『虎に翼』“平等”は持てる者の理想に過ぎない? 伊藤沙莉×高橋克実の対話から見える現実

『虎に翼』“平等”は持てる者の理想なのか

 『虎に翼』(NHK総合)第89話では、人種差別をめぐって溝を埋める試みがなされた。

 寅子(伊藤沙莉)宅を訪ねてきた小野(堺小春)は、初対面の汐見(平埜生成)と香子(ハ・ヨンス)夫妻に「朝鮮人と日本人の結婚に不安はねかったんでしょうか?」と尋ねる。小野は朝鮮人との結婚を周囲に反対されて断念したが、それ以来、後悔の念にさいなまれていた。

 「好きになった相手が日本人だった。それだけ」と香子は答え、汐見も同意。「ありのままの彼女でいられるために」模索していると打ち明け、小野にも「自分に正直に」と呼びかけた。

 金顕洙(許秀哲)が放火の罪に問われた事件で、弟の金広洙(成田瑛基)へ宛てた手紙に翻訳の誤りがあることがわかり、裁判所は検察と弁護人に意見を求めた。手紙から自白を裏付けることはできず、その他証拠と合わせて顕洙は無罪となる。土下座する顕洙に、裁判長の航一(岡田将生)は顔を上げるように促した。

 朝鮮人に偏見を持つ入倉(岡部ひろき)を寅子は食事に誘う。寅子は、法廷での入倉の表情が気になっていた。溝を埋めようともがく寅子に、入倉は「おせっかいですね」と返す。入倉は朝鮮人に偏見を抱く理由を説明。広洙の目が「俺らをまるで仇でも見るみたいに見てた」ことは、入倉がおびえていた直接の理由だっただろうか。

 「昔のことなんて知らない」と言う入倉は「俺は誰も虐げたことなんてない。普通でいるのに敵扱いされて、にらまれて。そんな態度されちゃ、そりゃ彼らへの印象だって悪くなる」と考えを述べた。寅子は入倉の心情に理解を示しつつ、「入倉さんは踏みとどまれている」と擁護した。

 顕洙の裁判の間ずっと煮え切らない態度だった寅子は、現実の差別を前にして自身の無力さを痛感していた。「一度じゃ伝わらなくても、諦めずに向き合う。それくらいなのかなって。でも、一歩ずつでも前には進まないと」と苦しい胸のうちを語った。それを聞いていた太郎(高橋克実)が口を開く。

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