『チ。』『宙わたる教室』に共通する叩き壊すべき“世界” “学ぶ”ことの先にある興奮と喜び

『チ。』『宙わたる教室』共通する興奮と喜び

 一方、『宙わたる教室』の生徒たちもまた、さまざまな困難に直面する。「知」は、ときにその人が見ている「世界」の形を大きく変えてしまう。けれども、彼/彼女の周囲の人々が見ている「世界」は、依然として元の形のままなのだ。「お前だけが、なぜ?」。そこに生まれる、さまざまな感情や嫉妬心。さらには、みなと同じようにふるまうべきだという、善意の仮面をまとった「同調圧力」のようなもの。あるいは、主人公・藤竹の過去の「傷」となっている事件のように、その「成果」を「権威」に簒奪されることだってあるだろう。その人に不相応な「知」は、この「世界」の誰からも求められていないのだ。果たして、そうなのだろうか。もし、そうであるならば、叩き壊すべきは、その「世界」のほうなのではないか。それが、この2作品に共通するテーマであるように思うのだ。

『宙わたる教室』写真提供=NHK

 ところで、冒頭に挙げたシーンは、現世に何も期待していない青年・オクジー(小西克幸)が、天文研究所の助手として働きながらも「女だから」という理由で満足に研究することを許されていないヨレンタ(仁見紗綾)に掛けた言葉であり、それに応えて彼女が、意気揚々と文字の素晴らしさを語ったシーンだった。

 『チ。』の最初の主人公・ラファウ(坂本真綾)が火刑に処されてから10年後。偶然にも「地動説の資料」を預かることになったオクジーは、それを異端の修道士バデーニ(中村悠一)のもとに持ちより、その後ヨレンタとも知り合うことになる。かくしてヨレンタから文字を学ぶようになったオクジーは、研究の進捗を日記のように綴り始めるのだった。そして、ひとり納屋にこもって資料と格闘していたバデーニが宣言する。「地動説が完成した」と。そんな第10話「知」と対応するように「血」と名づけられた第11話。地動説の完成を祝う3人の前に登場する「現れるはずのない男」とは果たして誰なのか。そして、そこで明かされる衝撃の事実とは。年をまたいで2クール続くことが決定しているアニメ『チ。―地球の運動について―』。この「世界」を変えようとする人々の道程には、まだまだ数々の苦難と困難が待ち受けているのだった。

■放送情報
TVアニメ『チ。―地球の運動について―』
NHK総合にて、毎週土曜23:45~放送
Netflix、ABEMAにて、各話放送終了後配信
キャスト:坂本真綾(ラファウ役)、津田健次郎(ノヴァク役)、速水奨(フベルト役)、小西克幸(オクジー役)、中村悠一(バデーニ役)、仁見紗綾(ヨレンタ役)
原作:魚豊『チ。 -地球の運動について-』(小学館『ビッグスピリッツコミックス』刊)
監督:清水健一
シリーズ構成:入江信吾
キャラクターデザイン:筱雅律
音楽:牛尾憲輔
音響監督:小泉紀介
オープニング曲・主題歌:サカナクション「怪獣」
エンディング曲:ヨルシカ「アポリア」
アニメーション制作:マッドハウス
©魚豊/小学館/チ。 ―地球の運動について—製作委員会
公式サイト:anime-chi.jp
公式X(旧Twitter):@chikyu_chi

ドラマ10『宙わたる教室』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
BSP4Kにて、毎週火曜18:15〜1900放送
NHKプラスにて、同時配信・見逃し配信(放送後から1週間):https://www.nhk.jp/p/ts/11GMGMRG5V/plus/
出演:窪田正孝、小林虎之介、伊東蒼、ガウ、田中哲司、木村文乃、中村蒼、イッセー尾形 ほか
原作:伊与原新『宙わたる教室』
脚本:澤井香織
演出:吉川久岳(ランプ)、一色隆司(NHKエンタープライズ)、山下和徳
制作統括:橋立聖史(ランプ)、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、渡辺悟(NHK)
写真提供=NHK

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