ティモシー・シャラメの魅力は“繊細”だけではない 『マーティ・シュプリーム』はハマり役に

ジョシュ・サフディ監督、ティモシー・シャラメのパンツを脱がす! 世にいうハマり役とは、「この人、本当にこういう人なんじゃないか?」と思わせることだ。そして日本の創作者のあいだでは、作品の中でパーソナルな部分をさらけ出すことを「パンツを脱ぐ」と表現する。シャラメが『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』(2025年)で演じた役は、彼のメディアを通じて垣間見える野心を体現した役であり、だからこそ「本当にこういう人なんじゃないか?」と思わせるハマり役となった。今後の彼の代表作となるだろう。
時は1950年代。アメリカで卓球選手をやっているマーティ(ティモシー・シャラメ)は、並々ならぬ自信と上昇志向を持っていた。世間的に卓球はマイナー競技で、選手だけではまったく食えていない。それでも「ピンポンって呼ぶな! テーブルテニスだ!」とキレながら、「俺がアメリカで卓球を有名にしてやる!」とブチ上げる。名声を得るために卓球の世界大会に突撃するが、よりによって敗戦国である日本の選手に完敗。しかも態度の悪さゆえに卓球協会にメチャクチャ叱られる。世界大会から持ち帰ったのは、名声どころか屈辱とデカい借金だけ。おまけに次回の大会に参加する金もない。選手としてのキャリアは完全に詰んだ。しかし、そのデカすぎる野望は終わらない。金がなければ作ればいい! そんなわけでマーティは金儲けに奔走するのだが、その全てが明後日の方向に暴走するのであった。
監督のジョシュ・サフディは、気鋭の監督コンビであるサフディ兄弟の片割れだ。兄弟で手掛けた『グッド・タイム』(2017年)や『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)は、どちらも街のケチな悪党が追い込まれてテンパりまくる姿を描いた傑作だった。本作も題材こそ卓球だが、劇中の8割はロクでなしの主人公が金を求めて爆走する物語、つまり監督の得意ジャンルだった。そして、本作で奇跡的な輝きを放っているのが主演のティモシー・シャラメである。
シャラメといえば、『君の名前で僕を呼んで』(2017年)に主演し、弱冠21歳でアカデミー主演男優賞の候補になった逸材だ。その後も『ビューティフル・ボーイ』(2018年)といったヒューマンドラマから、『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)のような超大作、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023年)などでも主演を務め、人気・実力ともに今やハリウッド若手No.1と言っていい、確固たる地位を築いている。今日までの彼のイメージを一言で表現するなら「繊細」だ。半端ない美形であることは大前提でありつつ、細いシルエットに、どこか少年っぽさの残る顔面は、「繊細で孤独な美少年」系の役がよく似合った。
スクリーンでは儚げな姿で魅せるシャラメだが、現実では間違いなくギラギラと輝く若手スターだ。その幅広い挑戦の経歴を見ていくと、俳優としての上昇志向は非常に強いと言っていいだろう。あのレオナルド・ディカプリオにキャリアの相談をしたという有名なエピソードは、その野心を象徴しているように思えてならない。ちなみに、このときにディカプリオは「スーパーヒーロー映画とハードなドラッグはやめなさい」と言ったそうだが、シャラメ本人は『ダークナイト』(2008年)が大好きなので、ヒーロー映画の可能性は潰したくないと語っている。























