『降り積もれ孤独な死よ』リッカのマークが意味するもの “蒼佑”萩原利久が抱えていた闇

『降り積もれ孤独な死よ』萩原利久の闇

 「家族は家族を守るために嘘をつくこともある」

 愛情と嘘が絡まり合い、複雑で入り組んだ謎を生み出すこと。DVのサバイバーである蒼佑が加害側になって、犯罪に手を染めてしまうのは暴力の連鎖を感じさせて痛ましい。屈託のない青年が自身の内なる“闇”に抗いきれず、復讐の念に駆られていたに違いない。鋭利な先端を持つ青年期特有の振れ幅を、萩原利久は繊細に表現していた。

 灰川邸事件の犯人が蒼佑であると決まったわけではない。リッカのマークにゆかりのある人物で虐待を受けた経験があるのは蒼佑に限られない。事実、劇中では顔に傷跡のある男性と思しき人物が映されており、事件への関与がほのめかされる。狙われた花音の周辺人物を当たる必要もあるだろう。

 サスペンス調の本作は、広い意味で家族を描く作品と言える。第2話ではとりわけその特質が浮き彫りになった。主人公の冴木自身が事件の関係者と密接なかかわりがあり、虐待家庭の出身であることは灰川邸事件の真相解明にどんな影響を及ぼすだろうか。終盤では、五味(黒木メイサ)が防犯カメラの映像を見て驚くシーンがあり、ラストでは全てを知る灰川の退場も示唆された。ドラマの中の現実は混迷の度合いを深めており、さらなる深い闇が待ち受けていると予想する。

■放送情報
『降り積もれ孤独な死よ』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:成田凌、吉川愛、萩原利久、佐藤大樹、仲万美、松本怜生、杢代和人、カカロニ栗谷、山下美月、黒木メイサ、野間口徹、小日向文世
原作:『降り積もれ孤独な死よ』原作・井龍一/漫画・伊藤翔太(講談社『マガジンポケット』連載中)
脚本:橋本夏
演出:内藤瑛亮、二宮崇、高杉考宏
チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー 中山喬詞(読売テレビ)、清家優輝(ファインエンターテイメント)
音楽:Jun Futamata
主題歌:あいみょん「ざらめ」
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:読売テレビ
©井龍一・伊藤翔太/講談社 ©ytv
公式サイト:https://www.ytv.co.jp/furitsumore/
公式X(旧Twitter):@furitsumore_ytv
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