加藤よしきの「2025年 年間ベスト映画TOP10」 出塁率が高い“当たり年”の1年に

加藤よしきの2025年ベスト映画TOP10

 で、ここから少しギアが上がりまして、6位は『フレイムユニオン 最強殺し屋伝説国岡[私闘編]』です。阪元裕吾監督の過去作でも一番世知辛い感じがしつつ、そこからの「頑張ろう」という気持ちは、素直に胸に迫るものがありました。観て強くなった気になるアクション映画は多くありますが、こういった頑張ろうと思えるアクション映画は少ないです。5位の『ビーキーパー』は、年の初めにして「とんでもねぇものを観た」という気持ちになった1本。話がひたすらデカくなって面白いというのは、実はすごく珍しいんじゃないでしょうか? 普通のアクション映画だったら、もっとこう紆余曲折するものを、ここまで一本道で勝負するとは。黒幕の正体が分かった瞬間、本当に声が出そうになりました。ジェイソン・ステイサムのベストかもしれません。

監督、脚本、俳優の三位一体 『ビーキーパー』はジェイソン・ステイサム史上最高傑作だ!

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 いよいよベスト4ですが、先陣を切るのはブラッド・ピットが魅せた『F1/エフワン』。ブラピといえば、あまりにも二枚目すぎる男です。それを逆手にとって、二枚目半の役を好んで演じている傾向があったのですが、ここに来てまさかのド直球なアメリカンハンサムガイ演技が炸裂! あんたまだ脱ぐのかよ、しかもまだカッコいいのかよ。素直な驚きがありました。503エドウィンの時代からずっとハンサムって、あんたそれ大変なことよ。それはさておき、3位の『スーパーマン』です。何がビックリしたかって、ちょっとお話作りが上手すぎました。情報の取捨選択が抜群です。ジェームズ・ガンらしさはそのままに、針の穴を通すようなテクニックでスーパーマンを現代に蘇らせたと思いますね。しかし、そこに輪をかけて抜群やなと思ったのが、2位の『プレデター:バッドランド』です。「プレデターを主人公にしますよ」という企画として、これ以上の回答はないんじゃないでしょうか? 最初のアクションから「おおっ」と思いましたが、その後もテンションが上がりっぱなし。80~90年代の洋画っ子が喜ぶツボも押さえており、クライマックスでアレが、がしゃーん、がしゃーんと出てきたときは、悔しいけれど気持ちよくなってしまいました。

ブラッド・ピットが異常にカッコいい! 『F1/エフワン』で発揮された“ブラピ力”

ブラピ、カッケーっ! というわけで『F1/エフワン』(2025年)である。お話は、ちょっとビックリするくらい1990年代の香りが…

『スーパーマン』がまっすぐに描いたまっすぐな正義 作品に込められた力強いメッセージ

遂にアメリカンスーパーヒーロー映画の真打ちが戻ってきた! ジェームズ・ガン監督作『スーパーマン』(2025年)である! これがも…

 そして栄えある1位は、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』! おめでとうございます! 昨年末に試写で観て「2025年はこれ以上の映画に出会えないかもしれない……」と戦慄したのですが、本当に最後までブッちぎってNo.1でゴールテープを切りました。やっぱね、ちょっと特別ですよ、この映画。アクションもいいですし、話もいいし、キャラもいいし、ちょっとしたシーンもいいし、作中を貫くメッセージもいい。続編を計画中だそうで、それはそれで楽しみなんですが……なんというか、二度と再現できない人生や歴史の一幕を垣間見ているような、そういう感覚がありました。私の人生のベスト1『男たちの挽歌』(1986年)にも匹敵する、本当に大好きな1本。「風的形狀」には最優秀主題歌賞も贈りましょう。私が映画を観るのは、こういう映画と出会うためです。

『トワイライト・ウォリアーズ』はなぜヒットしたのか? 不変の香港映画マインドがここに

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(2024年)が大変だ。日本国内で異例の大ヒットを飛ばしている。洋画不況が叫ばれ、…

 そんなわけで面白い映画が大量にあった2025年でした。続く2026年は、身辺を落ちつかせて、もっとたくさんの映画を楽しもうと思います。世の中、面白い映画が大量にあるのは間違いないっぽいのですから。

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