『VIVANT』堺雅人とテントともう1人の乃木憂助 想像力を刺激する陰の組織
身近にいるあの人は国家機密を追うすご腕のエージェントだった。架空の設定がもし現実にあり得るなら……という想像力を形にしたのが『VIVANT』(TBS系)である。
自衛隊の精鋭組織である別班。正体を明かさず、この国を脅かすテロリストや犯罪組織と戦いを繰り広げる。その一員である乃木憂助(堺雅人)が追うのは「世界中を巻き込む大きな渦」のテロ組織、通称「テント」だった。第4話で明かされたのは乃木が持つもう一つの顔で、8月13日放送の第5話では乃木の経歴に隠された衝撃の事実が明らかになった。
誤送金事件を起こした主犯はテントのモニターである山本(迫田孝也)で、山本の遺体発見現場と遺書を見た公安の野崎(阿部寛)は第三者の関与を疑う。野崎が目を付けたのは乃木だった。丸菱商事の社員で履歴書を見る限り怪しいところのない乃木は、いったん調べ出すとイレギュラーな事実が続出。第5話はその確認作業に多くの時間が費やされたが、詳細は本編にてご覧いただくとして、ここでは概要にとどめたい。
多くの考察班が乃木家の家紋また幼少期の記憶から、乃木の生い立ちについて自説を述べる中、第5話で明らかになった事実はそれらを裏付けつつ、より説得力のある形で提示するものだった。幹部のアリ(山中崇)からテントの情報を聞き出すため、乃木は出張を装ってバルカへ渡航。乃木を追ってバルカへ渡った野崎は、バルカ警察のチンギス(Barslkhagva Batbold)と共同戦線を張って捜査に乗り出した。
謎の多くは乃木の人生に関連しており、それもそのはず、乃木はテントと密接な関係がある人物だった。第1話ラスト以来の登場となった役所広司、二宮和也の存在もあるが、そのことが別班としてテントを追う理由になっていると推察される。さんざんほのめかされた乃木の幼少期エピソードも、やはり関係があるようで、乃木の知られざる生い立ちを野崎は島根にある乃木当主の寛道(井上順)から、乃木自身も知らなかった事実を、乃木はアリの口を通して知らされることになった。
乃木と野崎の視点を通して複数の経路で明かされる真実は、演出の小気味よさと相まって、謎の提示→解明というミステリー展開に視聴者を引き込む。そんな中で、時にユーモラスな筆致で語られるのが別班という組織のあり方だ。