藤原奈緒の「2025年 年間ベストドラマTOP10」 目の前の幸せと日々の喜びを描いた作品たち

藤原奈緒の2025年ベストドラマTOP10

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2025年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は、放送・配信で発表された作品から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第1回の選者は、ライターの藤原奈緒。(編集部)

藤原奈緒の「2024年 年間ベストドラマTOP10」 テレビドラマは自分を映す鏡のようなもの

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2024年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…

1.『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)
2.『ひらやすみ』(NHK総合)
3.『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)
4.『ちはやふる-めぐり-』(日本テレビ系)
5.『ホットスポット』(日本テレビ系)
6.『シナントロープ』(テレ東系)
7.『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)
8.『晩餐ブルース』(テレ東系)
9.『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)
10.『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)

 江戸の本屋・蔦屋重三郎(横浜流星)を主人公とした森下佳子脚本の大河ドラマ『べらぼう』は、2024年の『光る君へ』(NHK総合)に続き、文化面から時代を描いた作品だ。一橋治済(生田斗真)を巨悪として“退治”するという終盤の大胆な創作を通して、まるで本作そのものが蔦重と仲間たちが築き上げた作品のように見せるとともに、それぞれの葛藤の中、人生を全うした人々の思いが、蔦重たちの生みだした作品を通して永遠に残っていく様を見た。そしてそこに、時代を越えて共鳴する「書をもって世を耕す」作り手たちの思いを見る。

 現在放送中の朝ドラ『ばけばけ』(NHK総合)の主題歌、ハンバートハンバートの「笑ったり転んだり」が「日に日に世界が悪くなる 気のせいかそうじゃない」と歌いつつ「君とふたり歩く」喜びを描いているように、2025年のテレビドラマの優れた作品の多くが、ままならない状況の中で、まずは目の前の幸せ、自分で作れる日々の喜びを追求することの大切さを描いていたように思う。昭和11年を舞台にした『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)が、いつ失われてもおかしくない、平穏な日常を慈しむ夫婦の姿を丁寧に描くことで視聴者の心を掴んだように。

 『ひらやすみ』が描いたのもまた、ヒロト(岡山天音)となっちゃん(森七菜)のなんでもない日常だ。ずっと変わらずにいられることなんて、ほとんど奇跡に違いけれど、そうありたいと願う人々の強さと優しさを描いていた。

 「一生つきあわなくてはならない」病気にかかったことで、「薬膳」に目覚める主人公を描いた『しあわせは食べて寝て待て』もまた、自分の手で作ることができる幸せを追求した作品と言える。また、「優しすぎる」司(宮沢氷魚)が背負っている苦しみが、さとこ(桜井ユキ)と思いを共有することで少し軽くなる姿を描いた最終話が印象的だった。

 『晩餐ブルース』は、男性にとってのケアの必要性を描くとともに、テレビ局で働く主人公を通して、若いテレビドラマの作り手たちの思いを垣間見た作品だった。

 「日常系」作品の名手バカリズムの真骨頂『ホットスポット』が描いたのも、脅かされてはならない、最高に楽しい「日常」だ。『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)が描いた同世代女性たちの結託に、宇宙人の中年男性・高橋さん(角田晃広)が加わることで新たな広がりを生まれ、切なさをも内包する彼ら彼女たちの会話を、できることなら永遠に見続けていたかった。

 一方で、目の前に落ちている幸せを拾って歩く人々の物語の、さらにその先にある空を見上げる喜びを描いたのが『いつか、無重力の宙で』(NHK総合)であり、『僕達はまだその星の校則を知らない』ではなかったか。大森美香脚本『僕達はまだその星の校則を知らない』が描いた「美しい世界」の外側には、健治(磯村勇斗)が解決しようがない様々な問題がひしめいていた。学校の屋上を中心に、世界全体にまで思いを馳せる壮大な作品であるとともに、生徒たちを演じる若手俳優たちの煌めきが光った。

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