24年ぶり連ドラ主演の木梨憲武に泣かされる 『春になったら』雅彦役に滲み出るその人柄

『春になったら』は木梨憲武に泣かされる

 木梨憲武に、こんなに泣かされるとは思っていなかった。『春になったら』(カンテレ・フジテレビ系)第1話、ステージ4の膵臓がんを患いながらも明るく生きようとする雅彦の姿に、わんわん泣かされた。

 ドラマのなかにいる木梨は、もちろん私たちが知っている“ノリさん”ではない。しかし、どこかにお笑い芸人としてのエッセンスを感じさせている。そのため、木梨憲武と雅彦の境界線が分からなくなってしまう瞬間があった。でも、だからこそ、雅彦に生き続けていてほしいと願う瞳(奈緒)の気持ちに、視聴者が寄り添うことができるのだと思う。筆者は、感情移入しすぎてしんどくなったので「これは、ドラマ。本当のノリさんは健康で……」と自分に言い聞かせながら観ていた。

 本作が、「今期いちばん泣けるドラマなのでは?」と話題になっているのは、やはり木梨の経歴によるところも大きいと思う。1980年代なかば、『オールナイトフジ』(フジテレビ系)や『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)をきっかけにブレイクを果たしたとんねるず。それから現在まで40年以上にわたり、お茶の間の人気者として私たちを楽しませてくれている。そんな木梨が演じているからこそ、雅彦という人物への愛が止まらないのだ。第1話を観てからというものの、『春になったら』関連の写真を見るだけで涙腺が緩むようになってしまった。これでは、最終回はどうなってしまうのだろう。雅彦、お願いだから生き続けてくれ……と祈るしかない。

 しかし、雅彦は治療を受けないという。たとえ治療をしたとしても、5年生存率は2〜3%。いつも明るく前向きな雅彦のことだから、「俺なら治せる!」なんてドヤ顔をして病と戦ってくれるものだと思ったが、陰で医師に「自分が、100人のうちの2人か3人に入るとは思えない」と弱音をこぼしていたのが切ない。それなのに、娘の瞳の前では「お葬式はパーッと明るくやろうよ!」と気丈に振る舞っているのも、胸にくるものがある。

「俺の終わり方は、俺に決めさせてくれよ」

 そう言いながらも、娘のために生きたいという気持ちが伝わってくる瞳の揺れ。生きることに執着がないように見せているけれど、実は死ぬのが怖い。本当は娘の前で泣きたいし、「しんどいよ、怖いよ」と弱音を吐きたい。それでも、やっぱり最後の1秒まで力強い父親の背中を見せたいと願う気持ちが伝わってくる演技だった。娘に「死んじゃ、やだ。お願いだから治療を受けて。私のために治療を受けてよ!」と懇願されても、首を横に振り続ける雅彦。しかし、身勝手な親に見えないのは、木梨の人柄が影響しているのだろう。父と娘、どちらの苦しさも分かるからこそ、もどかしさが募る。

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