『あんぱん』では複雑で多面的な役柄に 瀧内公美、冷静な自己分析で歩んできた俳優人生

瀧内公美、“濡れ場”脱却から朝ドラ出演へ

 朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)は、『アンパンマン』で知られる漫画家・やなせたかしの妻・暢をモデルにした物語。第4週までに、主人公・朝田のぶ(今田美桜)の幼少期から女子師範学校の受験までが描かれた。実際には、やなせたかしと暢は大人になってから出会っているそうだが、このドラマでは2人は幼なじみとして、共に成長していく。

 柳井崇(北村匠海)は高知第一高等学校を受験するのだが、なんと当日、受験票を忘れてしまう。足の速いのぶは受験票を崇に届け、そこから急いで自分の受験に向かう。すでにベルが鳴る中、息を切らしてなんとか女子師範学校の門をくぐるのぶを冷ややかに一瞥したのが、瀧内公美演じる教師・黒井雪子だ。大きく重々しい校門を不穏な音をたてながら閉める姿に、黒井がのぶに立ちはだかる壁となることが暗示された。

 瀧内といえば、NHK大河ドラマ『光る君へ』(2024年)での源明子役が記憶に新しい。天皇の孫という高貴な出自でありながら父が失脚、その無念を晴らそうと藤原道長(柄本佑)の妾となり、義父である兼家(段田安則)を呪詛するという役どころだった。無表情に恐ろしい計画を口にする姿や呪詛するシーンの迫力にゾッとした視聴者も多かったことだろう。今や、女の情念や嫉妬を演じさせたら右に出るものはいないという俳優である。

瀧内公美が日曜の夜を刺激的に 『光る君へ』『ブラックペアン』で放つ“強敵”オーラ

NHK大河ドラマ『光る君へ』、TBS日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』、どちらも8月11日の放送休止回を経て、後半戦に向けて…

 瀧内は1989年生まれ、福井県の出身で、教員を目指して東京の大学で学んだという。地元で教育実習をしていた際に、「なにか違うなと思いながら、自転車で毎日通っていたら、たまたま小学校の前で映画の撮影をしていて」(※)、そのエキストラに参加したことが俳優への道につながった。

 2012年に映画デビューすると、2014年に『グレイトフルデッド』で映画初主演、2016年には映画『日本で一番悪い奴ら』に出演して注目を集める。順風満帆に見える当時のことを、瀧内はこう述懐している。

「25、26歳ごろだったと思いますけど、女優はその年齢で淘汰されはじめて、30歳ごろにキャリアアップできずにいると引退することが多い気がするんです。そうならないために、さあ、どうすると思ったとき、私は大人になってからでもできる表現をしようと」

 この自分への客観的な洞察力こそが瀧内の魅力となっているのだろう。“若い女”ということに甘んじることなく、妖艶な大人の役柄を重ねていくことで、俳優として確実にステップアップしていく。

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