ディーン・フジオカの誰にも真似できないおかしみ 天賦の才と真面目さが圧倒的魅力に

ディーン・フジオカの天賦の才と真面目さ

 ここで少し時を飛ばそう。現在、放送中のNHKドラマ10『正直不動産2』で彼が演じるのは、主人公・永瀬(山下智久)の不動産売買におけるかつての師匠・神木。詐欺に近い手口で取引をしていたことが明らかになって業界を追われホームレスをしていたが、今は永瀬が勤める登坂不動産のライバル会社、ミネルヴァ不動産に拾われ、クリーンでない方法で物件仲介を行っている謎多き男だ。

 事件は第2話で起きた。12年前の回想シーンで、当時トップ営業マンだった神木は不動産営業のコツを伝授しようと新人の永瀬を街に連れ出す。まずは外見や住居から理想の自分を演出し、ビジネスに結び付けることが必要と心理学の“拡張自我”を説いて永瀬に70万円超えのスーツを買わせる神木。ここまではいい。だがその先がヤバい。同じく心理学の応用で“ミラーリング”の説明をするため、高級一軒家フレンチのフロアに躍り出て神木はいきなりタップを踏み出す。「俺の動きを真似てみろ」。躊躇する永瀬や店のスタッフの注意をものともせず華麗にステップを踏み倒す彼の笑顔はキラキラと輝き自身に満ち溢れていた。

 なぜ、ミラーリングの説明をするため神木にタップを踏ませるのか、それも長尺で。その答えは明確である。ディーン様ならあのトンデモともいえる表現を完璧に魅せ、説得力すら生み出すポテンシャルを持っていると製作側が確信していたからだ。考えてみてほしい。ああいう突き抜けた場面はそれを背負いきれない俳優が担うと痛々しさしか残らない。が、ディーン様はビジネスシューズで美しくタップを踏み、凄いの先にあるトンチキまで表現を昇華させた。まさに、永瀬が発した通り「イカれてる」ワケだ。わかってるなあ、脚本と演出!

ディーン・フジオカ、『おっさんずラブ』第4話に出演 「長年の夢が叶った気持ち(笑)」

田中圭主演の金曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)の第4話に、ディーン・フジオカがカメオ友情出演してい…

 さらに今や国民的人気ドラマといっても過言でない『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)では劇中で放送される恋愛リアリティ番組にて“伝説的バチェラー、ラガーフェルド・翔”としてカメオ出演することも発表された。「スイスの王族の血を引いているが日本の一般家庭で育ち、現在は貿易会社の社長兼投資家として莫大な財産を有するペンタリンガル。趣味は盆栽鑑賞と琴の演奏」という盛り盛りなプロフィール。アノ実在のリアリティ(?)番組お約束の胡散臭いバチェラー設定をそのまま体現するキャラクターだが、これもディーン様が演じるとなると不思議な説得力がある。

 どんな作品や役柄でもご本人にはおそらく「面白く(コミカルに)」見せるつもりなど一切なく、いきなりレストランでタップを踏もうが、パロディの中で思いきりデフォルメされた人物を演じようが、至極真面目に作品や役と向き合って真摯に演じているのだろう。だが、シチュエーションによってはそのストイックさがとてつもないおかしみと説得力を生み出す。これこそディーン・フジオカが俳優として宿す最大の武器であり、唯一無二の表現である。最上級のトンチキは天賦の才と真面目さが掛け合わさったその時にこそ生まれるからだ。

 ディーン様、どうかこれからもあの真面目さ溢れるトンチキで、私たちをキュンと脱力の狭間で翻弄し続けてください。本当に、大好きです。

■放送情報
『正直不動産2』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:山下智久、福原遥、市原隼人、泉里香、松本若菜、長谷川忍、板垣瑞生、松田悟志、馬場徹、伊藤あさひ、財津優太郎、山﨑努、大地真央、倉科カナ、高橋克典、草刈正雄ほか
原作:大谷アキラ(漫画)、夏原武(原案)、水野光博(脚本)
脚本:根本ノンジ、清水匡、木滝りま
音楽:佐橋俊彦
主題歌:小田和正 「so far so good」
制作統括:黒沢淳(テレパック)、山本敏彦(NHKエンタープライズ)、長谷知記(NHK)
プロデューサー:室谷拡(テレパック)、樋渡典英(NHKエンタープライズ)
演出:川村泰祐(アンドリーム)、金澤友也(テレパック)ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる