『キャスター』岡部たかしが悩める父親を熱演 「間違わない人はいない」の重さ

阿部寛は、本作で娘との関係に問題を抱える父親を演じている。過去にも『下町ロケット』(TBS系)で、阿部が演じた佃航平は娘の利菜(土屋太鳳)とうまくいっておらず、悩みを抱えながら仕事に打ち込む姿が視聴者の共感を呼んだ。今作ではさらにひねりが加えられている。すみれは父親の仕事を「誰かの不幸を偉そうに放送するあのこと」と糾弾する。進藤と別の姓を名乗るすみれから見て、父が携わる報道は忌まわしいものなのだ。
海馬は多忙のため娘との約束を果たせないことに後ろめたさを感じながらも、なんとかして自分の仕事の意義を伝えようとする。それが冒頭で引用した台詞だ。ここでは、報道は父親のあり方とシンクロしている。誤解を恐れずに言うと、今作において、報道のあり方それ自体が社会正義のためなら他のものを犠牲にしていいという価値観をともなっている。しかし、本当にそう言えるのか。真実を免罪符にして、プライバシーや個人的な幸福をなおざりにした結果が、現在の進藤であり、海馬ではなかったか。
等価交換のような報道のあり方はプライバシーや肖像権を侵害する盗撮犯と根っこでつながっている、という問題意識が第4話には隠れていた。父権主義的ではない報道のあり方、メディアとの関係性もあるはずで、パターナリスティックな見解を披露しがちな日曜劇場にあって、今作がどんな方向性を示すかに注目したい。永野芽郁の「子どもだろうが、大人だろうが、間違わない人はいない」という台詞もあったが、真実を伝えるだけで終わらず、その先を考えることも報道の役割だと伝えているようだった。
テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。
■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、山口馬木也、黒沢あすか、堀越麗禾、馬場律樹、北大路欣也(特別出演)、谷田歩、内村遥、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
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