“朝ドラあるある”を乗り越えた『おむすび』 万博が示唆する“現代”に待ち受けるものは

“朝ドラあるある”を乗り越えた『おむすび』

 朝ドラあるあるとして有名なものに、「ヒロインの父親がクズ」というのがあるが、もう1つ「闘病の末に亡くなりがち」というものもある。その2つに合致しているのが、戸田恵梨香がヒロインを務めた2019年度後期『スカーレット』(NHK総合)で北村一輝が演じた川原常治だった。

 『おむすび』(NHK総合)第20週「生きるって何なん?」では、聖人(北村有起哉)の胃がんが見つかり、不穏な空気が漂うものの、手術は無事成功するという、先述したケースの言わば逆をいく展開となる。そこで聖人が実感するのは、家族への愛情と命の大切さだ。

 胃がんの疑いがあることを知った聖人は歩(仲里依紗)が働くガーリーズに初めて来店し、おしゃれをして街を歩くことの楽しさと娘の真剣な眼差しを目の当たりにする。聖人が入院することになった新淀川記念病院で、結(橋本環奈)は患者である聖人に、NSTメンバーの管理栄養士として、時に家族として優しく寄り添っていく。術後の食事のケアは結が担当。重湯、3分粥、5分粥、お粥(全粥)、白飯へと徐々に常食へと戻っていく描写としつこいまでに「よく噛む」というセリフが、そのまま結の管理栄養士の姿勢として映し出されている。そして、手術が無事に成功し、病室で目を覚ました聖人の手を握っていたのは、愛子(麻生久美子)だった。聖人が夢に見たのは、糸島にてみんなで佳代(宮崎美子)が握ったおむすびを食べている家族団欒の様子。そこに永吉(松平健)が急に出てきて、「親より先に死んだら許さんばい!」と聖人のおむすびを横取りしたという。今後が不安そうな聖人に愛子は大粒の涙を流しながら、「それぐらい何でもないよ。生きてるんだから、大丈夫」ともう一度聖人の手をパッ、パッと握る。

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