『VIVANT』はなぜ社会現象になったのか? “考察ブーム”だけでは語れない物語の魅力

そこから先のクライマックスについてはあえて割愛させてもらうが、詰まるところ『VIVANT』という作品は、複数の登場人物たちが常にいくつもの顔を持ち合わせているドラマであった、というのがわかりやすいだろう。平凡な主人公だった乃木が、実はエリート諜報員であり、謎に満ちた悪役のような表情も見せれば、生き別れた父親に会いたいと願う実直な男としての顔も見せる。短絡的な正義と悪の対立もなく、裏切りと結託が相互に繰り返されながら、大勢の登場人物たちの思惑や信念がぶつかり合うことをもって物語が前へと進んでいくのだ。

たとえば昨今のトレンドである“考察ドラマ”の場合、誰が犯人か、誰が裏切り者なのかといったように「誰が」という部分にばかりコミットしていて、意外性を重視した答え合わせさえ済んでしまえば物語としての起伏や奥行きは乏しくなりがちである。対して本作は「誰が」という引き込み方は最低限に留め、それをきっかけのひとつとして「では、そこから何が起きるのか?」に進めていく。つまりは、“物語”という基礎をもって視聴者を作品世界へと巻き込んでいく、極めて真摯にドラマというものの原点回帰を図っているのである。第1シーズンの開始前にキャスト情報だけざっくりと伝えた上でストーリーが完全に伏せられていたのも、純然と“物語”で惹きつけるための策だったのだろう。
例によって第2シーズンもどのような物語が描かれるのか事前には明かされていない。少なくとも、乃木が「別班」であることなど、フックとして便利な手札を第1シーズンで一通りさらけ出してしまったので、より高度なストーリーテリングが要求されることは間違いない。ましてや今回は1クールではなく2クール。どうしたって半年間も視聴者の興味を持続させるだけの濃密な物語を用意しなくてはならず、作り手の技量が存分に試されることになる。

第10話のラストで、神社にこっそりとお供えされた赤い饅頭によって「別班」の新たな任務が始まることが告げられた。乃木や黒須たち「別班」が何らかのミッションに挑むことが一つの軸となり、そこに新たな裏切りや結託が重ねられていくのだろう。第1シーズンのようにいくつかのフェーズに分かれたり、もちろん乃木以外のメインキャラクターのバックグラウンドが深掘りされる可能性も高い。そして、「皇天親無く惟徳を是輔く(『書経』の引用で、“天は公平であり徳のあるものを助ける”という意味)」。乃木がノコル(二宮和也)に伝えたこの言葉から考えるに、今度の乃木は裏表なく実直に正義を貫く人物として、物語の揺るがない軸になるはずだ。
■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、7月26日(日)スタート 毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、内野謙太、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、井上順、林遣都、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、宮下今日子、Tanapak Jongjaiphar、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
公式TikTok:vivant_tbs























