【追悼・鳥山明さん】日本のカルチャーを世界的人気に導いた『ドラゴンボール』の功績
『ドラゴンボール』の人気は、漫画の連載が終わってもアニメシリーズとして引き継がれて、『ドラゴンボールZ』『ドラゴンボールGT』『ドラゴンボール改』『ドラゴンボール超』といった具合に続いている。秋には完全新作となる『ドラゴンボールDAIMA』が展開される予定で、鳥山さんが描き下ろした子供になった孫悟空やクリリンに、デビュー当初から完璧だった絵がさらに研ぎ澄まされていることを感じさせた。
同時に、そのキャラクターがどう動くのかといった興味も抱かせた。技術力が1980年代とは格段に上がっているアニメの世界だけに、鳥山さんのイメージがそのまま動く映像になるといった予想はできる。公開されているPVもそうした期待を満たすのに十分なクオリティを持っている。鳥山さん自身も期待していただろう。それだけに、完成を見ることがなかったのは無念だろう。
また、2000年代に入って急速に向上した3DCGによるアニメ制作の技術が、漫画やイラストの段階から奥行きを感じさせた鳥山明作品のキャラクターやメカを、そのまま映像として動かせるようにした。2023年7月21日に公開された映画『SAND LAND』は、キャラクターについてはフォルムも表情も仕草も鳥山明作品感が高く、メカもどこかレトロな雰囲気が漂うフォルムや塗装などの雰囲気が、しっかり再現されていた。
鳥山さん本人としても満足のいったものになったのではないか。プロジェクトを信頼し、続く『SAND LAND: THE SERIES』にも、天使のムニエルの設定とデザイン、アンなどのデザイン、エピソードなどを提案したという。配信開始も迫っていただけに、こちらはすでに目にしていたかもしれない。その感想をぜひ聞いてみたいものだ。
アニメに関して鳥山さんは『ドラゴンボール』のイメージが強すぎるところがある。かろうじて『Dr.スランプ』が、愛らしいアラレちゃんやガッちゃんのキャラクターとともに今も記憶されているが、他の作品となるとなかなか認知度が上がらなかった。そこに登場してきた『SAND LAND: THE SERIES』が、アニメから鳥山さんの奥深い才能を改めて世の中に示し、活動のすべてに再注目させる契機となるはずだった。おそらくそうなったとしても、喜んでくれる本人だけがいない。残念で仕方がない。
それでも作品は残る。『ドラゴンボール』はアニメを通して世界に広まり漫画を手に取らせ、日本発の作品に対する関心を引き起こした。その成果が『NARUTO-ナルト-』であり『ONE PIECE』であり『呪術廻戦』であり『鬼滅の刃』といった作品の世界規模での人気を作ったのだとしたら、鳥山さんの存在は、日本の漫画やアニメといった文化でありコンテンツという産業を作った張本人ということになる。
そして、自身も関わった『SAND LAND: THE SERIES』や『ドラゴンボールDAIMA』によってさらに大きくしていくはずだった人物を失った今、残された人々とそして新しく登場してくる人々が、次の道を拓いていく役割を担う。
頑張ってほしい。