佐野晶哉、小林虎之介、井上祐貴 『風、薫る』三者三様の恋のアプローチから目が離せない

『風、薫る』佐野晶哉らの恋のアプローチ

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第20週「家族のカタチ」では、新潟から戻ってきたりん(見上愛)が直美(上坂樹里)とともに、“恵風看護婦会”に所属する看護婦として、派出看護の活動に邁進する。

 4週にわたって放送された“新潟編”が区切りを迎え、東京の地で再びバディとして歩みを始めたりんと直美。まだ世間に浸透していない派出看護に四苦八苦しながらも、内務省衛生局の役人・柳生(中村倫也)の声が追い風となり、ようやく活動は軌道に乗りかけている。

 また、りんが新潟から戻ってきたことによって、より加速する気配があるのが恋愛模様。これまではシマケン(佐野晶哉)と虎太郎(小林虎之介)との三角関係が展開されていたが、東京の新聞社へと移った記者の横沢(井上祐貴)も加わり、それぞれの思いがより複雑に交錯することになりそうだ。

 帝都医大病院に勤務していた頃は、看護婦の仕事や娘の環(英茉)と過ごす時間を最優先にしていたりん。そのため、シマケンも虎太郎も彼女と親しい関係にはあれど、あと一歩を踏み出せないでいた。

 最初にりんと出会っていた虎太郎にとって、彼女は“お姫様”のような存在だった。自身とは身分が釣り合わないと悟っていた虎太郎は、りんへの恋心を心の奥底に秘めて接しながらもどこかで距離を計っていたように思う。晴れて製薬会社の社員としてりんの前に久しぶりに現れた際は、あの頃とは別人のような服装を身にまとい、社会の役に立つ仕事をしている自負とともに彼女と相対する。

 ただ、虎太郎は東京の地で苦労して看護婦になったりんが送った怒涛の日々を知らない。卯三郎(坂東彌十郎)が経営する「瑞穂屋」で働き始め、未知なる看護婦養成所の門を叩き、看護を学んだトレインドナースとして病院に勤務する。虎太郎は社会的身分を向上させれば、りんと対等に向き合えると思っているのかもしれないが、離れていた空白の時間を埋める努力をするほうが先決ではないだろうか。

 一方のシマケンは、りんのことが好きだと認識するまでに時間がかかったこともあり、どのタイミングで一気に距離を詰めればいいのか計りかねている印象を受ける。りんが新潟へと旅立つことになった際も、直美が環の2人目のお母さんになったと知り、意を決して告白するかと思えば、環によく顔を見せる「おせっかいなおじさんになる」と宣言。手紙を送る約束は交わしたものの、シマケンはどこかでりんの“特別な存在”になることを躊躇しているように映る。

 しかし、りんが東京を離れたことによって、知らない場所でも彼女の人間関係は刻一刻と変化してしまうことに。直美から「いけすかない新聞記者と親しくなって結婚を申し込まれたとか」と伝えられた際は驚愕の表情を浮かべていたが、「本当にただの親切なおじさんになっちゃうかもね」と付け加えられて、ようやく危機感を覚えたようだった。

 新潟では直美の粋な計らいで、りんと環と忘れられない特別な時間を過ごしたシマケン。日本海の海辺で3人の時間を大切に噛み締める姿を見て、りんは「シマケンさん、心が愛しげだなって。きれいでかわいらしくて」と口にする。すると、シマケンは「いとおしいです。いつかこんな瞬間を書いてみたい」と告白。環も含めた3人の時間を丸ごと幸せに感じているからこそ出たシマケンの言葉に、思わず涙を流すりんの姿も相まって、多幸感に溢れたワンシーンとなった。

 しかし、直美いわく“いけすかない新聞記者”の横沢が東京にやってきたことで、シマケンも虎太郎もりんとの距離感を変化させざるを得ないかもしれない。それほど新潟での横沢は突飛な言動とストレートな振る舞いでりんの心を翻弄していた。

 りんが最初に横沢と出会ったときも、彼はあめ菓子屋に並ぶ老婆の順番を抜かした大地主の男に対して、毅然とした態度で異議を申し立てていた。その後も、相手が警察だろうと「不当な暴力は止めたまえ」と注意するなど、自分の信念を曲げない正義感を持っている。その結果、鑑別所に放り込まれてしまうものの、面会にやってきたりんに対して、彼は「結婚しませんか」と突然言い放つ。シマケンも虎太郎も明確に伝えられなかったりんへの好意を、平然とした表情であっさりと言葉にしてみせるところにも、横沢の後先考えずに突っ走る、よくいえばまっすぐな性格が表れていた。

 横沢がこれほどまでに難なく距離を詰められるのは、りんの過去を詳しく知らないことも影響しているのかもしれない。彼女が嫁いだ先で、夫から酷い扱いを受けていたことをシマケンと虎太郎は知っているからこそ、そう簡単に結婚という言葉を口にはできない。そういう意味では、りんと出会ってまだ日が浅い横沢がグイグイと迫っていく姿を目の当たりにする2人も、覚悟を決めてりんとの距離を縮める一手を打つ必要があるのではないだろうか。

 シマケン、虎太郎、横沢が東京に揃い踏みとなったことで、りんとの距離感には間違いなく変化が訪れる。それぞれの関係性がどのように波打つのか。波乱の四角関係を見守りながら、三者三様のアプローチに目を配りたい。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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