『シバのおきて』犬は“死”をどう捉えているのか むせび泣き必至の第5回

毎週、愛らしい柴犬たちに癒やされ、“犬バカ”な『シバONE』編集部の悪戦苦闘と成長にこちらも励まされてきたNHKドラマ10『シバのおきて〜われら犬バカ編集部〜』。ここまでハートフル&ユーモラスなひとときをくれてきた作品だが、今週第5回は“犬バカ”視聴者の多くがむせび泣きを誘われたことだろう。

順調に取材を進める『シバONE』チームだが、スタッフ犬2号であり福助の頼もしい兄貴分・ボムの体調不良が気がかりだった。三田(こがけん)から伝えられたのは、ボムが脾臓の病気で、もはや手の施しようがないということだった。言葉を失う相楽(大東駿介)たちは、ボムがもうすぐ誕生日であることから皆でパーティーを開く。亜衣(瀧内公美)による犬用手作りケーキに舌鼓を打ち、福助やひとみと元気な表情を浮かべていたボムは、数日後、穏やかに息を引き取る。相楽は、清家(片桐はいり)が温泉好きなボムのために企画していた「犬温泉の旅」特集を決める。

飼い主たちにとって、伴侶動物を失うということは宿命であると同時に、人生で最も痛ましい瞬間でもある。ボムの葬儀の日に三田が口にした「僕はボムのために精一杯尽くしてあげられたのかって……もっとできたんじゃないかって思っちゃって……」というセリフが端的に表現されているように、人間と違い自分の感情を言葉で明確に伝えられない生き物たちは、私たちが気づいてやらなければ痛みや苦痛を訴えることができない。ゆえに、残された飼い主ーー多くの場合、生き物たちは私たちよりも先に寿命が訪れるーーは大きな後悔で胸が押しつぶされてしまう。肉親を亡くす悲しみとは、また異なるものなのだ。

そんな三田を慰める滑沢先生(松坂慶子)の言葉、「9歳っていうことは、人間でいうと50代ね。あなたから見ればあっという間だったかもしれないけれど、ボムにとってはその何倍も、あなたと幸せで濃密な時間を過ごしたんじゃない? だから、後悔なんかしないで」の語尾には静かな力が籠り、心に響く。

そしてここで、なぜ清家が『シバONE』編集部に参加したかが明かされる。温泉宿を営む実家で、清家は幼い頃からゲンタという柴犬を飼っていた。18歳のときにゲンタを失い、旅館を訪れる客や犬たちを目にすることに耐えられず、上京してきたのだった。三田もまた、カメラマンとして柴犬に会うたび、ボムを思い出して涙が止まらなくなってしまうため、温泉企画を最後に編集部を去ろうとしていた。清家が言うようにこの喪失は「そう簡単に忘れられることじゃない」。それでも飼い主たちは、喪失を経てなお残る犬たちからもらった喜びとぬくもりを、他者への優しさとして抱き、生きていけるはずだ。

悲しみを共有し合ったのは人間たちだけではない。相楽や亜衣から「寂しくなるね」と語りかけられた福助だが、「寂しい……?」と、“死”という出来事に際して人間が抱く感情は今ひとつ理解していないようだった(声を担当する柄本時生の、あえて感情をこめないトーンが絶妙である)。しかし、犬ももちろん、人間とは違った方法で感情を理解し、表現することができる。

終盤、ボムに呼ばれたような気がした福助は、出版社の屋上に駆け上がり夜空を見つめる。そのラストショットはあまりに多くのことを語っていた。そんな福助の横顔にこみ上げるものがあったのか、相楽は「スタッフ犬2号ボム、本日限りで地上勤務の任を解く。そして天上勤務を命ずる」という一言を口にする。ユーモアがあるとともに、ボムがいつまでも見守ってくれているという希望も感じる言葉だった。
編集部は相変わらず小競り合いばかりで、シリアスになり過ぎないながらも、犬と人とで悲しみを分かち合い、慰め合った第5話であった。
■放送情報
ドラマ10『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~放送
出演:大東駿介、飯豊まりえ、片桐はいり、こがけん、篠原悠伸、やす、黒田大輔、水川かたまり、瀧内公美、勝村政信、松坂慶子ほか
声の出演:柄本時生、津田健次郎
原作:片野ゆか 『平成犬バカ編集部』
脚本:徳尾浩司
音楽:YOUR SONG IS GOOD
プロデューサー:内藤愼介(NHK エンタープライズ)
演出:笠浦友愛、木村隆文、加地源一郎、村田有里(NHK エンタープライズ)
制作統括:高橋練(NHK エンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
写真提供=NHK






















