『春になったら』木梨憲武の思いに触れた奈緒の涙 生と死を見つめる作品の視点

『春になったら』生と死を見つめる作品の視点

 親の心を子は知らない。逆もしかり。近くにいても見えないものがあって、近くにいるから気づけることがある。『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)で、3カ月先の未来に向かって父と娘は歩み出した。

 売れないピン芸人と10歳年下の助産師。第2話は瞳(奈緒)と一馬(濱田岳)のなれそめで始まる。偶然、喫茶店で隣り合わせになった二人。カズマル君のファンであると伝えた瞳に、一馬は意外そうな反応を示す。実は瞳と一馬の出会いはこれが初めてではなく、そのことは第2話の後半にかけて明かされる。

春になったら

 結婚するまでにやりたいことリストと、死ぬまでにやりたいことリスト。余命3カ月の雅彦(木梨憲武)がやりたいことは拍子抜けするくらい普通で、瞳はあっけにとられる。治療を受けないという考えを受け入れられない瞳は、一馬と結婚してもいいのかと父に向かってけしかける。もちろん本気だが、雅彦を心配しているのだ。むきになった雅彦はリストに瞳と一馬を別れさせると書き加えた。

 ガンを告知された患者がたどるプロセスを、精神科医のキューブラー・ロスは5段階に分けて説明した。否認、怒り、取り引き、抑うつ、そして受容。言われてみれば雅彦にも思い当たる節があるが、瞳は雅彦が病気を受け入れているのかといぶかしんだ。

春になったら

 娘は父に生きていてほしい。だからできることは何でもする。周囲を巻き込んで、一馬との結婚を雅彦に反対させることで、1日でも長く雅彦の寿命を延ばす作戦だ。伯母のまき(筒井真理子)と一馬を呼び寄せた会食の席で雅彦を怒らせることに成功したものの、雅彦が翻意してくれるか心配な瞳。なにせ頑固な父親なのだ。

 娘にとって父親は不可解だ。自分に見せていただけじゃない別の顔があって、ふとしたきっかけでそれを知ることになる。伊豆に行った雅彦が語り出した母・佳乃(森カンナ)とのなれそめは普段の父に似合わずピュアで、奥手な青年の10年越しの恋物語だった。

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