『降り積もれ孤独な死よ』は隠された関係に光を当てる 成田凌の憂いを帯びた眼差し

『降り積もれ孤独な死よ』成田凌の眼差し

 雪のふりしきる山中を少年が歩いていく。その手には血まみれの刃物。7月7日に放送された『降り積もれ孤独な死よ』(読売テレビ・日本テレビ系)第1話は、ミステリアスな空気を濃厚に放ち、今後に期待を抱かせるスタートとなった。

 井龍一と伊藤翔太による連載中の人気コミックが原作の本作は、過去と現在を行き来する構成を持つ。2024年、東京。週刊誌記者の森燈子(山下美月)は、失踪した少女・月島美来(水野響心)の足どりを追う中で、元刑事の冴木迅(成田凌)を取材する。冴木は、2017年に起きた殺人事件に刑事として関わっていた。

 地方の幹線道路を通ると、森や原野に建てられた豪邸のような建物が目に入る。たいていはカップル向けの休憩施設だが、時折、なぜこんなところにという山奥に、場違いなくらい立派で門構えのある屋敷を目にすることがある。そこに住む人々の暮らしぶりに思いをはせながら、深く詮索せずそっと通り過ぎるのだが、今作を観てそんな光景を思い出した。

 事件の発端は、北甲府市の管内で3年前から発生している連続通り魔事件だった。空き巣に入られたとみられる豪邸の地下室で、冴木たちは白骨化した遺体と謎のマークを発見する。遺体は13体でいずれも未成年。扉の内側には内部からこじ開けようとした痕跡があり、子どもたちは閉じ込められてそのまま餓死したと考えられた。邸のあるじは灰川十三(小日向文世)。灰川に婚姻歴はなく、子どもたちがどこから来たか、また姿を消した灰川の消息が問題になった。

 ミステリーの第1話は作品全体の導入部で、舞台設定、登場人物、明らかにすべき謎が提示される。現在から過去へ。舞台の北甲府市は架空の街だが、本作では山梨でロケが行われており、地方都市のリアルな空気が映像に刻まれている。冴木の同僚刑事たち、地下室の遺体と続いて、間髪を入れず、事件の鍵を握る人物が登場する。6年前まで灰川邸で暮らしていた蓮水花音(吉川愛)は、灰川は犯人ではないと語る。テンポの良い進行によって物語の流れが自然に頭に入ってきた。

 花音によると灰川邸で暮らしていた子どもたちは19人。みな親から虐待や育児放棄を受けていた。灰川はそのような子どもたちを集めて一緒に暮らしていたが、6年前に突然、共同生活の終了を告げた。集合写真を見た冴木は、見覚えのある顔を見つける。それは腹違いの弟・瀧本蒼佑(萩原利久)だった。事件の関係者として捜査を外された冴木は、花音とともに事件の真相を追うことになる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる