奥智哉、青木崇高、望月歩、長濱ねる 『十角館の殺人』実写化を成立させたキャスト陣の実力

『十角館の殺人』キャスト陣の魅力に迫る

「よくぞ、これを……」

 Huluオリジナル『十角館の殺人』を観たあと、いちばんに思い浮かんだ感想が、それだった。世界中のミステリーファンを熱狂させ続けている綾辻行人の小説『十角館の殺人』。作中に登場する“あの一行”を知っている人なら、誰もが思うだろう。これは、小説だから成立したトリックで、映像化は絶対に不可能だと。壮大なセットが必要だとか、特殊メイクが必要だとか、そういうのではない。ただ、現実的に不可能なのだ。

 だから、今回のドラマを観て大きな衝撃を受けた。この世界に、不可能なことなどないのかもしれない……と。制作陣の原作への愛が詰まりまくったドラマ版『十角館の殺人』は、エンターテインメントの可能性を感じさせてくれる作品となっている。

 本稿では、実写化不可能と言われた『十角館の殺人』を、見事に体現したキャスト陣の演技にスポットを当てていきたい。

 まずは、主人公・江南(かわみなみ)孝明を演じた奥智哉。筆者が初めて彼の演技をじっくり観たのは、2022年に放送された『みなと商事コインランドリー』(テレビ東京系)だった。そのとき、「この子は、主人公気質だな」と思ったのを覚えている。圧倒的な光を放っているのだが、自分だけが光るわけではない。周囲のことも照らしてあげるような優しい光。そして、手を差し伸べてあげたくなるような繊細さも持っている。

 同作で演じていた明日香は、思わず「青春の擬態化か?」とツッコミを入れてしまいたくなるほどに爽やかで甘酸っぱいキャラクター。ときには高校生らしく、ちょっぴり生意気な一面を見せたりして……。クセになる“沼要素”がたっぷり詰まったこの役をきっかけに、多くの人気を獲得。ちょうど同時期に『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系)の放送もあった2022年は、奥にとって転機の年になったはずだ。

 そして、今年の3月からHuluで独占配信がスタートした『十角館の殺人』。奥にとっては、本作がドラマ初主演となる。初めての主演が、大人気ミステリーの実写化で、大先輩の青木崇高とタッグを組む……。想像しただけでもクラクラしてしまうほどの重圧だ。しかし、奥はそんなプレッシャーを微塵も感じさせることなく、好奇心旺盛なミステリー好きの青年・江南として、物語のなかに存在してくれていた。

 これから観る方は、江南を演じているときの奥の瞳に注目してほしい。『みなと商事コインランドリー』のときも、「綺麗の瞳をしているなぁ」と思ったが、本作では圧倒されるほどのキラキラっぷりを見せているのだ。彼の内面にあるピュアさが全開というか。「ああ、本当にミステリーが好きなのね……」と思わずほっこりしてしまうほどの愛らしさが、次々と殺人事件が繰り広げられる物語のなかで癒しになってくれていた。

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