『虎に翼』“平等”は持てる者の理想に過ぎない? 伊藤沙莉×高橋克実の対話から見える現実
不特定の人々が出入りする喫茶店「ライトハウス」という公共の場で交わされた会話は、平等をめぐり、それぞれの立場から溝を埋めるものだった。昭和生まれの入倉が朝鮮出身者への憎しみを募らせるのは、単純に自身に向けられた悪意が理由だった。おせっかいな寅子は不平等に目をつむることができず、何とかしたいと思いながらも空回りしている状況だ。
これに対して、現実を知る太郎の言葉には重みがあった。寅子の悩みを「ご立派」と持ち上げつつ、「平等やら何やらに気を遣えんのは、学があるか余裕がある人間だけら。憲法が変わったんだすけ変われなんて言われても、全部ねえなったみてえでおっかねなってしもう。そんげ人間もいるでしょうて」と保守的な人々の思いを代弁した。
制度が変わっても人々の考えはすぐには変わらない。まして長い時間をかけて築かれた偏見や感情的な溝は、ちょっとやそっとでは埋まらないだろう。公正であろうとする寅子の努力は間違っていないが、現実の壁は厚かった。一同の会話を静かに聞いていた航一。「ごめんなさい」は誰の何に向けた言葉だったのだろうか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、田口浩正、遠山俊也、望月歩、堺小春、三山凌輝、竹澤咲子、和田庵、高橋克実
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK