“ヤスケン劇場”はまだまだ続く! 安田顕=平賀源内を刻みつけた『べらぼう』での名演

『べらぼう』安田顕=平賀源内を刻んだ名演

 NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の平賀源内(安田顕)の最期が凄まじかった。第16回「さらば源内、見立は蓬莱」は田沼意次(渡辺謙)との口論に始まり、“不吉の家”での豹変ぶりから獄中でのうらぶれた姿まで、これぞ“ヤスケン劇場”と言える怪演のオンパレード。放送もあっという間の45分だった。

 この平賀源内という人は、才の溢れた奇人としてよく語られるが、こと『べらぼう』においては魅力たっぷりの愛すべき人物として描かれた。長屋の隣人がそうだったように、いつも早口でニコニコとしている源内のことをほっとけない人物だと心掴まれた視聴者も多かっただろう。蔦重(横浜流星)にとってはメンターとも言える存在であったし、意次にとっては単なる利害関係を超え、苦楽を共にした“相棒”のような存在だったと言える。

 その田沼とは手袋の件で“口止め料”を渡されたところで一度は関係が崩れてしまったが、獄中のシーンではこれまで阿吽の呼吸でやってきた2人の友情が溢れ出た。「俺には分かんねえんですよ田沼様」「俺やもう何が夢で何が現だか……」と泣き崩れる源内に「夢ではない。俺はここにいる。源内、意次はここにおる」と語りかける田沼。安田の震える声に咽び泣きの演技によって源内が保ち続けていた見栄がごそりと剥がれ落ち、友情のみによって繋がり合う、ブロマンスとして絶品の名シーンが誕生した。

 うらぶれる源内を演じるのは辛かったことを、安田は公式インタビューにて明かしている。「最後まで源内さんをきっちり務めさせていただくのは当たり前のことですが、幻聴が聞こえてきて、どうしようもなくなっていく姿はやっぱり切なかったですね。パラパラと降る雪を見ながら辞世の句を読むラストのシーンは本当に切なかった」というが、そっと置かれた白湯に手を伸ばす、その最期の瞬間まで切なくも美しい名演だった。(※)

 安田は『大奥』(フジテレビ系)では田沼意次を演じており、今回はその経験を踏まえた上での源内役となる。安田が演じた“平賀源内”は、これ以降も“安田顕”の名前が言及される歴史的な演技となったと言えるだろう。

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