『東京タワー』透の全身から細胞レベルで溢れる詩史への想い あまりに雄弁な永瀬廉の視線

『東京タワー』あまりに雄弁な永瀬廉の視線

 ただし一瞬で幸福にさせられるということは、同じく一瞬で地獄にも突き落とされるということだ。透が柄にもなく子どものように大雪で通行止めになることを願うほどに、この時間がもっと続けばいいと焦がれる詩史とのひとときは、英雄からの一本の電話で呆気なく終わる。詩史は後ろ髪引かれることもなく英雄の元へ帰っていくように見える。彼女には1人ではなく英雄と囲む食卓があり、日常があることをまざまざと思い知らされる。自分は耕二と楓の前でも「彼女がいる」と宣言したのに、詩史にとっての自分は2人でいる時にしか存在しないかのように思えることも切ないのだろう。

 さて、耕二と家庭教師先の母親・喜美子(MEGUMI)の関係も一時の気の迷い、火遊びでは終わらなさそうな様相を見せ始めた。耕二もただただ好奇心旺盛な軽薄なだけの男かと思いきや、喜美子を「飛び方を忘れた鳥」で「家という狭い籠に入れられた哀れな鳥」だとし、「人妻は楽しんじゃいけないの? 一生この家で家事だけして死んでくの?」と、彼女の中での漠とした不安を見事に言い当てていた。ここから楓や由利(なえなの)がどう存在感を増してくるのか。

 透の涙に滲む東京タワーの光はぼんやりと生温く残酷で、だから美しい。

■放送情報
オシドラサタデー『東京タワー』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:永瀬廉、板谷由夏、松田元太(Travis Japan)、MEGUMI
原作:江國香織『東京タワー』(マガジンハウス刊、新潮文庫刊)
脚本:大北はるか
音楽:近谷直之
監督:久万真路ほか
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)
プロデューサー:残間理央(テレビ朝日)、島本講太(ストームレーベルズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日、ストームレーベルズ
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/tokyotower/
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