『シバのおきて』大東駿介から目が離せない理由は“真摯”さにあり 心を繋ぐ犬たちの存在

かわいすぎる個性豊かな柴犬たちと、人間関係は難ありだが真面目な“犬バカ”編集部員たちが織りなすNHKドラマ10『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』。“柴犬飼い主あるある”を綴った相楽の企画「シバ川柳」が大当たりし、『シバONE』は一躍人気雑誌となった。
メンバー全員胸をなでおろしたのも束の間、続く次号の企画、柴犬たちが体を張ってアクティビティに挑戦する「シバチャレ」でプールにやってきた福助は、相楽(大東駿介)から無理やり泳がされパニックに陥ってしまう。実は福助、水が大の苦手だったのだ。滑沢先生(松坂慶子)に叱られ、さらに妻・亜衣(瀧内公美)や咲(有香)からも怒りを買うことに。「もう福ちゃんに撮影協力させない」と拒絶され、相楽は家から追い出されてしまった。不貞腐れる相楽だったが、福助なしでは撮影が成立しない。果たして福助との再会は叶うのだろうか……?

ご存知の通り、子供への愛情が夫婦の仲を繋ぎ止める役割を果たすことを指すことわざ「子はかすがい」をもじってタイトルに冠した「シバは、家族のかすがいか」。見どころは、私たち人間同士の心を繋いでくれる、犬たちの存在のありがたさだ。
行き過ぎた撮影で身勝手さがまたもや露呈し、ついに亜衣たちからもそっぽを向かれてしまった相楽は、犬の気持ちを理解しようと自分自身が犬になってみる奇策に打って出る。アスファルトの上を四つん這いになり、犬の眼差しからその世界を知ろうとする姿は不審者そのものだが、そこには“福助を知りたい、気持ちを理解したい”という不器用な彼なりの愛情が垣間見える。

人から落ち度を指摘されるとすぐ反発して怒鳴り、痛いところを突かれては不貞腐れるを繰り返してしまう性格は相変わらずだが、表現が下手なだけで福助や家族への思いはずっと真摯だ。彼の福助への愛情は本物だと気づいた亜衣たちが相楽をもう一度受け入れていくように、視聴者もまた相楽から目が離せない理由がここにある。

第3話から振り返ってみれば、相楽は「犬の気持ちは分かるんだ。人間の気持ちは分からないのにね」と皮肉られているが、彼の欠点はどんな人間にも少しずつあるものである。相楽のように見栄や意地を張って素直になれなかったり、つい言い過ぎてしまったり、逆に石森(飯豊まりえ)とその父親のように、“家族だから”という関係に甘えて会話をおろそかにしてしまう我ら人間たちに対し、いつもよどみない瞳と心で向き合ってくれる犬たち。そんな犬への愛情を同じくすることで、家族はまた結びついて共同体となる。そして犬の真っ直ぐな思いに応えようと、人間の気持ちもまた素直になれるのだろう。

そして第4話では、『シバONE』が教えてくれる知識として「カーミングシグナル」が登場した。言葉を話せない犬のコミュニケーションの手段の一つで、ストレスや不安を感じたときに自分を安心させたり、相手を落ち着かせたりするためのボディランゲージ(※1)だ。言い争いになった飼い主たちの間に割り込んだり、喧嘩の場から逃げ出したりするのがその行動だとされている。ちなみに現時点で分かっているだけでも30種類はあるそうだ(※2)。

ところで「子はかすがい」と同じく家族と犬との関係を表現したことわざに「夫婦喧嘩は犬も食わない」がある。犬の食べない物はほとんどないが、その犬ですら夫婦喧嘩には見向きもしないことから、たいがい些細なことが原因で起こりすぐに仲直りする夫婦喧嘩は放っておいた方がいいという意味だ。ただ、今週相楽家で起きたいざこざを通してみると、犬が夫婦喧嘩に見向きもしないのはある種の「カーミングサイン」だということが理解できる。犬の性質を分かったうえで作られたはずの格言だが、実は犬からの気遣いであり、ストレスのサインだったことを私たちは知らなかったのではないか。何とも涙ぐましい限りだ。
参照
※1.https://dog.benesse.ne.jp/withdog/content/?id=138670
※2.https://www.min-breeder.com/magazine/15695
■放送情報
ドラマ10『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~放送
出演:大東駿介、飯豊まりえ、片桐はいり、こがけん、篠原悠伸、やす、黒田大輔、水川かたまり、瀧内公美、勝村政信、松坂慶子ほか
声の出演:柄本時生、津田健次郎
原作:片野ゆか 『平成犬バカ編集部』
脚本:徳尾浩司
音楽:YOUR SONG IS GOOD
プロデューサー:内藤愼介(NHK エンタープライズ)
演出:笠浦友愛、木村隆文、加地源一郎、村田有里(NHK エンタープライズ)
制作統括:高橋練(NHK エンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
写真提供=NHK





















