“3人目のプリキュア”が担ってきた役割とは? 『キミプリ』で描かれた“再起”の物語

『キミプリ』で描かれた“再起”の物語“

 『キミとアイドルプリキュア』の第7話「心おどる♪キュアキュンキュンデビュー!」において、ついに3人目のプリキュア・キュアキュンキュンが登場した。本作における“アイドル”という主題を象徴的に体現する新たなプリキュアの誕生は、作品全体の物語構造に新たな推進力を与えてくれている。

 物語は、紫雨こころがアイドルハートブローチを一度手にしながらも、キュアアイドルとキュアウインクの戦いぶりに圧倒され、自信を失って返却する場面から始まる。彼女が抱いた劣等感や無力感は、単なる“挫折”という枠に留まらない。幼い頃からの憧れと現実のギャップに揺れる姿は、視聴者にとってもどこか痛みを伴う共感を呼び起こしていた。

 こころの葛藤を描くパートは静かであるが、情報量は多い。プリキュアグッズをしまい込み、夢から距離を置こうとする描写。うたとななの働きかけ。プリルンの悔しさと田中の一言。いずれも彼女の心を動かす小さな要因として、丁寧に配置されている。やがてこころは、“忘れようとしても忘れられない想い”と正面から向き合う決意を固める。仲間たちの言葉が引き金となり、封印していたプリキュアグッズを再び手に取る姿には、自身の弱さを受け入れた上で再起する強さが垣間見える。これは、『プリキュア』シリーズが一貫して描いてきた“変身”の本質、すなわち内なる葛藤を越えて自己を肯定する行為の延長線上にあるものだ。

 チョッキリ団の罠に誘い出される展開は、視覚的な盛り上がりとともにこころの内面の“覚醒”を促す舞台装置となる。破壊されていくステージを見て、感情を大きく揺さぶられたこころの前に再びブローチが現れ、ついにキュアキュンキュンへと変身を遂げた。変身後のキュアキュンキュンは、プリキュアとしての資質に加え、ダンスで鍛えた身体能力を遺憾なく発揮し、敵のマックランダーを翻弄する。動きのキレ、間の取り方、そして決して迷いを見せない目線。そのすべてが、こころが積み重ねてきた努力と覚悟の証として描かれている。

 クライマックスには、キュアキュンキュンの専用楽曲「ココロレボリューション」が披露される。歌唱と戦闘を組み合わせた演出は、シリーズでも新しい試みのひとつであり、アイドルとプリキュアの融合という本作のテーマを象徴するシーンとなっている。そこから放たれる必殺技「プリキュア・キュンキュンビート」は、単なる攻撃ではなく、こころの“想い”が乗っかっている。救出されたダンス部の先輩・寸田とのやりとりも、こころの成長を印象づける要素だ。彼女はダンス部に入部することを選ばず、「憧れのプリキュアを目指す」という自らの意思をはっきりと口にする。迷いながらも、自分の選んだ道を堂々と語る姿には強い覚悟を感じさせた。

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