『続・続・最後から二番目の恋』が願った固定観念からの解放 生涯“第一の人生”でもいい

千明と和平の関係も、名前のつけられない間柄だ。恋人とも、親友とも、ソウルメイトともつかないけれど、互いにいちばん大切な存在。何らかの名前をつけてしまったとたんになくなってしまうこの関係が、本作の柱となっている。「関係性に名前のついた2人」ではなく、「隣にいる1人どうし」という距離感が千明と和平らしい。
千明を慕い続け、生涯彼女のそばにいたいと願う万理子の“属性”も、他のドラマであればなにがしかの名前をつけられ、カテゴライズされるのかもしれない。しかし、このドラマではそうしない。
寂しくない大人なんていない。つまんないことが面白い。独身とは、いつでも恋ができるということ(でも、しなきゃいけないということでもない)。じじくさいです、でもそこが最大の魅力。

「○○といえばこういうもの」「こうあるべき」という固定観念を捨てて、老いも若きも、どんな属性も、互いに肯定しあい、互いの良さを活かし合えたらいい。そんな願いが、このドラマには込められていた。
アップデートされた千明の職場描写としての本打ち(脚本打ち合わせ)で、トップダウンではなく、上下関係なくチーム全員がホワイトボードを前にディスカッションする姿が印象に残る。最終回で千明は還暦を迎え、会社に残る後輩たちにバトンを託して、自らの制作会社を立ち上げる準備中だと語った。
和平の娘・えりなは海岸に漂着したゴミをアート作品として蘇らせる活動をライフワークにしている。それは、加齢や定年で「戦力外通告」を受けた人も新たな居場所で輝くことができるというメタファーなのかもしれない。さらに、第1シリーズから描かれている海岸のゴミ拾いと亡き妻への弔いをこめた「桜貝集め」という和平の日課。これをえりなが知らず知らずのうちに引き継いでいる。第2シリーズでは反抗期だったえりなが、父親の背中を見ながら成長してバトンを受け取り、自分の道を見つけた。
そして「バトンの受け渡し」は、このドラマの制作スタッフの中でも起こっていた。前述のベテラン演出家・宮本理江子が『続・続』のチームには参加せず、チーフ演出の立場を若手に譲っている。宮本といえば、若き日の中井貴一の出世作『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(1983〜1997年/TBS系)を手がけ、昭和のドラマ全盛期を牽引した脚本家・山田太一の娘である。さらには、山田太一・向田邦子とともに「シナリオライター御三家」と呼ばれた倉本聰による『優しい時間(2005年/フジテレビ系)、『拝啓、父上様』(2007年/フジテレビ系)の演出にも携わった宮本。倉本聰脚本・中井貴一主演の『風のガーデン』(2008年/フジテレビ系)では、全回の演出を単独でつとめた。

『最後から二番目の恋』にどこか昭和の名作の片鱗が見てとれるのは、宮本自ら昭和ドラマの巨匠たちからバトンを受け取り、その息吹を本作のそこかしこに注入していったからではなかろうか。宮本からのバトンを受け継ぎ、『続・続』では映画『翔んで埼玉』や『はたらく細胞』でメガホンをとった30代の楢木野礼がチーフ演出をつとめた。「チーム千明」と同じように、若手とベテランが共存する現場で「団体競技」であるドラマの芸術点をさらに上げ、シリーズ最高傑作が生まれる。これは「斜陽」と揶揄されて久しいテレビドラマにとって、未来への希望といえよう。
死は誰にでも平等にやってくる。生きるのは寂しく辛いけれど、「歳をとるのも悪くない」と思えたなら、少し肩が軽くなる。若い世代にバトンを渡して未来に希望を抱きつつ、生涯「第一の人生」を歩めたなら、死ぬのが少しだけ怖くなくなる。そんな希望を持たせてくれるドラマだった。こうなったらもう5年ごとに続編を作って、60代、70代、80代のいくつになっても「ダンスに間に合う人生」を見せてほしい。
鎌倉を舞台に、テレビ局プロデューサーの主人公と、市役所で働く公務員の恋を描いたロマンチック&ホームコメディ。2012年1月に第1期の連続ドラマ、同年11月にスペシャル版、2014年に第2期が放送され、本作はその続編となる。全シリーズ、岡田惠和が脚本を担当している。
■配信情報
『続・続・最後から二番目の恋』
TVer、FODにて配信中
出演:小泉今日子、中井貴一、坂口憲二、内田有紀、飯島直子、久保田磨希、松尾諭、佐津川愛美、白本彩奈、広山詞葉、美保純、柴田理恵、浅野和之、渡辺真起子、森口博子、石田ひかり、三浦友和ほか
脚本:岡田惠和
プロデュース:若松央樹(フジテレビ)、浅野澄美、郷田悠(FCC)
演出:楢木野礼、高橋由妃、西岡和宏(フジテレビ)
主題歌:浜崎あゆみ「mimosa」(avex trax)
制作協力:FCC
制作著作:フジテレビ
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