『べらぼう』唐丸の“いま”を考察 染谷将太演じる喜多川歌麿か、それとも写楽?

『べらぼう』唐丸の“いま”を考察

 NHK大河ドラマ『〜蔦重栄華乃夢噺〜』の第1章は総じて各話ごとに見せ場が用意され、生み出されるカタルシスが視聴者の心を掴んできた。しかし、物語には一つだけ残されている謎がある。唐丸だ。

 第5回「蔦に唐丸因果の蔓」で、唐丸(渡邉斗翔)は向こう傷の男(高木勝也)と川で転落するシーン以降、姿を消している。しかし5月4日に放送された第17回「乱れ咲き往来の桜」ではいね(水野美紀)に対し蔦重が「いい加減に戻ってきてくんねぇかなって思ってんですけど」「唐丸に決まってんじゃねぇすか」と発言。

 そして蔦重がふじ(飯島直子)から見せられた絵には「豊章画」の印が。「豊章」とは、喜多川歌麿の初めの号であり、豊章が勝川春章(前野朋哉)風、礒田湖龍斎(鉄拳)風に絵柄を描き分けていることから、唐丸に聞かせた未来予想図が蔦重をよぎる。次回予告には歌麿役の染谷将太が出演していることから、唐丸=歌麿説が濃厚となった。

 筆者はもともと、唐丸は東洲斎写楽なのではないかと思っていた。写楽は出自や本名が分からない謎の浮世絵師で、その全作品、140点あまりを蔦屋重三郎が刊行している。そして写楽は、短期間で作風がめまぐるしく変わったことも特長だ。写楽は出版界に突然現れ、いきなり歌舞伎役者の役者絵でデビューし、そして1年足らずで消えている。

 『べらぼう』第5回では蔦重が唐丸に「俺はあいつを謎の絵師として売り出す」と発言していることから、謎の浮世絵師である写楽フラグのように思えたのだ。

 唐丸の“絵が上手い”という才能も、“絵柄をそっくり似せて描き分ける”という類のものだった。第4回「『雛形若菜』の甘い罠」では、礒田湖龍斎が描いた下絵を、蔦重の義兄・次郎兵衛(中村蒼)が敷物と間違えて花器の下に敷き、下絵が水びたしになってしまった。そんな中、唐丸は「試しにおいらに直させてもらってもいい?」と申し出て、元の絵そっくりな下絵を描き上げた。こうしたエピソードからも、写楽のイメージそのままではないか……と思うのである。

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