阿部寛はなぜ日曜劇場にハマる? 『キャスター』でも発揮される“ハイカロリー”な芝居

世の中には“最強の組み合わせ”というものがある。ビールに枝豆、深夜のラーメン、梅にウグイス、松に藤。定番同士を組み合わせれば、鬼に金棒、向かうところ敵なしである。阿部寛と日曜劇場もそのひとつだ。
4月13日21時からスタートする『キャスター』(TBS系)で主人公のニュースキャスター進藤壮一を演じるのが阿部寛だ。阿部が日曜劇場の主演を務めるのは、『DCU〜手錠を持ったダイバー〜』(TBS系)以来3年ぶり。2023年7月クールの『VIVANT』にも出演しており、日曜の夜にテレビで阿部寛を観ることは、年中行事のような生活の一部になりつつある。
孤高と親しみやすさのバランスが阿部の人気の秘訣だろう。決して器用なタイプには見えないが、この人が出ているとつい見入ってしまう存在感がある。ドラマのほうも安定して視聴率を稼ぎ出し、作品に良し悪しはあっても大コケすることはない。その点でヒット請負人でもある。一寸先は闇の芸能界でこれは非常に稀有なことである。なぜなのか。

阿部寛について、演じ手としての特徴を挙げるなら、なによりまずその圧倒的な存在感に触れないわけにいかない。上背があり、彫りの深い顔立ちと低音ボイスは映像作品に映える。そうやって生み出される阿部の演技は一言で言うと「濃い」ものである。ハイカロリーで濃厚、アメ車に負けない洋モノの重厚感を醸し出している。だがそれは一面にすぎない。
たしかに阿部の演技は一目でわかるシグネチャー、“阿部寛らしさ”がある。しかし、それは押しつけがましさと対極のものだ。求められた役の中で自分らしさを出しているだけで、しっかり作品に溶け込んでいる。カロリーが高くて胸やけしそうなのに、意外とさっぱりしている。だからまた食べたくなる。それが阿部寛である。

阿部寛でなければ成立しない役というものがあって、わかりやすいところで『TRICK』(テレビ朝日系)の上田次郎、『結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)の桑野信介、『テルマエ・ロマエ』のルシウスはその典型である。どのキャラクターも他の俳優が演じたらまったく違う作品になったと思われる。クセが強いのに見てしまうのは、ツボを押さえたキャラ造形がはまっているからだ。






















