『アンサンブル』は親子関係が焦点に “過干渉”“義理の親”問題をどう乗り越える?

『アンサンブル』は親子関係が焦点に

 リーガルラブストーリーと銘打たれた、連続ドラマ『アンサンブル』(日本テレビ系)。第5話では、主人公・小山瀬奈(川口春奈)と真戸原優(松村北斗)がやっと結ばれた。第6話では、瀬奈の母親・祥子(瀬戸朝香)からの猛反対を押し切り、2人は自分たちのペースで恋愛を進めている。

 『アンサンブル』には、多様な親子関係が登場する。兄の死後、姪を引き取った宇井修也(田中圭)と咲良(稲垣来泉)の義理の親子関係、母・ケイ(浅田美代子)の弟である和夫(光石研)に引き取られた優。そして、第1話から第6話まで丁寧に描かれてきた祥子の瀬奈への過干渉ぶり。母親が子に取る行動が、バリエーション豊かに描かれている。

 特に、祥子と瀬奈の関係性は、物語前半の大きな壁の一つとして描かれていた。祥子は、夫の浮気による離婚後、女手一つで瀬奈を育ててきた。その距離感は瀬奈の成長とともに変化することはなかった。瀬奈を「せなちゃん」と呼び、「出しっぱなしせなちゃん」「やりっぱなしせなちゃん」と甘やかしているような声色で瀬奈の生活に口を出す。注意をして厳しくしているというよりも、子供扱いしている雰囲気が滲んでいた。祥子には、瀬奈に自分の理想の娘でいてほしい、いつまでも世話を焼く対象でいてほしいという気持ちがあったのだろう。瀬奈も、過去に宇井と別れて落ち込んだ際、祥子に支えてもらった経験があり、本気で反抗することなく、その干渉を受け入れていた。

 祥子の「自分には娘しかいない」という思い、母を「無碍にできない」という瀬奈の思いはどちらもある程度は共感できるものだ。その歪んだ母娘関係は、端的に描かれていた。だが、瀬奈は優と出会い、自分の人生に向き合い始める。そして初めて祥子に反抗し、その後歩み寄ろうとする。第1話から続いていた母娘関係の不穏さが、ようやく解消された瞬間だった。

 母娘関係は、文学や映像作品において繰り返し描かれるテーマだ。母の存在は、娘の人生に対して強大な存在感を放つ。「母にどう思われるか」「母に何を言われるのか」「母はどんな顔をするのか」、娘が人生の選択をするとき、そんな考えが浮かぶのだ。母に反抗し、その呪縛から放たれることは、娘が自分の人生の手綱を握り、選択に責任を持つことにつながる。そして、母に反抗したからといって、分かり合えるとは限らない。『アンサンブル』では、瀬奈と祥子の関係性の解決は、比較的あっさりと描かれた。これは、祥子と瀬奈が適度な距離感を持てる関係だった証明だろう。これも一つの母娘関係だ。

 一方で、息子の恋愛に立ちはだかる母親がいることも事実。松村北斗が出演した『恋なんて、本気でやってどうするの?』(カンテレ・フジテレビ系)では、物語後半に松村北斗演じる長峰柊磨の母親・長峰真弓(斉藤由貴)が、主人公・桜沢純(広瀬アリス)の前に立ちはだかった。純が柊磨が抱える母の呪縛をなんとか解こうとするも、柊磨には届かないといった描写もあった。母の呪縛にあらがえないという感覚は、性別に関係なく存在する。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる