『アナと雪の女王』『美女と野獣』『ホークアイ』 “クリスマススペシャル”が量産される理由

“クリスマススペシャル”が量産される理由

 12月も半ばに差し掛かり、街はクリスマスムードに満ちてきた。各地でイルミネーションが輝き、ショーウィンドウも華やかに飾りつけられている。家でもクリスマスツリーを飾ったという人も多いのではないだろうか。12月13日の日本テレビ系『金曜ロードショー』(以下、『金ロー』)は、『アナと雪の女王/家族の思い出』(2017年)と『美女と野獣/ベルの素敵なプレゼント』(1997年)の2本立てで、「ディズニークリスマススペシャル」が放送される。世の中にクリスマス映画は数え切れないほどあるし、映画だけでなく海外のアニメシリーズやドラマシリーズでは、クリスマスエピソードが製作されるのが定番だ。近年では、シリーズ自体がアドベント的な雰囲気を醸し出していたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)ドラマ『ホークアイ』(2021年)や、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』(2022年)なども記憶に新しい。

 なぜ映画やテレビシリーズでは、これほど多くのクリスマス作品が製作されるのか。その理由について、主に欧米のクリスマス事情に焦点を当てて考えていこう。

クリスマスを迎える準備が重要

『美女と野獣/ベルの素敵なプレゼント』©2024 Disney

 クリスマスは当日と同じように、あるいはそれ以上に、その日を迎える準備が重要視されている。カトリック教会では待降節といって、クリスマスの4つ前の日曜日から週ごとに1本ずつろうそくに火を灯し、クリスマスを迎える準備をする。一般家庭でも、日毎にクリスマスの準備が進んでいく。近年日本でも定着しつつあるアドベントカレンダーも、12月1日から始まる25日までのカレンダーだ。多くの場合箱状になっていて、1日ごとに小さなお菓子やおもちゃが入っている。クリスマスまでのカウントダウンが、子どものみならず人々の心を浮き立たせる。イギリスのクリスマスプディングは、伝統的なレシピと風習に従えば、クリスマスの5つ前の日曜日、「スターアップサンデー(混ぜ込み日曜日)」に仕込みをし、当日まで熟成させる。ということは、11月からすでにクリスマスを迎える準備が始まっているのだ。また、クリスマス前にやることといえば、クリスマス映画を観まくるクリスマス映画マラソンも定番。友人や家族にクリスマスカードを送ったり、クリスマスツリーを飾ったり、クリスマスマーケットに行ったり、プレゼントを購入したり、クリスマス前はとにかく忙しい。

 こうした準備は、クリスマスがイエス・キリストの誕生日であることから、子どもの誕生を待ちわびる気持ちを表しているのかもしれない。イタリアで始まったとされるカトリック圏の定番・クリスマス飾りは、クリスマスツリーではなく、イエスの降誕場面を形どった馬小屋飾りだ。各家庭ではなく教会や広場に置かれることの多いこの飾りは、イエスが生まれたとされる馬小屋の様子を表したものだ。そこには聖母マリアやその夫のヨセフ、天使、羊飼い、東方の三賢者、牛やロバなどの人形が置かれるが、飼い葉桶は空っぽ。そしてクリスマス当日に、ようやく幼子イエスの人形が飼い葉桶に置かれる。

 近年はクリスマスにそれほど宗教的な意味を見出している人は多くないかもしれないが、こうした“待ちわびる”気持ちが、クリスマスの準備の大切さにあらわれているのかもしれない。そうしたムードを盛り上げるために、映画やテレビでもクリスマス作品が制作されるのではないだろうか。これらの作品を観て気分を高めることも、そんな準備の一環なのかもしれない。みんなとにかくクリスマスが待ち遠しいのだ。

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