甲斐翔真が『風、薫る』にもたらしたもの “直美”上坂樹里の人生に差し込んだ真っ直ぐな愛

甲斐翔真が『風、薫る』にもたらしたもの

 吾郎が登場したのが第13週からで、りん(見上愛)が看護の仕事に自信をなくし、迷走した時期とちょうど重なる。看病婦だったツヤ(東野絢香)が看護を学んで、看護婦になりたいと希望し、看病婦として働きながら講義を受けていたのだが、疲労が重なり、患者への投薬を忘れて発熱させてしまった。

 りんはツヤの過労が限界に達したことに気づいていながら対応できなかったのは自分の責任だと病院に訴えたが、ツヤの解雇はあっさり決定した。りんも直美も処分取り消しを直訴したが、病院側の処分は変わらなかった。

 りんはツヤの解雇のことで責任を感じて、それまで以上に仕事を抱え込むようになった。家にも帰らず、急患の対応に追われるりんを直美は心配するが、そんなりんの様子を見て見習生のヒデ(池田朱那)が「辞めます」と突然の辞職を宣言。周囲を驚かせた。西洋の看護を真剣に学び、向上心の高いヒデは見習生の中でも優秀で、期待される生徒だった。

 ところが「一ノ瀬先生がいい看護婦なら、私は看護婦になれないし、なりたくありません」と宣言して、何よりりんに衝撃を与えた。りんは取締役を外され、直美が内科と外科の取締役を兼任することになった。

 その後、ヒデが担当するはずだった胃腸を患っていた患者の山本(本田大輔)が実はがんで、手術をしたが予後が悪く、どんどん衰弱していた。山本の妻・テイ(伊勢佳世)が熱を出して見舞いに来られなくなったため「このまま俺が死んだら手術しなきゃよかったよ。自分を責める」と一人でも家に帰ろうとする山本の気持ちを汲んで、りんは山本を介助しながら山本の家に向かった。

 結局、山本は寝込んでいるテイにりんと一緒に牛鍋を食べておいしかったと嘘をつき「手術してよかった。お前のおかげだ」と直接言い、家に一泊して病院に戻り亡くなった。このことがあって以来、りんは手が震えて患者の脈も取れなくなった。

 シマケンこと島田健次郎(佐野晶哉)にも、幼なじみの虎太郎(小林虎之介)にも、新潟で出会った押しの強い新聞記者・横沢公輔(井上祐貴)にもモテるも、直美もりんがこのまま看護の仕事を離れないようにと心配するが、すっかり気力をなくしていた。

 気落ちして、りんが看護の仕事から離れているとき、直美は気持ちの真っ直ぐな愛情豊かな吾郎と出会い、穏やかな時間を過ごせていた。それだけではなく、直美を捨てた実の母である文(内田慈)の看護と看取りをできたこと。直美はりんと離れている間に見違えるほど成長して、派出看護という新しい夢に向かって動き始めていた。

 家族の存在への憧れと不安が強すぎる直美だから、吾郎との関係にも慎重になってしまうのは仕方がない。ただ好意を伝えるだけでなく、直美の臆病で繊細なところも理解した上で愛情を伝えていく吾郎。その不器用で子どもっぽいところもありつつ、ジェントルマンで優しい眼差しには直美も大いに癒されているはず。この2人には幸せになってほしいと願わずにいられない。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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