瀧内公美が変えた『あんぱん』のカラー 教師・師匠が朝ドラで担ってきた重要な役割

教師・師匠が朝ドラで担ってきた重要な役割

 では、本作における“黒井雪子=瀧内公美”のように、近年の朝ドラヒロインたちに多大な影響を与えた教師(あるいは師匠的存在)を演じた者たちは誰がいるだろうか。

 前作『おむすび』(2024年度後期)のヒロイン・結(橋本環奈)が通う栄養専門学校の桜庭真知子(相武紗季)は多少の厳しさを持つ人物だったが、黒井ほどではなかった。さらにその前作『虎に翼』(2024年度前期)にもヒロイン・寅子(伊藤沙莉)の女学校時代の教師が登場したが、出番も役割もほんのわずか。これを演じていたのが数々の舞台を踏んできたプレイヤーの伊勢佳世だっただけに、どうにももどかしい気持ちになったものだ。

 そうだ、“女性教師”に絞らなければ、『ブギウギ』(2023年度後期)でヒロイン・スズ子(趣里)が所属する「梅丸少女歌劇団(USK)」の研究生たちの教育係の橘アオイ(翼和希)がいたではないか。翼は「USK」のモデルである「OSK日本歌劇団」の現役トップスターとあって、ヒロインだけでなく作品そのものに与えた影響が大きかっただろう。観ていて朝から気が引き締まったものである。

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 それから気を引き締められる存在といえばやはり、『舞いあがれ!』(2022年度後期)のヒロイン・舞(福原遥)が航空学校に通っていた頃の教官・大河内守(吉川晃司)の声と表情とがよみがえってくる。人の命を運ぶパイロットを育成する立場にあるからこそ、容赦ない厳しさで舞たちに接し、結果として多大な影響を与えた。ここ数年で非常に印象に残っている教師=師匠である。

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 さて、ここから黒井は『あんぱん』の世界に対して、さらにどんな影響を与えていくのだろうか。それはおそらく、のぶが何を受け取るのかにかかっている。そしてまた、時代は大きく変わっていくのだ。私たちは今田美桜と瀧内公美の真剣勝負を再び見られるだろうか。

参照
※ https://steranet.jp/articles/-/4337

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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