『アナと雪の女王2』エルサとアナが見つめる“本当の自分” 2027年公開の第3作はいかに?
2013年に公開され、主題歌「レット・イット・ゴー 〜ありのままで〜」が世界中で大人気を獲得した『アナと雪の女王』。11月29日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で同作が放送されたのにつづき、続編『アナと雪の女王2』が12月6日に放送される。社会現象を巻き起こした前作を上回るヒットを記録した本作。世界興行収入は14億5000万ドルを記録し、2024年現在、アニメ映画としては『ライオン・キング』(2019年)、ピクサーの『インサイド・ヘッド2』(2024年)に次ぐ歴代3位を獲得している。
そんな『アナと雪の女王2』は、どのように前作と違うのか。続編ならではの見どころを紹介していこう。
“本当の自分”を見つめるストーリー
前作から3年。アレンデールの女王として国民たちと打ち解け、平和に暮らしていたエルサ。しかしあるときから、彼女は不思議な歌声を聞くようになる。ある夜、彼女はその声に導かれ、火、水、風、大地の精霊を目覚めさせてしまう。王国から火と水が消え、突風と大地の揺れによって、人々は高台への避難を余儀なくされてしまった。エルサはアナ、オラフ、クリストフ、スヴェンとともに、王国の危機を救い、自らの力の秘密を探るため旅に出る。
前作でエルサは“ありのまま”の自分を受け入れ、妹アナへの真実の愛によって彼女を救い、王国に平和を取り戻した。本作でエルサは、なぜ家族のなかで自分だけが不思議な力を持っているのかという謎に向き合うことになる。そこに待ち受けていたのは、予想だにしなかった壮大な冒険だった。
また前作ではアナの冒険がメインで描かれていたのに対し、本作では姉妹それぞれの冒険がくり広げられる。アナはまたしてもエルサを追うことになるのだが、やがて姉を心配する妹という側面以外の“本当の自分”を発見していく。
“ありのまま”の自分から旅立ち、次の1一歩である“本当の自分”を探す旅を描くのが本作だ。エルサのそれまでの苦労を知っているからこそ、本作での彼女の新たな冒険を応援したくなる。またアナの「エルサの妹」だけではない成長も胸を打つ。前作よりもう1歩踏み込んだエルサとアナのアイデンティティの物語は、やがて彼女たちだけの問題ではない、壮大な問いへとつながっていく。
前作にも匹敵する力強い楽曲の数々
『アナと雪の女王2』では、前作に引き続きクリストフ・ベックが音楽を担当。また名曲「レット・イット・ゴー」を生み出したロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス夫妻も参加しており、数多くの楽曲を手掛けている。
どれも粒ぞろいの楽曲のなか、主題歌「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」はまさに「レット・イット・ゴー」に匹敵する名曲だ。不思議な声に導かれてエルサが歌うこの曲は、彼女の心が外へ向かって開かれていくのを感じさせる。「レット・イット・ゴー」が自分のなかにあったものを解放する歌だったのに対し、「イントゥ・ジ・アンノウン」では、なにか大きな力に突き動かされ、まだ見ぬ世界に飛び込んでいく彼女ののびのびとした気持ちが歌われている。以前は自分のなかにあるものに怯えていたエルサだったが、恐れを手放し、“ありのまま”の自分を受け入れ、愛する人を救ったことで自信を持てるようになったのだろう。また3年という女王としての期間に、自己肯定感も育まれていったのかもしれない。「イントゥ・ジ・アンノウン」と「レット・イット・ゴー」では同じように歌声は伸びやかに響くが、そこには大きな違いがある。抑圧されていた思いが外へ向かって解放される「レット・イット・ゴー」と、未知の世界へ自ら踏み出そうという「イントゥ・ジ・アンノウン」では、解放の規模が違うのだ。そしてエルサは、“本当の自分”を探す冒険へと旅立つ。
しかし本作で最も注目してほしい楽曲は、クリストフが歌う「恋の迷い子」だ。クリストフ役は原語版ではトニー賞ミュージカル主演男優賞にノミネートされたこともあるジョナサン・グロフが演じているが、残念ながら前作では彼がしっかりと歌うシーンはなかった。そして待望のソロ曲として登場したのがこの「恋の迷い子」なのだ。この曲では、アナの自立性を認めつつ、彼女に追いつけないクリストフの寂しさや悲しみが歌われている。彼はこれまでのディズニー作品の王子たちとは違い、等身大の男性として描かれているのが特徴だ。恋に迷うこともあり、自身の不甲斐なさ、アナとの距離に戸惑うこともある。ロックバラード調のこの曲では、有名作品のパロディも含めたミュージックビデオふう風の映像も楽しい。日本語吹替版では、劇団四季出身の原慎一郎がクリストフの繊細な思いを見事に歌い上げている。
これらの楽曲は、すでに前作でキャラクターの背景がきちんと描かれているからこそ、くっきりとその輪郭を浮かび上がらせ、輝いている。
『アナと雪の女王』シリーズは、2027年に第3作が公開されることが発表されている。さらに公開時期は未定だが、4作目の製作も発表された。これまでキャラクターたちのアイデンティティを探求してきた本シリーズは、これからどこへ向かうのだろうか。