トム・クルーズにダニエル・クレイグも 長期間にわたって同じ役を演じ続けた俳優たち

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(2025年)が5月23日に日米同時公開される。
同作は、人気シリーズ『ミッション:インポッシブル』初となる前・後編2部作の完結編で『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』の続きが描かれる。タイトルに「ファイナル」がついていることから、『ミッション:インポッシブル』シリーズの存続が気になるところだが、1作目が1996年なので、これでシリーズは30年目。現時点でも記録的な長寿シリーズになっている。その間、主人公のイーサン・ハント役は交代することなくトム・クルーズが演じ続けており。30年間8作品で同じ役を演じ続けたことになる。映画史上でも稀有な例だ。
今回はトム・クルーズ/イーサン・ハントのように長期間多くの作品で同じ役を演じ続けた例を振り返っていく。
アンソニー・ダニエルズ/C-3PO

アンソニー・ダニエルズは、SF映画の金字塔『スター・ウォーズ』の正当シリーズ9部作すべてに出演した唯一の俳優である。登場期間は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)から『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)で42年にも及ぶ。C-3PO役のダニエルズはロボットスーツを着て演じているため、本人の顔は劇中に全く出てこない。顔は知らないが声なら誰でも知ってる俳優であろう。あの「イギリス英語でまくしたてるような話し方」は「ロボットみたいな口調」の典型例として映画ファンの脳にインプットされていることだろう。
「マーベル・シネマティック・ユニバース」に登場したJ.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)はトニー・スターク/アイアンマンが作ったAIとの設定だったが、イギリス人のポール・ベタニーがイギリス英語で声を演じていた(ベタニーはそのままヴィジョン役にスライド)。やはり「人工物はイギリス英語を話す」というイメージが何となくあるのかもしれない。あるいはサポートキャラクターはイギリス英語を話すイメージだろうか。J.A.R.V.I.S.のモデルになっているエドウィン・ジャーヴィスはスターク家に仕えたイギリス人の執事、ブルース・ウェイン/バットマンのサポートをするのもイギリス人の執事のアルフレッド・ペニーワースである。
2027年に公開されることがアナウンスされている『スター・ウォーズ/スターファイター(原題)』はエピソード9『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の5年後が舞台になるようだが、C-3POの登場はあるのか気になるところである。
シルヴェスター・スタローン/ロッキー・バルボア

シルヴェスター・スタローンは、『ロッキー』シリーズ5作品と『クリード』シリーズ2作品に登場。最も有名な実在のボクサーがモハメド・アリなら、最も有名なフィクションのボクサーはロッキー・バルボアだろう。ボクシング映画は数あれど、これほど多くの人に認知されているシリーズは他にないのではないだろうか。ロッキー・バルボア/シルヴェスター・スタローンの登場期間は『ロッキー』(1976年)から『クリード 炎の宿敵』(2018年)までで現時点でアンソニー・ダニエルズ/C-3POに並ぶ42年間である。スタローンにとって『ランボー』シリーズと並ぶ代表作だが、ジョン・ランボーの登場期間である『ランボー』(1982年)から『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年)の37年間を上回る。
スタローンはロッキー役で『ロッキー』シリーズでは主人公として出演し、『クリード』シリーズでは主人公の師匠ポジションの脇役として出演した。前者でアカデミー賞の主演男優賞候補になり後者で助演男優賞候補になっている。アル・パチーノが『ゴッドファーザー』(1972年)、『ゴッドファーザー PART II』(1974年)で同じ役を演じてそれぞれで主演と助演のアカデミー賞候補になった例があるが、同じ役を「別シリーズで」演じて「主演と助演でアカデミー賞候補」は筆者が知る限りスタローンがアカデミー賞史上唯一の例である。ロッキーは『クリード』シリーズの最新作、『クリード 過去の逆襲』(2023年)には登場していない。同シリーズの今後について正式なアナウンスがないため、ロッキーのこれからが描かれるか(再登場はあるのか)どうかは不透明である。
ダニエル・クレイグ/ジェームズ・ボンド

『007』シリーズのジェームズ・ボンドは、『ミッション:インポッシブル』シリーズのイーサン・ハントと並ぶスパイのアイコン的な存在である。代替わりしながら『007/ドクター・ノオ』(1962年)から『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)とすでに60年近くシリーズは続いているが、歴代ジェームズ・ボンド/007で最も長い期間継続的に演じていたのはダニエル・クレイグである。出演した作品数は5作品でさほど多くないが、15年間(2006年~2021年)に渡ってボンドを演じていた。『007/カジノ・ロワイヤル』ではまだ30代だったクレイグは『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』では50代になっていた。30代、40代、50代で継続的にボンドを演じた今のところ唯一の例である(ショーン・コネリーは30代で就任して30代のうちに降板し、その後40代と50代で1回ずつボンドを演じたため継続的ではない)今後の『007』シリーズだが、権利がAmazon MGMスタジオに譲渡されたため、シリーズは今までと大きく方針が変わるかもしれない。
ジェレミー・ブレット/シャーロック・ホームズ

シャーロック・ホームズは、イギリス人にとってジェームズ・ボンドと並ぶ国民的なフィクションヒーロー。世界一有名な探偵であろう『シャーロック・ホームズ』のシリーズは何度も映像化されているが、継続的にシャーロック・ホームズを演じた最も有名な例はジェレミー・ブレットだろう。イギリスのグラナダTVが製作した『シャーロック・ホームズの冒険』(1984年~1994年)は原作に忠実を徹底した正統派で、今もって根強い人気を誇る。ブレットは10年間で41エピソードにホームズとして登場し人気を博したが、シーズン6終了後に死去してしまったため、原作全エピソードの映像化は敵わなかった。エピソード数でいえば、『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』(2012年~2019年)に出演し、154エピソードでホームズを演じたジョニー・リー・ミラーの方が多いが、舞台を原作の19世紀から21世紀に転換し、エピソードもほぼオリジナルの同シリーズを「正統派な映像化の代表例」と見做すファンはいないだろう。
怪奇俳優として有名なピーター・カッシングも長期間ホームズを演じた例である。カッシングは映画『バスカヴィル家の犬』(1959年)でホームズを演じて以降、テレビシリーズ『Sherlock Holmes(原題)』の第2シーズン(1968年)、単発のテレビ映画『The Masks of Death(原題)』(1984年)で3度にわたってホームズを演じておりその期間は25年にも及ぶ。わが国での知名度はブレット版のホームズに大きく劣るが、イギリス本国ではカッシング版のホームズも正統派として人気である。




















