髙石あかりは“あえて”練習していない? 神は細部に宿る『ばけばけ』“怪談”撮影裏

髙石あかりは“あえて”練習していない?

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 第12週では、いよいよトキ(髙石あかり)が怪談を披露する。最初に語ったのは、元夫・銀二郎(寛一郎)から聞いた『鳥取の布団』。制作統括の橋爪國臣によれば、この場面は髙石、そしてヘブンを演じるトミー・バストウにとっても、特別な意味を持つものだったという。

「実は最終オーディションで、あのシーンをやったんです。当時はまだセットプランもできていなかったので今とはちょっと違う形ではありますが、“和室のセットを組んで、ろうそくを用意して、怪談を語る、聞く”ということをしました。もちろんお互いに相手役は違う俳優さんでしたが、髙石さんには語る側、トミーさんには聞く側をやってもらいました」

 髙石とバストウも「このシーン、オーディションでやったね」「いよいよこのシーンが来るね」などと話しながら撮影に臨んだといい、橋爪は「オーディションのときにも、それぞれにすごくいいと思ったんですよ。トミーさんが聞いている様も良かったし、髙石さんの語りもよかった。そんな“よかった者同士”の2人が一緒にやることで、相乗効果が生まれてさらに素晴らしかったですし、当時を思い出して感慨深かったです」と振り返る。

「オーディションのときには俳優さん同士が『はじめまして』で、台本上で流れはわかっていても、そこまで関係性ができていません。でも本編では、2人が長い時間をかけて積み重ねてきた関係性がある。そのうえで演じているので、やっぱり違いは大きいですし、オーディション以上の感動がありました。もちろん、すてきなシーンになってほしいと思って台本は書いていますが、それが現実として目の前で繰り広げられると想像を超えてきますよね。髙石さんもトミーさんも“すごいな”と思いました」

 怪談集を読むのではなく、自分の言葉で怪談を語るのがトキとヘブンの流儀。橋爪は、その時間を「会話」だと捉えているという。

「基本的にはトキがずっと喋っているんです。でも、一方的にただ喋っているわけじゃない。ヘブンは日本語がまだ100%わかるわけではないので、『どこまで伝わっているかな?』とずっと考えながら喋っているんです。相手の目を見たり、反応を見たりしながら、間を取ったり、トーンを変えたりしている。言葉は一方通行に見えるけど、実はものすごく会話のキャッチボールがあるシーンだと思っています」

 さらに橋爪は「まだその段階には行っていませんが、将来的には怪談を通して気持ちが通じるような“愛の言葉”になってほしい」とし、「芸として喋るのではなく、心が通じるためのキャッチボール。『怖がらせよう』というよりは、『相手にわかってもらいたい』という気持ちの入った怪談を喋ってほしいと思っていました」と同シーンに込めた思いを明かす。

 そこで、橋爪が髙石に出した指示は、「あえて練習しないでほしい」というもの。

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