。

 『チェンジリング 』は、クリント・イーストウッド監督による20年代に起こった実話をもとにしたサスペンス映画です。当時のロスアンゼルス警察の不正や杜撰な捜査、捜査ミスの隠蔽などを描いた問題作です。

 このふたつのタイトルをこの時期に日本のNetflixが配信したのは、今現在アメリカで起こっていることを伝えるためにほかならないでしょう。Netflixには他にも黒人差別や黒人を取り巻く環境に焦点をあてた作品が沢山配信されていますが、そういった真っ向からの問題提起ドキュメンタリー作品ではなく、あえて登場人物視点の作品を見てもらうことで、情報としてではなく、主観的に物事をとらえてもらいたかったはず。歴史的背景を説明するより、はるかに効果的で人の意識を変える可能性が高いと感じました。

プラットフォームの可能性

 いま起こっている抗議運動について、根本を理解することは簡単でないと思います。私は様々な国に住んだ経験から、日本人として差別も恩恵も受けてきました。しかし、その差別経験と黒人差別は同じレベルで決して語ることはできません。アメリカに住んでいても、“イエロー差別”と“ブラック差別”は別物だと考えています。しかし、私たちはコンテンツを通して自分と重ね合わせて考えたり、投影することは可能です。

 Netflixのトップページに行くと、いま見ておくべきタイトルが高確率で表示されます。今日は誘拐され12年間も奴隷として働かされた黒人男性の体験記をもとにした『それでも世は明ける』が出てきました。静かに、しかし確実に戦う姿勢を感じます。

 最後に、Netflixで配信されている作品でアメリカの黒人差別歴史を知れるタイトルを置いておきます。

『13TH 憲法修正13条』
『投獄 カリーフ・ブラウダーの失われた瞬間』
『LA92』
『ストロングアイランド』
『ディア・ホワイト・ピープル』
『フリントタウン』
『ボクらを見る目』
『アメリカの息子』
『デトロイト』

 また、Amazon Prime videoでは、白人至上主義集団のKKKに潜入捜査した実話をもとにした『ブラック・クランズマン』を視聴することができます。上記の作品と比べると軽めですが、KKKや黒人というだけでレッテルを貼られる様子が分かります。

 この運動の終着点がどこなのかはまだ分かりません。しかし、日本に住む私たちにも何かができるはず。私は、対岸の火事と思わずに学び、当事者意識を持って声を上げ続けることが大切だと思っています。

(画像=Pexelsより)

■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter

〈Source〉
https://ew.com/tv/netflix-hulu-amazon-starz-george-floyd-protests-support/
https://io9.gizmodo.com/hey-media-companies-whats-next-1843821701

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