『べらぼう』朋誠堂喜三二が動き出す? “尾道三部作”尾美としのりのキャリアを解説

大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第18回の予告において、「ふざけんじゃねー!!」と怒鳴っている御仁がおられた。キャラ的に蔦重(横浜流星)か大文字屋(伊藤淳史)あたりかと思ってよく観ると、意外にも声の主は朋誠堂喜三二こと平沢常富(尾美としのり)だった。

常に余裕の笑みを浮かべ、正体はお武家さんなのにまったく偉ぶることもなく、遊び方もスマートな粋の結晶のような男。それが朋誠堂喜三二だ。そんな喜三二があれだけ激昂するのだから、ただごとではない。第18回は不穏回なのかと、悪い予感が一気に膨れ上がる。
そもそも平賀源内(安田顕)の悲劇を、我々はまだ忘れてはいない。あの粋の化身のようだった男ですら、あのように壊れて(壊されて)しまい、悲惨な最期を遂げた。『吉原細見』の序を書いた頃の源内を見て、あのような最期を想像した人が何人いただろうか。森下佳子脚本の恐ろしさを、改めて思い知らされた。

史実上、喜三二はまだまだ死なないし、この時期の大きな人生のイベントも見当たらない。彼が何にそんなに怒っているのかは、よくわからない。ただ、彼の活躍回であることは想像に難くない。いつも笑顔の“宝暦の色男”の、新たな一面が観られるかもしれない。
尾美としのりと言えば、温厚で優しそうなお父さん俳優のイメージであろうか。だが、ある一定以上の年齢層からすればドラマ『鬼平犯科帳』(フジテレビ系)のうさ忠であり、もう少し上の層(アラフィフである筆者の年代)からしたら大林宣彦監督“尾道三部作”のイメージであり、さらに上の層からしたら子役のイメージである。
そう。あの総白髪の優しそうなおじさんは、元々劇団ひまわりの子役出身である。子役時代の代表作としては、『火の鳥』(1978年)がある。手塚治虫のライフワークとも言える壮大なシリーズ中の「黎明編」を、名匠・市川崑監督が映画化した作品だ。舞台は弥生時代。飲めば不老不死になれるという火の鳥の血をめぐっての、冒険譚である。
尾美としのり(当時は「尾美トシノリ」名義)は、邪馬台国に滅ぼされた熊襲(現在の九州南部)の生き残り・ナギを演じている。仇となる邪馬台国の軍団長・猿田彦(若山富三郎)に気に入られ、バディとなる。超大物・若山富三郎を向こうに回しての、堂々たるW主人公ぶりである。当時48歳の若山富三郎と12歳の尾美としのりの、親子ほど歳の離れたブロマンス描写がなかなかに趣深い。大量のハチに刺された猿田彦の鼻が腫れ上がり、その膿をナギが吸い出してやるシーンがある。妙に官能的なシーンであり、倒錯した気分になる。
かわいいながらもまっすぐな目をした凛とした少年であり、弓矢も上手く、戦闘力も高い。もし宮﨑駿作品を実写化したなら、コナン役やパズー役も似合いそうな雰囲気である。すでに子役の頃から、尾美としのりは才気走っていた。




















