成人男性が『プリキュア』デビューしてみた 映画『わんぷり』は初心者でも楽しめる
平成初期生まれの筆者が思い浮かべる女児向けアクション作品といえば『おジャ魔女どれみ』だ。とはいえ、私が男性ということもあり、幼少期に少し観たことがあるといった程度で、何が面白いのかまで説明することはできない。もちろん、中には女児アニメを観て育ってきたという人もいるが、おそらくそれは少数派だろう。
そんな筆者に編集部から現在公開されている映画『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!』を観て記事を書いてほしいという依頼が舞い込んできた。当然、筆者には『プリキュア』シリーズに関しての知識は一切ない。
最初は「なぜ私なのだろうか?」という疑問が浮かんだが、面白そうだったので引き受けてみることにした。それは『プリキュア』まったくの初心者である成人男性である筆者が、長い歴史のある『プリキュア』シリーズを観てどう感じるのか素直に気になったからだ。
とはいえ、やはり成人男性がひとりで映画館に『プリキュア』を観に行くのは少々ハードルが高かった。映画館に着いて指定のスクリーンに向かうと、やはり家族連ればかり。だが、成人男性のみなさんに安心してほしいのは、家族連れが大半であるがゆえに、誰も自分のことは気にしていないということだ。その点では人の目を気にすることなく無事席に座ることができた。
実は今回、事前に前情報を入れるか否かかなり迷っていた。仕事柄、試写を観ることが多いのだが、当然これから観る作品がどんな物語で、誰が出演していて、主題歌は誰が歌っていてといった情報を持っていたほうが、映画に集中できるというメリットがある。しかし、今回は『わんだふるぷりきゅあ!』を一切知らない状態で観に行ったほうが、『プリキュア』初心者の方にもリアルなレポートとして伝わるのではないかと考えた。
※以降、『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!』の内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
さて、まずは映画全体の感想から述べたいと思う。率直に言うと、大人でも十分に楽しめる作品だった。それはひとえに、ストーリーの展開が起承転結のセオリーにシンプルに則っていたことも大きいが、キャラクターがとにかく魅力的なのだ。本作ではキュアワンダフル、キュアフレンディ、キュアニャミー、キュアリリアンという個性豊かな4人のプリキュアが序盤から登場する。
4人それぞれの個性が明確に違っていたのは初心者にも優しいなと感じたし、とにかく兎山悟と一緒に暮らすうさぎの大福がカッコいい。何やらテレビシリーズでは話さないキャラクターらしいのだが、映画では最終局面で人間の姿となって、プリキュアたちの窮地を救う。そんな大福の声優を務めているのが中村悠一とあれば、納得せざるを得ない。中村のボイスで「待たせたな」のセリフを聞けただけでも映画を観に行く価値はあると言えるだろう。他にも花澤香菜や三宅健太といった錚々たるゲスト声優が出演しており、声優ファンも楽しめるのが嬉しい。
『プリキュア』といえば、『ふたりはプリキュア』に登場するキュアブラックとキュアホワイトのように、ショートヘアとロングヘアの性格の異なるプリキュアが悪の勢力と戦うというイメージだった。だが、本作では肉弾戦は一切なく、人気ゲーム「ドキドキ♡タヌキングダム」の世界へと吸い込まれたキュアワンダフルやキュアニャミーが、犬飼いろはと猫屋敷まゆを助けるために様々なゲームをクリアしていく。それはまるで『Fall Guys』のような世界観。子どもでも理解できるシンプルなストーリー設定の中で、こむぎがいろはへの思いを告げるシーンは、言葉は通じなくとも気持ちは伝わるという普遍的なメッセージを感じたし、思わず目頭が熱くなった。大人が忘れかけていたものを思い出させてくれる、そんな映画だなと感じた。