見上愛、『風、薫る』で示した“国民的俳優”の輝き 一ノ瀬りんを生き抜いた半年間の集大成

演技者として頭角を現しはじめたかと思いきや、たちまちトップの座に躍り出る俳優がいる。「最近よく見かける」から、「この人しかいない」という確信へ。これは少し極端な話だし、俳優たちの実力は数値化できるものではないのだから、比べようがない。それぞれの価値は安易に測れるものではないし、比べるべきでもない。しかし現に、冒頭に記したような演技者は少なからず存在する。NHK連続テレビ小説『風、薫る』で主人公のひとり・一ノ瀬りんを演じている見上愛は、まさにそういう俳優だろう。

本作は、日本社会が大きく変わる明治期を舞台に、ふたりの“トレインドナース(=正規に訓練された看護師)”の活躍を描いてきた。そのうちのひとりが、見上の演じるりんだ。相方の直美(上坂樹里)とは出自も性格も大きく異なるが、いまではまさに“最強のバディ”そのもの。彼女たちが手を取り合い、支え合う姿に、どれだけ涙してきたことか。そこにいたのは旧来の価値観に立ち向かっていくりんと直美であり、新しい時代を切り拓こうとする見上と上坂だった。
見上が「朝ドラ」のヒロインに決まったと知ったとき、驚いた。いやもちろん、彼女が“若手俳優の登竜門”を主演俳優として通過することは、なんら不思議ではない。演技者としての実力と魅力には早くから気がついていた自信があるし、「比べようがない」といいつつも、2000年前後生まれ世代を代表する俳優のひとりだと思っていた。これはなにも、彼女のキャリアにおける出演作が若くして多いことや、すでに主演を務める機会が増えつつあることに対してだけではない。
大河ドラマ『光る君へ』(2024年/NHK総合)や、「月9」作品である『119エマージェンシーコール』(2025年/フジテレビ系)などのオーディエンスの多い話題作で存在感を示し、見上は映画『国宝』(2025年)でも名だたる先輩俳優陣とともに並んだ。2023年の終わりにNetflixにて配信がスタートした『幽☆遊☆白書』では主要キャラクターのひとりを演じていたし、翌年には同じくNetflix作品である『恋愛バトルロワイヤル』で主演を務めていた。ここから彼女が「朝ドラ」の看板を背負うようになり、“国民的俳優”となることは十分にイメージできる。

しかしそのいっぽうで彼女は、良質なミニシアター映画作品を支えてきた存在でもある。現代社会に勝負を仕掛け、暗部を照らし出そうとした『プリテンダーズ』(2021年)や『衝動』(2021年)、国内外で高い評価を得た熊切和嘉監督の『658km、陽子の旅』(2023年)、それから、気鋭監督である清原惟による傑作『すべての夜を思いだす』(2024年)で軸となるポジションを担ってきた。東京の映画文化のハブであり、ミニシアターの聖地であるテアトル新宿がメイン館となった、『不死身ラヴァーズ』(2024年)で主演を務めていたことも忘れてはならない。




















