『ガンニバル』壮絶な展開でついに完結 大悟たち家族のラストシーンに込められた“希望”

混沌とした洞窟を抜けだし有希(吉岡里帆)のいる病院へと向かっていた大悟は、途中で村人に助けを求められ、火が放たれた後藤家の本家へ行くこととなる。暴徒と化した村人たちによって、“後藤家”であるがために殺されていく無抵抗の人々。大悟が到着した時には、ちょうど尊が後藤家の少年に銃を向けているところだった。そこで大悟が尊に放つ言葉には、このドラマが最も描きたかった重要なテーマが込められていると見える。「これ以上新しい憎しみで縛るんじゃねえよ」。いまある火種をまた別の火種を作ることで消していくだけでは、何も解決しない。そしてその火種が大きくなったことで生じる争いほど、無意味なものはない。これは現実世界に起きるあらゆる争いにもダイレクトに通じるものといえよう。
すべての“戦争”が終結したエピローグで描かれる、大悟と恵介の最後の対話。原作においてこのシーンは、事件の現場検証のかたわらで交わされていたものだったはずだ。しかしこのドラマでは、周囲に誰もいない殺風景な面会室に変更されている。やはりこのやり取りは、大悟と恵介という物語の根幹を担う2人きりの空間で描かれるべきものだと判断されたのであろう。よそ者である大悟と、供花村の歴史を継いできた恵介。ずっと相対する立場であった両者は、村の呪いを断ち切るという同じ目的のために結託し、戦い、そしてすでに娘を持つ父親である大悟と同じように、恵介もまた父親になろうとしている。
そこには「次の世代を信じる」ということへの祈りのようなものが、たしかに込められていると見える。面会を終えると、供花村へ帰って来ることができるのかさえわからない恵介は檻の奥へ行き、大悟は檻の外へと出て供花村に根を張って新たな生活を始める。相対する両者は、わずかな共通点を有しながらも相対する者同士としてありつづける。他者との距離感はそれでいい、あえて同化させなくてもいいのである。そして原作のような不穏さを残した終わり方にせず、新たに村にやってきた駐在の視点から遠巻きに映される大悟たち家族の姿。“呪い”が完全に断たれ、供花村は変わっていくのだという希望がそこにあらわれている。
■配信情報
『ガンニバル』シーズン2
ディズニープラス スターにて独占配信中
出演:柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、高杉真宙、北香那、杉田雷麟、山下リオ、田中俊介、志水心音、吉原光夫、中島歩、岩瀬亮、松浦祐也、永田崇人、ジン・デヨン、六角精児、恒松祐里、倉悠貴、福島リラ、谷中敦、テイ龍進、豊原功補、矢柴俊博、河井青葉、赤堀雅秋、二階堂智、大鷹明良、利重剛、中村梅雀、橋爪功、倍賞美津子
原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
監督:片山慎三、佐野隆英、大庭功睦
脚本:大江崇允、廣原暁
プロデューサー:山本晃久、半田健
アソシエイトプロデューサー:山本礼二
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